世田谷一家殺害事件 DNA捜査の具体例

前回(2021年11月23日)の記事で「世田谷一家殺害事件(警視庁の正式事件名:上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件)」の犯人は、「東京の城南地域のマンションに関係する日系移民の子孫だと思われる」と記した。

この犯人は、日本人としては珍しいDNAの型を持つ人物である。

また、過去の報道などから犯人または犯人の家族、親族、関係者は被害者Aまたは家族の知人の可能性があり、以前から被害者A宅を訪れていたとも考えられる。

つまり、犯人は被害者AもしくはA家族の直接または間接的な知人の可能性が高いと推認される。

そして、世田谷一家殺害事件だけではなく、他の未解決事件や凶悪犯罪の捜査にDNA捜査を積極的に導入するための法整備や議論が必要ではないかとも記した。(参考記事:DNA捜査とプライバシー保護と冤罪証明ための利用

前回の本サイト記事(2021年11月23日)以降の大手メディア報道を見てみよう。

(社説)DNA捜査 法整備して信頼つなげ
広島県福山市で01年2月に起きた主婦刺殺事件で、67歳の男が先ごろ逮捕・起訴された。現場の血痕のDNA型の特徴が、別の事件で捜査対象になった男のものと合致したという。発生から20年8カ月。本当に被告の犯行かどうかはこれからの裁判を経て決まるが、殺人罪の公訴時効が撤廃されるなか、検挙にこぎつけた捜査当局の努力に敬意を表したい。一方で課題も改めて浮き彫りになった。DNAをめぐる捜査のあり方である。県警は今回、現場周辺の住民からも照合用のDNAを任意で採取した。断れば疑われかねないと思って応じた人もいる。対象をどう決め、どれだけの人数から提供を受けたのか、公式の説明はない。捜査員は住民に、事件と無関係だとわかればデータベースに登録せず廃棄すると約束したという。だがそれを確認・検証するすべはない。可能性を「つぶす」ための同様の捜査は千人規模で広く行われている。この事件に限らず、協力した人が抱く不安や疑問は置き去りにされたままだ。容疑者に関する警察庁のDNA型データベースの登録件数は、昨年末までに140万件を超えた。しかし、採取や保管、利用、抹消などを定めた法律はない。国家公安委員会の規則に基づいて運用され、不起訴や無罪になった人の情報をどうするかは当局の判断次第だ。05年の運用開始を前に、当時の国家公安委員長は国会で「法制化の必要性」に言及。有識者研究会も12年に検討すべき論点や材料を示したが、うやむやになった。運用に委ねられている現状が都合よく、法制化によって制約が増えるのは避けたいという本音が透けて見える。しかしそれでいいのか。日々の事件はもちろん、来月末で発生21年となる東京・世田谷一家殺害など未解決の案件も数多く残る。年月の経過により目撃証言などに頼る捜査は難しく、物証とりわけDNA型鑑定への期待は大きい。人々の理解と協力を得られるよう、DNAの取得・管理について明確なルールを設け、社会の合意を築いておくことが、捜査側にとっても必要ではないか。主要国では、法律を整備して乱用できない仕組みにしているところが多い。例えばカナダでは、データベースの運営を警察とは別の機関が監督する。ドイツでは、登録対象を重大事件を起こしたり犯罪を繰り返したりする人に限ったうえで、裁判所が必要性を判断する。現状を良しとせず、課題を洗い出し、「究極の個人情報」にふさわしい扱いをすることが、市民の信頼につながる。引用:

朝日新聞デジタル 2021年11月29日

上記記事の指摘のとおり、事件発生から20年以上の年月の経つ事件では、人の記憶の劣化などにより新たな目撃情報の入手などは難しくなるだだろう。

だが、20年の年月の間に科学技術などは大きく進化、進歩した。20年前にはできなかったことができる。DNA型の情報からの親子関係、血縁関係の鑑定精度も飛躍的に向上していた。

当然だが、世田谷一家殺害事件の犯人にも親はいる。血縁者はいる――筈だ。――なぜなら、人は塵から生まれる訳でも、泥から生まれる訳でもないのだから。そして、犯人が被害者A宅の遺したDNAデータから犯人の血縁者が割り出せるのなら――犯人逮捕(死亡や海外逃亡の可能性もあるが)に限りなく近づけるだろう。

個人を識別などする究極の情報もいえるDNA情報を凶悪事件や未解決事件の捜査に活用するための「人々の理解と協力」「DNAの取得・管理について明確なルール」の法整備、そこに至る「社会の合意」と議論を始める必要がある。

今回は世田谷一家殺害事件の 犯人は、「被害者AもしくはA家族の直接または間接的な知人の可能性が高い 」「東京の城南地域のマンションに関係する日系移民の子孫だと思われる」 について検証してみよう。

世田谷一家殺害事件 犯人は日系移民の子孫の可能性を考察

世田谷一家殺害事件の犯人は「A型の血液」「父方は日本を含む東アジア系、母方は南欧系にそれぞれ多い特徴がある」との分析結果(2005年~2006年頃)と報道されている。それを受け犯人は外国人説なども散見されるが、本サイトは前回も記したとおり、事件の犯人像に合致する可能性の高い人物は、東京の城南地域のマンションに関係する日系移民の子孫だと考える。

独立行政法人国際協力機構(JACA)の資料などによれば、近世(明治期よりも前にもいたが)の日系移民は※1明治元年(1868年)から同8年頃のハワイ移民686人から始まる。その後、1939年頃にピークに達する(※1 独立行政法人国際協力機構 「海外移住統計 昭和27年度~平成5年度」参照)。

また、数年前の数字だが推定で約400万人の海外日系人が北米、南米を中心に生活しているといわれる。さらに、外務省の「平成12年(世田谷一家殺害事件の年)の海外在留邦人数調査統計(概要)(平成13年6現在)」によれば、約28万人以上の永住者(原則として在留国より永住権を認められている日本国籍保有者)がいる。これらの数字はあくまでも把握されている数字のため、明治期以降に海外に渡った日系移民の子孫(2世、3世、4世など)を合わせるとその数字はさらに大きくなるだろう。

父系をアジア系(日本人)、母系を欧州系とする日系移民及びその子孫の実数は不明だが、日本を含め世界中にかなりの人数がいることは容易に想像できる。

世田谷一家殺害事件の犯人は、「父方は日本を含む東アジア系、母方は南欧系にそれぞれ多い特徴がある」DNA型を持つ犯人だといわれ、この情報(報道)から犯人の属性に関する「中国人説」「韓国人説」「フランス人と日本人のハーフ説」「東南アジア系と日本人のハーフ説」「米軍及び軍施設など関係者説」など様々な説(推理)が散見される。

だが、本サイトは、世田谷一家殺害事件の犯人は日系移民の子孫だと考える。それは、父方は日本から海外に渡った移民または移民の子孫であり、母方は欧州からの移民または移民の子孫でもある。

前回と同じく現段階での詳細の公表は差し控えるが、犯人と思われる人物(犯人)または親族など関係者は、東急電鉄目黒線『奥沢駅』を中心とした3キロ圏内の場所に所在するマンションに関係すると考える。

画像は、世田谷一家殺害事件の事件現場(家屋及び周辺写真など)及び『奥沢駅』から3キロ圏内の地図。

世田谷一家殺害事件の事件現場画像の出典:警視庁HP「上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件 事件詳細日本語版PDF

事件当時、世田谷一家殺害事件の犯人は『奥沢駅』から3キロ圏内に居住などし、事件現場の東京都世田谷区上祖師谷3丁目に向かったと思われる。

――彼(犯人はDNA型などから男性と認定されている)は、凶器(関孫六の柳葉包丁)をヒップバックに忍ばせて――

犯人と思われる者の親族など関係者の詳細の公表は差し控えるが、世田谷一家殺害事件は必ず解決するだろう。

被害者の無念やその遺族、関係者の不条理が少しでも和らぐ日は必ず来る。


★引用文献

(社説)DNA捜査 法整備して信頼つなげ   朝日新聞デジタル 2021年11月29日付

★参照資料

独立行政法人国際協力機構(JACA) 『海外移住統計 昭和27年度-平成5年度』発行所:国際協力事業団 発行年:1994年

外務省「平成12年の海外在留邦人数調査統計(概要)(平成13年6現在)」

返り血のないダウンジャケット 世田谷一家殺害事件のプロファイリング 大和かおる,著

その他、新聞記事、個人ブログ、個人SNS、DNA(ゲノム)とプライバシーなどに関する論文を参照しました。


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Jean-Baptiste Roquentin運営者

投稿者プロフィール

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。
Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。
小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。
分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。

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