北関東連続幼女誘拐殺人事件は本当に同一犯だったのか|5事件を発生日・場所・生活条件から再検討

北関東連続幼女誘拐殺人事件は本当に同一犯だったのか|5事件を発生日場所生活条件から再検討

北関東連続幼女誘拐殺人事件は、ひとつの連続事件として語られてきた。栃木県足利市、群馬県旧尾島町、群馬県太田市周辺で、幼い女児が相次いで被害に遭い、河川敷や畑、中州という人目の薄い場所が終点として現れる。そうした共通性は無視できない。

しかし、近い場所で似た被害が起きたことは、そのまま同じ犯人を意味しない。発生日、時間帯、接近場所、終点、目撃人物像、犯人側の生活条件を分けて確認すると、5件すべてを一人に結ぶには説明すべき差異が多い。

この記事は、福島万弥さん事件、長谷部有美さん事件、大沢朋子さん事件、松田真実さん事件、横山ゆかりさん事件を、同一犯説を前提にせず比較する総合検証ページである。地域性と被害者属性により結ばれた定説をいったん解除し、各事件が本当に一本の線で結べるのかを確認する。

現時点で最も無理が少ない整理は、全件同一犯ではなく、一部同一犯を含む複数犯併存である。長谷部有美さん事件と松田真実さん事件は足利市内のパチンコ店・夕方型として比較し、大沢朋子さん事件と横山ゆかりさん事件は群馬側の接近型として比較する。福島万弥さん事件は足利側の地理条件に入るが、発生場所、時間帯、目撃情報が異なるため、別枠で扱う。

北関東連続幼女誘拐殺人事件とは何か

最初に対象事件の範囲を固定する。事件名だけが先に広がると、場所、日時、目撃情報、発見状況の差が見えにくくなる。

対象となる5つの事件

対象とするのは、1979年の福島万弥さん事件、1984年の長谷部有美さん事件、1987年の大沢朋子さん事件、1990年の松田真実さん事件、1996年の横山ゆかりさん事件である。5件は、後年、北関東連続幼女誘拐殺人事件としてまとめて論じられることが多くなった。

事件名に「連続」と付くと、読者は最初から一人の犯人を想像しやすい。しかし、事件ごとに確認すると、発生場所は神社、公園、パチンコ店に分かれ、時間帯も昼、夕方、日没前後に分かれる。終点も渡良瀬川、利根川、畑、中州、未発見に分かれている。

したがって、この記事では、5件をひとつの呼称で扱いながらも、犯人像を一人に固定しない。まず事件別に、発生日、場所、終点、目撃情報を並べる。そこから、同一犯に寄る情報、一部同一犯に寄る情報、複数犯に寄る情報を分けていく。

図表1 事件別基礎情報一覧
事件発生日曜日・日柄発生場所終点目撃・人物情報
福島万弥さん事件1979年8月3日金曜・夏休み足利市通5丁目、八雲神社付近渡良瀬川河川敷正午過ぎに父親が確認。午後1時頃、25歳前後の職人風の男と一緒にいたとの報道情報あり。
長谷部有美さん事件1984年11月17日土曜足利市山川町、パチンコ店「大宇宙」足利市大久保町の畑午後3時過ぎから家族で来店。午後5時頃には店外にいたとの報道情報あり。
大沢朋子さん事件1987年9月15日火曜・敬老の日旧尾島町、公園周辺利根川河川敷失踪直前に一緒にいた「自転車の男」が手掛かり。
松田真実さん事件1990年5月12日土曜足利市内パチンコ店付近渡良瀬川左岸河川敷午後6時30分ころ行方不明。翌朝遺体発見。
横山ゆかりさん事件1996年7月7日日曜太田市内パチンコ店未発見重要参考人は身長158cm位、ニッカズボン様、サンダル様、サングラス。

資料の扱い

資料は、警察・自治体・裁判関係資料と、当時報道・後年報道に分けて扱う。警察庁、県警、自治体、裁判・検証資料は一次情報として本文の基礎に置く。新聞、調査報道、後年の検証記事は、報道された内容として扱う。

足利事件については、警察庁の検証報告書を基礎資料に置く。横山ゆかりさん事件については、群馬県警が現在も公開している重要参考人情報を一次情報として扱う。福島万弥さん事件、長谷部有美さん事件、大沢朋子さん事件については、当時新聞と後年報道を暫定的に用いる。

菅家利和氏に関する逮捕時報道や供述報道は、後に再審無罪となった経緯を踏まえ、犯人性を示す資料としては使わない。当時の捜査方向、事件群の語られ方、DNA鑑定の問題を確認する資料として扱う。

5事件の個別確認

5件をまとめて扱う前に、それぞれの事件がどのような条件で発生したのかを確認する。個別事件の差を残したまま比較しなければ、同一犯説も複数犯説も粗雑になる。

福島万弥さん事件

福島万弥さん事件は、1979年8月3日、足利市通5丁目の八雲神社付近で発生した。発生日は金曜日だが、時期は夏休みであり、通常の登校日ではない。子どもが昼間に自宅近くへ出やすい条件があった。

この事件の特徴は、白昼、自宅そば、神社という条件にある。後年、足利市内の他事件と並べられることが多いが、長谷部有美さん事件や松田真実さん事件のようなパチンコ店・夕方型とは異なる。さらに、職人風の男、白髪の男性、男児など、複数の目撃情報が語られており、人物像も一本化しにくい。

終点は渡良瀬川河川敷であり、足利市街と河川敷の関係は他事件との比較対象になる。ただし、この地理的共通性だけで、パチンコ店型の事件群に直結させることはできない。福島万弥さん事件は、足利側の地理条件に入るが、犯罪条件としては別枠で確認する事件である。

長谷部有美さん事件

長谷部有美さん事件は、1984年11月17日、足利市山川町のパチンコ店『大宇宙』周辺で発生した。発生日は土曜日で、時間帯は夕方である。11月中旬の足利周辺では、16時台に日の入りを迎え、17時頃には薄明が終わる。

この事件は、パチンコ店、土曜夕方、家族の滞在、警察犬の足取り、後年の白骨発見という要素を持つ。発生直後に遺体が発見された事件ではなく、発見まで時間を要した点も、松田真実さん事件とは違う。一方で、足利市内のパチンコ店周辺、夕方、子どもの単独化という条件は、松田事件との比較価値が高い。

長谷部有美さん事件を検討する場合、発生時刻、最後に店外で確認された時刻、警察犬の足取り、遺体発見地点までの距離を細かく確認する必要がある。日没後の暗さが、接近、連れ出し、目撃回避にどう関わったかも焦点になる。

大沢朋子さん事件

大沢朋子さん事件は、1987年9月15日、群馬県旧尾島町の尾島公園付近で発生した。曜日だけ見ると火曜日だが、当日は敬老の日であり、祝日として扱う必要がある。学校と家庭の通常の管理から外れやすい日だった。

この事件は、公園、自転車の男、利根川河川敷という条件を持つ。足利側のパチンコ店・夕方型とは異なり、発生場所は公園である。横山ゆかりさん事件とは群馬側の生活圏という点で比較できるが、横山事件はパチンコ店内、防犯カメラ、未発見であり、接近方法も終点も同じではない。

大沢朋子さん事件で確認すべきなのは、公園から河川敷までの距離、自転車の男の移動方向、当日の公園利用状況、祝日の人出である。地域内を自転車で移動しても不自然ではない人物だったのか、車を使わずに成立する移動だったのかを調べる必要がある。

松田真実さん事件

松田真実さん事件は、1990年5月12日、足利市借宿町のパチンコ店『ロッキー』付近で発生した。発生日は第2土曜日で、時間帯は夕方である。報道では、パチンコ店から遺体発見場所まで約500mから600mとされ、地図上の概算直線距離ではさらに短い。

この事件は、遠くへ車で運んだ事件というより、店の周辺から徒歩で河川敷へ連れ出された可能性が強い。車が入れる道がない、あるいは使いにくい場所だったという報道内容を踏まえると、広域移動よりも、現場周辺の土手、運動場、河川敷への入り方を知っていた人物が浮かぶ。

長谷部有美さん事件との比較では、足利市内、パチンコ店、土曜日、夕方という条件が重なる。異なるのは、松田事件が短距離で翌朝発見された点である。この二件は、全5件の中で最初に同一犯可能性を比較すべき組み合わせになる。

横山ゆかりさん事件

横山ゆかりさん事件は、1996年7月7日、群馬県太田市のパチンコ『パチトピア』店内で発生した。日曜日の昼であり、家族が店内にいる中で、幼い女児が重要参考人とされる人物とともに防犯カメラに映った。また、パチンコ店駐車場に女児を乗せた白い車に関する目撃情報もあるが、現在も未解決事件である。

この事件の特徴は、防犯カメラ映像によって重要参考人の姿が残っている点にある。足利側の事件と比べると、目撃人物像がかなり具体的である。一方、終点が不明であり、遺体発見地点から逆算することはできない。

大沢朋子さん事件とは、群馬側の生活圏、子どもへの接近、休日性という点で比較できる。ただし、公園での接近とパチンコ店内での接近、遺体発見ありと未発見という差は大きい。同一犯と見るには、この差を同一人物の行動変化として説明できるかを確認する必要がある。

発生日・季節・場所から見る共通点

5件には共通項がある。対象は幼い女児であり、発生日は夏休み、土曜日、祝日、日曜日である。場所は神社、公園、パチンコ店に分かれるが、いずれも子どもが単独化しやすい場面を含む。

夏休み・土曜日・祝日・日曜日

5件をすべて同一犯による連続犯行と仮定した場合、期間は1979年8月3日から1996年7月7日までであり、約16年11か月、年数換算で約16.9年となる。これだけの期間を一人で説明するには、地域に残り続けた理由と、日ごとの自由時間を説明しなければならない。

曜日だけを見ると、金曜1件、土曜2件、火曜1件、日曜1件である。ただし、大沢朋子さん事件の1987年9月15日は敬老の日である。これは平日火曜の事件ではなく、祝日発生事件である。5件は、夏休み、土曜日、祝日、日曜日という非通常日に寄る。

非通常日という視点を入れると、被害児側の行動条件と犯人側の行動可能条件を同時に扱える。子どもは家庭や学校の通常管理から離れやすく、犯人も通常勤務に縛られない人物なら現場周辺へ出向ける。事件日は、子どもの外出条件と犯人の自由時間が重なった日として検討する必要がある。

神社・公園・パチンコ店

発生場所は、神社、公園、パチンコ店に分かれる。福島万弥さん事件は神社、長谷部有美さん事件、松田真実さん事件、横山ゆかりさん事件はパチンコ店、大沢朋子さん事件は公園周辺である。場所の種類だけを見れば、5件は同じではない。

ただし、神社、公園、パチンコ店には、子どもが保護者の目から一時的に外れやすいという共通性がある。神社は自宅近くの日常圏であり、公園は子どもの遊び場であり、パチンコ店は保護者が同じ建物または周辺にいても、子どもが単独化しやすい。

犯人が場所そのものを選んだのか、単独化した子どもに反応したのかは分けて考える必要がある。もし後者なら、同じ手口を繰り返した犯人ではなく、同じ地域条件に複数の加害者が反応した可能性も残る。

河川敷・畑・中州という終点

終点は、渡良瀬川河川敷、利根川河川敷、畑、中州、未発見に分かれる。発生地点から終点までの距離は、現時点の概算で約0.3kmから約2.12kmであり、遠距離搬送よりも短距離移動との関係が強い。

この距離感は、発生場所の近くに、人目が薄く、短時間で到達できる河川敷、畑、中州があったことを示す。犯人像は、広域を車で走り回る人物だけでなく、足利、太田、旧尾島周辺の生活道路、遊技場周辺、河川敷、農地を日常的に知る人物として検討する必要がある。

松田真実さん事件では、発生地点と終点の近さが際立つ。車を使った広域移動ではなく、徒歩で連れ出せる距離だった可能性がある。これに対し、長谷部有美さん事件や大沢朋子さん事件では、終点までの距離がやや長くなる。事件ごとに、徒歩、自転車、原付、車、家族車両の一時利用を分けて検討する必要がある。

図表2 発生場所と終点場所の対応・概算直線距離
事件発生場所終点概算直線距離分析上の意味
福島万弥さん事件足利市通5丁目、八雲神社付近渡良瀬川河川敷約1.84km足利市街から河川敷へ向かう短距離型。
長谷部有美さん事件足利市山川町、パチンコ店「大宇宙」周辺足利市大久保町の畑約2.12km足利市内の遊技場・農地周辺を知る人物との相性がある。
大沢朋子さん事件旧尾島町、公園周辺利根川河川敷約1.52km公園から河川敷への移動。自転車目撃情報との照合が必要。
松田真実さん事件足利市内パチンコ店「ロッキー」付近渡良瀬川中州・河川敷付近約0.30km
報道では約500〜600m
徒歩圏型。遠距離搬送より現場周辺熟知が焦点。
横山ゆかりさん事件太田市高林東町、パチンコ店「パチトピア」内未発見終点不明店内接近、防犯カメラ人物、未発見という別の条件を持つ。

地図で見る足利側と群馬側

発生地点と終点を地図上に置くと、5件は同じ広域圏に入る一方で、足利側と群馬側に分かれる。距離だけで同一犯を判断せず、生活圏のまとまりとして確認する。

発生地点と終点の概算地図

地点は公開情報と報道資料に基づく概算である。中心点や楕円は犯人の居住地を示すものではない。足利側三件と、旧尾島・太田側二件が別のまとまりを作ることを確認するための補助図である。

北関東連続幼女殺人事件発生地点終点の概算図

図表3 発生地点・終点の概算地図

発生地点と終点の関係では、長谷部有美さん事件と松田真実さん事件は、足利市内のパチンコ店・夕方型として比較しやすい。大沢朋子さん事件と横山ゆかりさん事件は、旧尾島・太田側の接近型として比較できる。福島万弥さん事件は足利側に入るが、神社、夏休み昼間、複数の目撃情報という差が残る。

日没・薄明・気象条件

昼間に起きた事件では、暗さそのものより、子どもが外へ出ていた日柄や場所が問題になる。長谷部有美さん事件と松田真実さん事件では、夕方の明暗が、連れ出しや目撃のされやすさに関わってくる。

夕方型として見る長谷部事件と松田事件

長谷部有美さん事件は、11月17日の夕方に発生した。足利周辺では16時32分前後に日の入りを迎え、17時00分前後には薄明が終わる。パチンコ店周辺で家族が滞在し、子どもが店外で単独化し、警察犬の足取りがどこで途切れたのかを、日没と重ねて確認する必要がある。

松田真実さん事件は、5月12日の夕方に発生した。足利周辺では日の入りが18時39分前後、薄明終了が19時07分前後である。長谷部事件より明るい時間が残るが、店から河川敷までの距離が短い。明るさ、徒歩移動、周囲の人出、河川敷入口を分単位で照合する価値がある。

大沢朋子さん事件は祝日午後から夕方にかかる可能性があり、公園から利根川河川敷までの移動を確認する必要がある。福島万弥さん事件と横山ゆかりさん事件は昼型であり、日没よりも、夏休み昼間や日曜昼に子どもが単独化した条件を扱う。

図表4 事件当日の天文・気象条件
事件日付時間帯日の入り・薄明終了の概算当日条件の使い方
福島万弥さん事件1979年8月3日日の入り18時47分前後、薄明終了19時15分前後暗さより、夏休み昼間に自宅近くで単独化した点を扱う。
長谷部有美さん事件1984年11月17日夕方日の入り16時32分前後、薄明終了17時00分前後16時台に暗くなる時期。最後の目撃、警察犬の足取り、家族が異変に気づいた時刻を照合する。
大沢朋子さん事件1987年9月15日午後〜夕方日の入り17時50分前後、薄明終了18時17分前後祝日午後の公園と河川敷への短距離移動を確認する。
松田真実さん事件1990年5月12日夕方日の入り18時39分前後、薄明終了19時07分前後日没前後の徒歩移動、目撃可能性、終点到達時間を分単位で詰める。
横山ゆかりさん事件1996年7月7日日の入り19時03分前後、薄明終了19時32分前後日没より店内・家族・重要参考人の行動が焦点となる。

同一犯説を強める情報・弱める情報

同一犯説を検討するには、似ている点を並べるだけで判断することはできない。共通する条件と揃わない条件をあわせて見て、その差が一人の犯人の変化として説明できるかを確認する必要がある。

共通する条件

同一犯説を支える材料はある。対象が幼い女児であること、発生場所が、子どもが単独化しやすい場所であること、終点に河川敷、畑、中州が含まれること、地域が足利、太田、旧尾島周辺に集中することは無視できない。

また、発生日が夏休み、土曜日、祝日、日曜日に寄る点も共通性として扱える。犯人が日付を細かく選んだというより、子どもが外へ出やすく、周囲の監視が薄くなる日を利用した可能性がある。

この共通性があるため、5件をひとつの呼称で扱うことには意味がある。問題は、呼称としての連続性と、犯人論としての同一性を混同しないことである。

揃わない条件

一方で、犯罪条件は揃っていない。福島万弥さん事件は、夏休み昼間、神社、複数の目撃情報という特徴を持つ。長谷部有美さん事件は、土曜のパチンコ店、夕方、警察犬の足取り、後年の白骨発見という特徴がある。

大沢朋子さん事件は、祝日、公園、自転車の男、利根川河川敷である。松田真実さん事件は、土曜夕方、日没直前、パチンコ店付近、短距離移動、翌朝遺体発見である。横山ゆかりさん事件は、日曜昼間、パチンコ店内、防犯カメラ、重要参考人、未発見である。

地域、対象、日柄、終点の重なりだけで5件を一本化すると、事件ごとの差が消える。同一犯かどうかは、類似点の数ではなく、差異を同一人物の行動変化として説明できるかで確認する必要がある。

図表5 同一犯仮説・一部同一犯仮説・複数犯仮説の比較
仮説内容説明しやすい点残る問題本稿での扱い
全件同一犯5件すべてを一人の犯人に結ぶ。地域、被害対象、非通常日、終点条件を一体で扱える。約17年間の生活継続、接近方法、目撃人物像、発覚経過の差を一人で説明する必要がある。可能性は残るが、中心には置きにくい。
一部同一犯条件が近い事件だけを比較する。長谷部・松田、大沢・横山など、近い条件の事件群を精査できる。どの事件を同じ群に入れるかで評価が変わる。現時点で最も無理が少ない。
複数犯併存同じ地域条件に複数の加害者が反応したと見る。17年間を一人で説明する必要がなくなる。地理・対象・終点条件の重なりをどう扱うかが課題になる。一部同一犯と併せて検討する。

犯人側の生活条件

発生日に子どもが外へ出やすかったとしても、犯人側がその時間帯に動けなければ事件は成立しない。職業名より、平日昼、土曜午後、祝日、日曜昼に自由時間を作れた生活条件を確認する。

平日昼・土曜午後・祝日・日曜に動けた人物

5件を同一犯、または一部同一犯として検討する場合、発生日の性格は、被害児側の行動条件だけでなく、犯人側の生活条件にも関わる。夏休み、土曜日、祝日、日曜日に事件が寄っていることは、子どもが外へ出やすい日であると同時に、犯人が現場周辺へ出向けた日でもある。

1979年から1996年という時代を考えると、現在の感覚で土日休みを前提にすることはできない。当時の一般企業では完全週休二日制はまだ一般的ではなく、1979年、1984年、1987年の段階では土曜日に勤務していた者も多い。行政職の公務員についても、1980年代前半までは土曜日が通常の勤務日に近く、完全な土日休みを前提にするのは弱い。

一方で、交替勤務職や公共系の現業職は、一般行政職とは別に扱う必要がある。当番、非番、公休、日勤の組み合わせによって、平日昼、土曜午後、祝日、日曜日に自由時間が生じる場合がある。地域の道路、河川敷、住宅地、公共施設、子どもの動線を職務や日常移動の中で知り得る点も、検討対象から外せない。

図表6 勤務形態別に見た犯行可能時間
類型当時の勤務条件平日昼土曜午後祝日日曜事件分析上の意味
一般行政職公務員1980年代前半までは土曜勤務が残る。1990年代に土曜閉庁、完全週休二日制へ移行。弱い1980年代前半は弱い。1990年以降は強まる。強い強い1987年、1990年、1996年には合いやすいが、1979年金曜昼、1984年土曜午後の説明は弱い。
一般企業勤務完全週休二日制が一般化していない。中小企業では土曜勤務が多い。弱い弱い職場次第職場次第5件を通して説明するには弱い。
商店・飲食・理美容土日祝は営業日になりやすい。理美容は月曜定休が多い。職種次第弱い弱い弱い休日発生事件とは噛み合いにくい。ただし家族経営で離脱可能なら別。
交替勤務職当番、非番、公休、日勤の組み合わせ。公共系、警備、交通、施設管理、消防、医療、工場勤務などを含む。強い場合あり強い場合あり強い場合あり強い場合あり暦ではなく勤務サイクルで動ける。地域内の道路、河川敷、施設に詳しい可能性がある。
公共系現業職施設勤務、清掃、道路、上下水道、学校用務など。勤務形態に幅がある。あり得るあり得るあり得るあり得る地域内の移動、施設、道路、河川敷を知る可能性がある。
自営業・家業手伝い職種により自由度が大きく異なる。強い場合あり強い場合あり職種次第職種次第時間調整が効くが、土日祝営業職では弱い。
広義の無職・不安定就労失業中、断続的就労、家族扶養、日雇い、家業手伝い、公的支援による生活を含む。強い強い強い強い時間自由度は最も高い。ただし、17年間の地域固定要因が必要。

広義の無職・不安定就労

事件日全体を通して説明しやすいのは、交替勤務職と広義の無職・不安定就労層である。ここでいう無職は、単に職に就いていない者だけを指さない。失業中、家業手伝い、家族に扶養されていた人物、断続的就労、日雇い的就労、地域内で不安定に働いていた人物、公的支援によって生活していた人物を含む。

雇用統計上の分類は分かれていても、犯行可能時間を自由に作れるという点では同じ側に入る。平日昼、土曜午後、祝日、日曜に地域内を動ける人物としては、定時勤務に縛られない生活条件が必要になる。

ただし、広義の無職だけでは不十分である。5件すべてを同一犯と仮定するなら、約17年間にわたり、足利、太田、旧尾島周辺との関係を保ち続けたことになる。単に流動的な無職ではなく、実家、親族、持ち家、家業、農地、地域内の人間関係、家族による扶養、公的支援など、地域にとどまる理由を持つ人物でなければならない。

図表7 生活条件から見た犯人条件
項目条件分析上の意味
足利・太田・旧尾島周辺に固定拠点がある約17年間、同じ地域圏との関係を維持するには、実家、親族宅、持ち家、借家、家業拠点などが必要になる。
収入定時勤務による安定収入とは限らない家族扶養、公的支援、家業手伝い、断続的就労、日雇い的就労などでも生活維持は可能である。
家族・親族同居または近居の可能性がある無職・不安定就労でも地域に残る理由になる。生活の説明、移動手段の共有にも関わる。
車・免許車、自転車、原付、軽トラックなどを使えた可能性はあるが、必須条件ではない発生地点と終点が近い事件では徒歩でも成立する。ただし足利・太田・旧尾島をまたぐ生活圏を考えると、何らかの移動手段は重要になる。
公的支援との関係公的支援の種類によっては、車の所有・維持、免許保有、常時運転の可能性は一段下がる公的支援で生活していた人物を想定する場合、車を常用していた人物像より、徒歩、自転車、原付、家族車両の一時利用などを優先して検討する必要がある。
地域固定要因実家、親族、家業、農地、持ち家、地域内の人間関係流動的な無職ではなく、地域にとどまる理由を持つ人物像に寄る。
行動可能時間平日昼、土曜午後、祝日、日曜日に動ける5件の発生日を通して見ると、通常の勤務カレンダーに縛られない生活条件が必要になる。

公的支援を想定した場合の移動手段

公的支援によって生活していた人物を想定する場合、車の所有や常時使用の可能性は一段下げて考える必要がある。その場合は、徒歩、自転車、原付、家族車両の一時利用、または地域内の狭い範囲で犯行が成立した可能性を優先して検討することになる。

反対に、車を所有または常用していた人物を想定する場合は、生活費、収入源、家族名義の車両、勤務先車両の利用可能性を確認する必要がある。車を使えたかどうかは、同一犯説を支える条件ではなく、事件ごとに分けて確認すべき条件である。

松田真実さん事件のように発生地点と終点が近い事件では、車は必須ではない。大沢朋子さん事件や長谷部有美さん事件のように、終点までの距離がやや長い事件では、徒歩、自転車、原付、車のどれが成立するかを別に検討する必要がある。

単独犯仮説に残る生活上の疑問

5件すべてを単独犯による連続犯行と仮定する場合、犯人は約17年間にわたり、地域に残り、生活し、疑われず、子どもが単独化する場所に現れ続けた人物でなければならない。

同居・単身・地域での不審者性

家族や親族と同居していた場合、地域に残る理由は説明しやすい。実家、親族宅、家業、持ち家、農地、公的支援は、無職や不安定就労でも生活基盤になり得る。だが、同居者がいるなら、事件当日の外出、帰宅時間、衣服の汚れ、車や自転車の使用、事件後の態度をどこまで隠し通せたのかという疑問が残る。

単身で住んでいた場合は、住居費の問題が出る。収入が不安定な人物が17年近く同じ地域に残るには、安価な借家、親族所有物件、実家、間借り、公営住宅などの支えが必要になる。当時の足利市、太田市、旧尾島町周辺の家賃、公営住宅の有無、入居条件を調べなければ、生活条件は詰まらない。

地域社会の中で不審者として浮上しなかったのかも確認する必要がある。足利事件で冤罪被害を受けた男性も、近隣で不審視されていたことなどから捜査線上に上がった。真犯人が同じ地域圏に生活していたなら、17年間のうちに一度も不審者として扱われなかったのか、あるいは捜査線上に上がったが除外されたのかを分けて考える必要がある。

図表8 単独犯仮説に残る生活上の疑問
論点想定される人物像疑問点必要な調査
家族・親族と同居実家住まい、家業手伝い、家族扶養、公的支援外出、帰宅、衣服、車両使用、事件後の態度を、約17年間にわたり隠し通せたのか。当時報道、近隣証言、捜査関係者証言、家族構成に関する報道。
地域での不審者性独身、無職、不安定就労、地域で浮いた人物捜査線上に上がらなかったのか。上がったが除外されたのか。初期捜査報道、不審者情報、聞き込み範囲、捜査対象者数。
単身居住安価な借家、間借り、親族所有物件、公営住宅収入が不安定な人物が地域に住み続けられたのか。当時の家賃、住宅地図、公営住宅の有無、賃貸広告、住宅統計。
公的支援生活保護、障害年金、失業給付、家族扶養との併用生活基盤は説明しやすいが、車所有・常時使用は弱くなる。福祉制度、公営住宅入居条件、車保有制限、地域交通事情。
移動手段徒歩、自転車、原付、家族車両、一時借用車を持たない場合、犯行範囲はどこまで成立するか。発生地点から終点までの徒歩・自転車時間、道路、橋、河川敷入口。

この論点を入れると、全件同一犯説は一段厳しくなる。約17年間、地域に残り、生活し、疑われず、移動し、子どもが単独化する場所に現れ続けた人物でなければならないからである。

逆に、この疑問は複数犯併存の可能性を強める。複数犯なら、17年間の継続性を一人で説明する必要はない。足利側事件群、群馬側事件群、あるいは一部事件だけを同一犯として見る余地が広がる。

自治体・公的支援・地域交通資料

自治体資料、公的支援資料、地域交通資料は、犯人の生活条件を検討するために使う。住居、収入、家族、車の四条件を組み合わせ、地域に残り続けた理由を確認する。

公営住宅・低廉住宅

5件を単独犯、または一部同一犯として検討する場合、犯人がどこに住み、どのように地域に残り続けたのかは避けて通れない。約17年間にわたり足利、太田、旧尾島周辺との関係を維持していた人物を想定するなら、住居は犯人条件の一部になる。

ここで公営住宅を扱うのは、犯人が公営住宅に住んでいたと見るためではない。無職、不安定就労、家族扶養、公的支援による生活を想定した場合に、足利・太田周辺で長く生活を維持できる低廉な住居基盤があったかを確認するためである。住居条件は、「地元にいた人物」という曖昧な表現を、実家、親族宅、持ち家、長期借家、公営住宅、家業併設住宅などに分けるための材料になる。

確認できる範囲では、足利市側には、堀込町、滝の宮、百頭町、島田町、五十部西山などの市営住宅がある。太田市側では、宝泉、新井、矢場、韮川南、強戸、飯塚、成塚、富沢などが確認できる。太田市側の資料では、家賃帯がおおむね1万円台後半から5万円台とされており、低廉住宅としての検討材料になる。

図表8 公営住宅・低廉住宅の時期別整理
区分該当住宅関係する事件時期事件分析上の扱い要確認事項
1979年時点で存在した住宅太田市・宝泉(S51〜S53)福島万弥さん事件(1979年) 添付資料上、1979年以前に整備済みと読める住宅。太田市側の低廉住宅として確認対象に入る。ただし、足利市通5丁目・八雲神社付近を起点とする福島万弥さん事件と直結するものではない。 1979年時点の足利市側公営住宅、安価賃貸、親族所有住宅、市営住宅台帳、住宅地図。
1984年時点で存在または整備中だった住宅 太田市・新井(S57〜S59)
太田市・矢場(S57〜S58)
足利市・百頭町(S57)
足利市・滝の宮(S58〜H2)
長谷部有美さん事件(1984年) 1984年時点で確認対象に入る住宅群。足利市側では百頭町、滝の宮、太田市側では新井、矢場が検討対象になる。ただし、整備期間中の住宅は、事件当時にどの棟が入居可能だったかを分けて確認する必要がある。 棟ごとの完成時期、入居開始時期、単身入居の可否、家族世帯向けかどうか、当時の家賃表。
1984年以降に整備された住宅 足利市・堀込町(S59〜S61)
足利市・島田町(S59〜S60)
足利市・五十部西山(S61〜S63)
太田市・韮川南(S60)
太田市・強戸(S61〜S62)
太田市・飯塚(S61)
太田市・成塚(S62〜S63)
太田市・富沢(S63〜H6)
大沢朋子さん事件(1987年)
松田真実さん事件(1990年)
横山ゆかりさん事件(1996年)
1987年以降の事件では、低廉住宅・公営住宅を含む地域固定要因として検討価値がある。足利側事件群と群馬側事件群を分け、発生地点、終点、河川敷、公園、パチンコ店との位置関係を確認する。 各住宅の所在地、事件現場との距離、入居条件、収入基準、障害・高齢・母子世帯などの条件。
1990年代に入居可能だった住宅 足利市・滝の宮(H2まで)
太田市・富沢(H6まで)
S50年代〜S60年代に整備済みの住宅全般
松田真実さん事件(1990年)
横山ゆかりさん事件(1996年)
1990年代には、整備済み住宅と整備期間中の住宅を分けて見る必要がある。特に横山ゆかりさん事件では、太田市内に長く残る生活基盤として、低廉住宅、親族所有住宅、家業併設住宅を含めて検討できる。 1990年代の空室状況、単身入居可否、家賃帯、住宅地図、地域交通、徒歩・自転車・原付圏。

※この表は、犯人が公営住宅に住んでいたことを示すものではない。現在確認できる自治体資料から、足利・太田周辺に低廉な住居基盤が存在したかを時期別に整理したものである。当時の入居実態、空室状況、単身入居の可否、収入基準は、年度別資料で別途確認する必要がある。

ただし、現在確認できる自治体資料は、当時の入居実態を直接示すものではないことに留意が必要だ。建設年度、入居開始時期、空室状況、単身入居の可否、家族世帯向けかどうか、収入基準、障害、高齢、母子世帯などの条件は、年度ごとに確認しなければならない。したがって、公営住宅は居住先を断定する資料ではなく、地域内に低廉な居住基盤が存在したかを確認するに留まる。

建設年度で分けると、1979年時点で確認対象に入るのは、太田市の宝泉である。宝泉は昭和51年から昭和53年に整備された住宅とされる。福島万弥さん事件の時点で、添付資料から確認できる公営住宅としては、まずこの住宅が検討対象になる。ただし、これは太田市側の住宅であり、足利市通5丁目、八雲神社付近を起点とする福島万弥さん事件と直結するものではない。

1984年時点では、確認対象が広がる。太田市側では、新井、矢場が昭和57年から昭和59年ごろに整備されており、足利市側では百頭町、滝の宮が確認対象になる。百頭町は昭和57年、滝の宮は昭和58年から平成2年までの整備期間とされるため、長谷部有美さん事件が発生した1984年11月時点で、どの棟が完成し、入居可能だったかを分けて見る必要がある。整備期間中の住宅は、団地名が存在することと、事件当時に入居者を受け入れていたことを同じものとして扱えない。

1984年以降になると、足利市側では堀込町、島田町、五十部西山が加わる。堀込町は昭和59年から昭和61年、島田町は昭和59年から昭和60年、五十部西山は昭和61年から昭和63年とされる。太田市側では、韮川南、強戸、飯塚、成塚、富沢が検討対象に入る。韮川南は昭和60年、強戸は昭和61年から昭和62年、飯塚は昭和61年、成塚は昭和62年から昭和63年、富沢は昭和63年から平成6年にかけて整備された住宅とされる。大沢朋子さん事件、松田真実さん事件、横山ゆかりさん事件を検討する場合、この時期以降の低廉住宅は地域固定要因の候補になる。

1990年代に入ると、昭和50年代から昭和60年代に整備された住宅に加え、足利市の滝の宮、太田市の富沢のように平成期まで整備が続く住宅も確認対象になる。松田真実さん事件、横山ゆかりさん事件の時点では、すでに整備済みの住宅と、整備期間中の住宅を分けて見る必要がある。特に横山ゆかりさん事件は1996年発生であり、太田市側の公営住宅、低廉な借家、親族所有住宅、家業併設住宅を含めて、太田市内に長く残る生活基盤があった人物を検討できる。

地域交通

足利市、太田市、旧尾島周辺を鉄道やバスで横断できたとしても、発生地点から終点までの短距離移動を説明する材料にはなりにくい。事件ごとの終点が河川敷、畑、中州に寄る以上、公共交通よりも、徒歩、自転車、原付、地域内の生活道路の把握を優先して検討する。

足利側の事件では、遊技場周辺から渡良瀬川、畑、河川敷へ向かう動線が焦点になる。群馬側の事件では、公園やパチンコ店から利根川、旧尾島・太田周辺の生活道路へどう移動できたかを確認する必要が生じる。

車を所有していた人物なら、足利、太田、旧尾島を横断する移動は説明しやすい。一方、公的支援を受けていた人物、または車を持たない人物なら、徒歩、自転車、原付、家族車両の一時利用が中心になる。移動手段は、事件群ごとに分けて考える必要がある。

事件群の再整理

5件すべてを一つの連続事件として見るより、現時点では二つから三つの事件群に分けて考える方が合理的である。事件群ごとに同一犯可能性を比較し、差異が大きい事件を無理に同じ枠内に入れず検討する。

A 足利市内のパチンコ店・夕方型

長谷部有美さん事件と松田真実さん事件は、最初に比較する組み合わせになる。いずれも足利市内で発生し、パチンコ店周辺、土曜日、夕方という条件が重なる。終点も発生地点から比較的近く、犯人が足利市内の遊技場周辺と河川敷・農地周辺を知っていた可能性を検討しやすい。

ただし、二件が完全に同じ型というわけではない。長谷部事件は発見まで長期化し、松田事件は翌朝発見された。終点までの距離、発覚までの流れ、目撃情報を比べる必要がある。ここで一致する条件と一致しない条件を分けることが、足利側事件群の検証になる。

B 群馬側の接近型

大沢朋子さん事件と横山ゆかりさん事件は、旧尾島町、太田市周辺という群馬側の生活圏で比較できる。大沢朋子さん事件は公園周辺、自転車の男、利根川河川敷での遺体発見という特徴を持つ。横山ゆかりさん事件はパチンコ店内、防犯カメラの重要参考人、未発見という特徴を持つ。

二件を同一犯と見るには、接近方法と終点の違いを説明しなければならない。公園での接近と、店内での接近は同じではない。遺体発見ありと未発見の差も大きい。ただし、群馬側の生活圏で幼い女児に接近できる人物という点では、比較対象として残る。

C 福島万弥さん事件

福島万弥さん事件は、足利側の事件として扱うことはできる。同じ足利市内であり、渡良瀬川周辺という地理条件も重なる。しかし、発生場所は神社であり、時期は夏休み中の昼間である。さらに、白髪の男性や男児など、他事件とは性質の異なる目撃情報がある。

このため、長谷部有美さん事件、松田真実さん事件とそのまま同じ型に入れるには慎重でなければならない。足利側の地理条件には乗るが、犯罪条件としては別枠で確認する必要がある。

図表9 事件群の再整理
事件群対象事件共通点留意点
A 足利市内のパチンコ店・夕方型 長谷部有美さん事件
松田真実さん事件
足利市内、パチンコ店周辺、土曜日、夕方、近距離移動という条件が重なる。 最も同一犯可能性を比較しやすい事件群である。ただし、終点、連れ出し後の経路、目撃情報をさらに精査する必要がある。
B 群馬側の接近型 大沢朋子さん事件
横山ゆかりさん事件
旧尾島町・太田市周辺で発生し、子どもに接近できる人物という点で比較できる。 大沢朋子さん事件は公園、自転車の男、遺体発見あり。横山ゆかりさん事件はパチンコ店、防犯カメラ人物、未発見であり、接近方法と終点条件に差がある。
C 福島万弥さん事件 福島万弥さん事件 足利市内、渡良瀬川周辺という地理条件は足利側事件群と重なる。 神社、夏休み昼間、複数の目撃情報があり、長谷部有美さん事件・松田真実さん事件とそのまま同じ型に入れるには慎重な検討が必要である。

結論

5件すべて同一犯という仮説は残る。しかし、発生条件を細かく並べると、一本の連続事件として扱うには説明しなければならない差異が多い。

全件同一犯説の負荷

全件同一犯説の最大の弱点は、犯罪条件の差だけではない。約17年間の生活継続性である。単独犯なら、犯人は足利、太田、旧尾島周辺に長く残り、平日昼、土曜午後、祝日、日曜に自由時間を持ち、子どもが単独化する場所と近距離の終点を知り、家族や近隣に疑われず、必要な移動手段を確保し続けた人物でなければならない。

この人物像は成立しないわけではない。実家、親族、家業、公的支援、交替勤務、不安定就労、地域内の人間関係が重なれば、17年近く同じ地域に残ることはあり得る。ただし、それを一人で満たすには条件が多い。

同一犯説を採るなら、犯人像は「地元の男」では不十分である。家、収入、家族、車、免許、公的支援、地域での不審者性まで含めて説明する必要がある。ここまで入れると、全件同一犯説は中心仮説として扱いにくくなる。

一部同一犯を含む複数犯併存

現時点で最も無理が少ないのは、一部同一犯を含む複数犯併存である。長谷部有美さん事件と松田真実さん事件は、足利市内のパチンコ店・夕方型として最も強く比較する。大沢朋子さん事件と横山ゆかりさん事件は、群馬側の接近型として比較する。福島万弥さん事件は、足利側の地理条件には入るが、神社、夏休み昼間、複数の目撃情報を持つため、別枠で確認する。

この整理は、同一犯説を否定するものではない。長谷部有美さん事件と松田真実さん事件、大沢朋子さん事件と横山ゆかりさん事件のように、一部同一犯の可能性は残る。ただし、5件を最初から一本の線で結ぶのではなく、それぞれの事件が本当に同じ条件を持つのかを確認する必要がある。

北関東連続幼女誘拐殺人事件は、呼称としては有効である。しかし、犯人像を一人に固定するには無理が残る。5件を二つから三つの事件群に分け、一部同一犯と複数犯併存を中心に置くことが、現在の公開情報・報道情報から導ける最も無理の少ない整理である。

関連記事

以下の記事は、北関東周辺の誘拐事件、足利事件とDNA鑑定、同一犯説と複数犯説を考えるための関連資料である。個別事件を深く読む場合は横山ゆかりさん事件、比較対象としては佐賀女性7人連続殺人事件の記事が参照点になる。

図表 関連記事と本記事での位置づけ
関連記事本記事での位置づけ関連する論点
横山ゆかりちゃん誘拐容疑事件
(太田市パチンコ店女児失踪事件)
群馬側事件群、パチンコ店、防犯カメラ人物、未発見事件の確認に使う関連記事。 横山ゆかりさん事件、太田市高林東町、パチトピア、重要参考人、未発見。
優しいおじさん事件:考察 子どもへの接近、誘い出し、地域内の不審者像を考えるための関連記事。 誘い出し、接近方法、子どもが警戒しにくい人物像、地域内の不審者情報。
『64(ロクヨン)』と功明ちゃん誘拐殺人事件 北関東周辺の誘拐事件を考える際の関連資料。 誘拐事件、北関東、地域社会、捜査、報道、未解決事件の記憶。
DNA捜査とプライバシー保護と冤罪証明ための利用 足利事件、DNA鑑定、冤罪証明の文脈を補う関連記事。 足利事件、DNA鑑定、冤罪、再審、捜査手法、プライバシー。
佐賀女性7人連続殺人事件
(水曜日の絞殺魔)
同一犯説と複数犯説を比較する際に参照できる関連記事。 連続事件、同一犯説、複数犯説、曜日性、地域内での事件群整理。

参考資料

本文の基礎に置く資料は、警察・自治体・裁判関係資料、当時報道、天文・気象資料に分ける。記事内では、一次情報と報道資料を混ぜずに扱う。

図表 記事に使用した参考資料一覧
区分資料名本文での使用箇所備考・URL
警察一次情報 警察庁「足利事件における警察捜査の問題点等について」 足利事件、DNA鑑定、再審無罪後の検証、旧捜査情報の扱い。足利事件に関する一次資料として使用。
警察一次情報 群馬県警察「ゆかりちゃん誘拐事件」 横山ゆかりさん事件の発生日、発生場所、重要参考人の特徴、防犯カメラ人物。群馬側事件群の一次情報として使用。
新聞報道毎日新聞 1990年5月14日松田真実さん事件の発生地点、遺体発見場所、徒歩連れ出し型、約600mの距離、暗さ、照明の有無。新聞データベースで確認。
新聞報道西日本新聞 1990年5月18日足利市内三事件の比較。福島万弥さん事件、長谷部有美さん事件、松田真実さん事件の関係整理。足利側事件群の比較資料。
新聞報道朝日新聞 1989年6月17日大沢朋子さん事件の発生経過、遺体発見、失踪直前の自転車の男に関する目撃情報。群馬側事件群の目撃情報資料。
新聞報道朝日新聞 1990年5月23日松田真実さん事件の不審者リスト照合、遺留品捜索、ネコを探していたとの目撃情報。接近契機と不審者情報の確認に使用。
新聞報道朝日新聞 1990年5月31日警察庁捜査一課長の現場視察、周辺聞き込み、景品交換所周辺の目撃可能性。足利三事件の捜査上の関連づけに使用。
新聞報道朝日新聞 1990年9月13日大沢朋子さん事件の捜査難航、尾島公園、意見箱、30歳前後の自転車の男。大沢事件の接近方法と地域情報に使用。
新聞報道朝日新聞 1990年11月10日松田真実さん事件の半年後報道、捜査員数、情報件数、ロッキー客、聞き込み範囲、B型人物の重点捜査。捜査規模、不審者母数、目撃人物像に使用。
新聞報道朝日新聞 1991年8月27日松田真実さん事件の新目撃情報。20歳ぐらいの男と、従来の中年男証言の不一致。犯人像を単一の年齢像に固定しない根拠として使用。
続報注意資料日刊スポーツ 1991年12月3日菅家氏逮捕時に、足利・尾島周辺の事件が同一犯的に語られた報道過程。犯人性の資料としては使わず、事件群が一本化されていく過程の確認に使用。
続報注意資料朝日新聞 1991年12月23日福島万弥さん事件、長谷部有美さん事件に関する当時の供述報道、リュックサックに関する物証情報。供述部分は犯人性の根拠にせず、物証情報のみ慎重に参照。
後年報道読売新聞 2011年6月30日足利・太田連続未解決事件家族会の結成、五事件が一括されて語られる文脈。同一犯説の社会的・遺族側文脈として使用。
後年報道朝日新聞 2011年6月30日被害家族による五事件再捜査要望、署名、チラシ、国・自治体への嘆願活動。五事件が同じ枠で扱われる後年経緯として使用。
自治体資料 足利市「足利市営住宅等のご案内」 足利市内の公営住宅、建設年度、低廉住宅の時期別整理。住宅条件・地域固定要因の分析に使用。
自治体資料 足利市「市営住宅等の入居申し込みについて」 市営住宅の入居条件、低廉住宅としての位置づけ。犯人像の生活条件分析に使用。
自治体資料 太田市「住宅の空き状況および写真」 太田市側の公営住宅、建設年度、家賃帯、群馬側事件群の居住基盤。旧尾島・太田側の生活圏分析に使用。
公的支援資料 厚生労働省「生活保護実施要領等」 公的支援を受ける人物の収入説明、自動車保有・使用可能性の検討。公的支援と車所有の関係を分析する資料。
地域交通資料 足利市「足利市地域公共交通計画」 足利市内の移動条件、徒歩・自転車・自動車の混在圏としての地域把握。短距離型事件の移動手段分析に使用。
地域交通資料 太田市「太田市地域公共交通網形成計画」 太田市側の交通事情、車依存、公共交通の薄さ、非所有者の移動条件。群馬側事件群の移動条件分析に使用。
住宅統計 e-Stat「住宅・土地統計調査」 借家、公営住宅、住宅所有関係、当時の低廉住宅・単身居住可能性の確認。住宅条件の数量的補強資料。
天文資料 国立天文台「こよみの計算 長期版」 各事件当日の日の出、日の入り、薄明終了、月齢の確認。長谷部有美さん事件、松田真実さん事件の夕方条件分析に使用。
気象資料 気象庁「過去の気象データ検索」 事件当日の降水、気温、風向風速、日照、視界条件の確認。天文条件と合わせて、夕方型事件の環境確認に使用。
地図資料住宅地図・ゼンリン地図パチンコ店、駐車場、景品交換所、河川敷入口、橋、農道、当時の建物配置。発生地点と終点、移動経路の復元に使用。


◆子供が被害者となった殺人事件


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投稿者プロフィール

Jean-Baptiste Roquentinは、Albert Camusの『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartreの『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場する主人公の名を組み合わせたペンネームです。メディア業界での豊富な経験を基盤に、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルチャーなど多岐にわたる分野を横断的に分析しています。特に、未解決事件や各種事件の考察・分析に注力し、国内外の時事問題や社会動向を独立した視点から批判的かつ客観的に考察しています。情報の精査と検証を重視し、多様な人脈と経験を活かして幅広い情報源をもとに独自の調査・分析を行っています。また、小さな法人を経営しながら、社会的な問題解決を目的とするNPO法人の活動にも関与し、調査・研究・情報発信を通じて公共的な課題に取り組んでいます。本メディア『Clairvoyant Report』では、経験・専門性・権威性・信頼性(E-E-A-T)を重視し、確かな情報と独自の視点で社会の本質を深く掘り下げることを目的としています。

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