
要約(クリックで開く)
映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作は、壮大な映像や戦闘だけでなく、J・R・R・トールキンが築いた神話、歴史、言語によって支えられた作品である。その世界を単なるファンタジーではなく、地球の遠い過去を描いた「歴史」として捉えると、フロドとサムの旅や、一つの指輪をめぐる出来事の重みが見えてくる。本記事では、シリーズの作品概要とあらすじを紹介しながら、中つ国、サウロン、魔法使い、ホビットなど、映画をより深く楽しむために押さえておきたい用語を解説する。
細部まで作りこまれた骨太のファンタジーは楽しいものだ。現実とは大きく異なるにも関わらずリアリティがあり、その世界に生きる人々や動物の息遣いが聞こえてくるようで、自分がその場に飛び込んだような気分にさせてくれる。ハリー・ポッターシリーズのホグワーツや、魔法使いハウルの城で暮らしてみたいと思ったことのある人も多いはずだ。
そんな、人々を魅了して離さないファンタジー作品の中でも、一際重要な位置にある作品として『指輪物語』が挙げられる。『ロード・オブ・ザ・リング』というタイトル(原題そのまま)で映画化されており、3時間前後の尺で3部作という超大作となっている。
この長尺さからも分かる通り、本作は非常に奥深い。そして奥深いが故に、新たなファンを取り込みにくいという難点もある。 今回は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ初心者に向けて、原作から映画シリーズまで大ファンの筆者が、本作の楽しみ方と重要な用語を解説していきたい。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの作品概要
『ロード・オブ・ザ・リング』は、2001年から2003年にかけて公開されたファンタジー映画である。ピーター・ジャクソンがメガホンを取り、イライジャ・ウッドやヴィゴ・モーテンセン、イアン・マッケランなどが主演を務めた。
本作はJ・R・R・トールキンの『指輪物語』を原作としている。原作・映画共に「旅の仲間」「二つの塔」/「王の帰還」という3部構成となっており、フロドが強大な力を持つ指輪(一つの指輪)破壊するまでの道程及び、それに伴う指輪戦争(人間を代表とする自由の民vs中つ国の支配を目論むサウロン勢)の様子が描き出されている。
原作がある映画の常として、本作もまた、原作から大きく変更された部分が少なくない。こうした変更は原作ファンから批判されがちではあるものの、本作は基本的に、原作再現の仕方が素晴らしいと思える作品だ。また、俳優陣の演技や映像の美しさ、音楽の壮大さなど合わせると、今後本シリーズに並ぶファンタジーはなかなか現れないのではないかと思うほどである(筆者の感覚)。
1本3時間前後もある長尺ではあるものの見飽きることはない。むしろ、長尺であるが故に、物語の世界にどっぷりと浸ることができる作品だと言えるだろう。
あらすじ
遥か昔、冥王・サウロンは中つ国を支配するために強大な力を込めた「一つの指輪」を作り出した。サウロンの敗北からイシルドゥアの死に至り、指輪の行方は分からなくなっていたが、ひょんなことから、ホビット庄に暮らすホビットのフロドが手にすることになる。
指輪がサウロンの元に戻ると、冥王は復活し力を取り戻してしまう。指輪を破壊し中つ国を守るため、フロドと旅の仲間は敵地モルドールにある滅びの山を目指すことになった。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの楽しみ方
筆者にとって『ロード・オブ・ザ・リング』は何物にも代えがたい程大好きな作品だ。本作に関わる作品の内、手に入るものは概ね読んだり見たりした自信があるし、本編も繰り返し鑑賞している(かといって、全てを理解しているかというと怪しい)。もちろん、本作の全日譚にあたる『ホビット』シリーズも、原作/映画共に大好きだ。
しかしそんな筆者の周囲でも、本作に苦手意識を持つ人がいる。それは、映画や原作の長さに腰が引けているためであったり、そもそもファンタジーに興味がなかったりするためだったりと様々な理由があるが、総じて、本来は一番おもしろいであろう部分を掴みかねている人が多いように感じる。
なぜ、おもしろさを掴み損ねるのか。それは、本作が持つ重厚な、重厚過ぎるとも言える世界感にあるのではないだろうか。
一般的に、本作のジャンルはファンタジーに分類されることがほとんどで、本記事でもそう紹介してきた。もっと細かく分類すれば「ハイ・ファンタジー」と称されることもある。そもそも、現代のファンタジーに繋がる基礎を築いたのが、本作の原作『指輪物語』だと言っても過言ではない。例えば、ゲームなどでよく見かける金属の「ミスリル」は、トールキンが考え出した架空の金属である。
しかし、単純に「ファンタジー」だと考えてしまうと、本作のおもしろさは半減してしまうだろう。なぜならば、先にも述べたように、本作が持つ本来の世界観があまりにも重厚過ぎるからだ。
原作者であるトールキンは、作家である以前に言語学者でもあった。原作にはエルフ語をはじめとする架空の言語がいくつか登場するが、トールキンはこれらの言語を作り上げ、作中で使用している。映画でもしっかり利用されているため、注目してみると良いだろう。
また、言語体系を作り上げると共に、世界がどのように生まれたかを語る創世神話や、物語の舞台となる中つ国の歴史も深く作り込まれている。創世神話や中つ国の歴史に関しては、映画ではほんの一部しか触れられていない。しかし、それがあるのとないのとでは、受け手が得る感覚は大きく異なるはずだ。
これらを踏まえた上で本作のジャンルを考えると、「歴史もの」という言葉が浮かんでくる。もちろん本作がファンタジーであることは間違いないのだが、ファンタジーよりも歴史ものとして見た方が楽しくなる瞬間が少なくない。
代表的な部分は、第二部から始まるフロドとサム、そしてゴラムの3人旅の部分だ。第二部では、アラゴルンたちと別れ、サムだけを供にモルドールへ向かうフロドが描かれるが(ゴラムは特殊な混ざり方をした)、これらのシーンは一見すると地味で、おもしろさを感じにくいのである。
アラゴルンたちの旅は激しい。ローハンで、ゴンドールで、命をかけた戦いを繰り広げる。これはいかにもヒロイックで、スペクタクル溢れるシーンだ。対してフロドたちは、ひたすら歩き、飢えて渇きに苦しむ。ゴラムが1人で会話を繰り広げるシーンは見どころではあるものの、アラゴルン一行の旅路に比べると楽しむにはコツがいる。
ここで、本作の世界感の裏付けとなる歴史に目を向けてみる。なぜ、ゴラムの過去。ビルボとゴラムの奇妙な関係性。指輪が生み出され今にいたるまでの歴史や、フロドの元に来た経緯。ビルボ、そしてフロドがガンダルフと「友人」である、という事実。こうした出来事はすべて、中つ国の歴史が紡いできた因果の一部である。
このように捉えると、「中つ国の歴史」という壮大な物語の中で、フロドやサムが持つ役割が見えてくるはずだ。そうなると、地味に見えてしまいがちなフロド達の旅路が、アラゴルン一行にも勝るとも劣らない、正真正銘の冒険譚であることが分かるようになってくる。
また、本作の舞台となる中つ国は私たちの住む地球であり、本作および原作で描かれているのは、地球の遠い昔に起こったこと(失われた過去)である、という設定も、本作をファンタジーだけでなく、歴史ものとして見た方が良い理由の一つである。
『ロード・オブ・ザ・リング』の用語解説
ここからは、映画『ロード・オブ・ザ・リング』の重要な用語を解説していく。細かな部分に言及するとややこしくなる可能性が高いことから、「映画を見る際に押さえておきたいこと」にある程度絞っていこうと思う。
中つ国
「中つ国(Middle-earth)」は、本作および『ホビット』シリーズの舞台となる世界のことを指す。先述の通り「地球そのもの」であり、人間だけでなく、エルフやドワーフ、ホビットなど数多くの種族が住んでいた。しかし、エルフのほとんどが西方へと去り、指輪戦争後にホビットやドワーフが徐々に姿を消していったとされている。
ちなみに、西方とは「アマン」という場所を指し、エルフの故郷である。
中つ国には、ホビット庄を始め、人間の国であるゴンドールやローハン、エルフの国である裂け谷ロスローリエン、モルドール、『ホビット』シリーズの舞台となった谷間の国などが存在している。物語の主な舞台は中つ国の中でも西側に位置しており、現在のヨーロッパ付近と考えると分かりやすいだろう。
実際、フランスのような雰囲気を持つローハンや、イギリスの田舎町のイメージが強いホビット庄など、映画を見ていると「どこの国か」を何となく考えるのが楽しいポイントでもある。
冥王・サウロン
サウロンは本作における最大の敵であり、中つ国の支配を目指す指輪戦争の元凶となった存在である。元々は強大な力を持つ精霊(マイアール)のような存在だったが、本作では肉体を失った状態で登場している。映画本編の中で、「燃え盛る目」としか表現されないのはそのためである。
冥王と称されることが多いが、2代目である。元々は初代冥王であるモルゴス(映画には未登場)に仕えていた。
一つの指輪を作った張本人で、この指輪に自身が持つ力の多くを注ぎ込んでいた。そのため、指輪を失うと大きく弱体化してしまう。
サウロンの拠点はモルドールであり、その配下はオークをメインに構成されている。ただし、中つ国の東方に位置するハラドリムの勢力など、人間の配下も少なからずいる。
余談ではあるが、「指輪物語」を題材にしたゲーム『シャドウ・オブ・ウォー』をプレイすると、美しい姿のサウロンを見ることができる。
一つの指輪
一つの指輪は、サウロンがその手で作り上げた指輪である。先述の通り、サウロンの力の源とでも言える存在で、この指輪を破壊することこそが、フロドやアラゴルンに共通した目的である。美しい金でできた見た目をしており、火の中に入れるとモルドールの暗黒語が浮かび上がる。エルフやドワーフ、人間に贈られた「力の指輪」を支配することができる。
持ち主の体格に応じてサイズを変える他、指輪を付けた人を透明にしたり、寿命を延ばしたりといった能力を持っている。しかし、一つの指輪は持ち主(サウロン以外)の心をむしばむ性質を持ち、所有し続けるのは危険である。
強い力と精神力を持つ者が指輪を持てば、指輪に込められたサウロンの力を操ることも可能だとされるが、やはり危険すぎる賭けである。
魔法使い
魔法使いは、ガンダルフやサルマンに代表される「イスタリ」と呼ばれる存在である。人間と思われがちだが、もともとは精霊的存在(マイア)であり、老いた肉体を持ちながら遥か昔から中つ国で活動している。彼らはサウロンに対抗するため西方から来た「助言者」であり、人知を超えた能力を持っている。彼らの役割は、サウロンに対抗する自由の民を助け、導くことである。
代表的な魔法使いには、灰色のガンダルフ、白のサルマン、茶のラダガスト(映画『ホビット』シリーズに登場)などがいる。それ以外にも複数の魔法使いが中つ国に来たらしいが、映画には登場していない。
ホビット
ホビットは、主人公のフロドやサム、ビルボなどが属する種族名である。身長は人間の半分ほどで、頑丈な体と毛むくじゃらの足を持ち、靴を履かない。 ホビット庄という豊かな農村地帯で暮らし、食べる事・穏やかな日常などを愛している。その反面、ビルボやフロドなど一部を除き、冒険心は少ない。基本的に争いを好まないが、いざという時には驚くほどの勇気と粘り強さ、精神的な強靭さを発揮するのも特徴である。指輪の誘惑にも、ある程度の耐性があるようだ。
また目が良く、石投げや弓で才能を発揮するほか、喫煙(パイプ)をこよなく愛する種族でもある。
作中のゴラムも、ホビットのストゥア族の出身であるとされる。
まとめ
2027年に、新しい『ロード・オブ・ザ・リング』の映画が公開されると言う。今度はゴラムに焦点を置いた作品のようだ。監督は3部作でゴラムを演じたアンディー・サーキス。製作陣には3部作の監督であるピーター・ジャクソンが参加するという。
ゴラムは『ロード・オブ・ザ・リング』の数ある登場人物の中でも、特に重要な存在である。そんな彼を主題として映画化するのであれば、ぜひ追いかけるべき作品でもあるだろう。
とは言え、シリーズ全体を通して鑑賞していないのであれば、本シリーズの理解は難しくなってしまう。ぜひ本記事を参考にして、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの世界観に浸りきって、作品の世界を堪能してほしいと思う。
公式映像資料(YouTube)
本記事で取り上げた作品の公式映像資料。
文章だけでは伝わらない空気を、映像として確認するための資料として掲載する。
🎥参考映像(出典:ワーナー ブラザース 公式チャンネル)映画『ロード・オブ・ザ・リング』本予告
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