ドラマ『石つぶて』と外務省機密費流用事件

『石つぶて 〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』

ご注意:この記事には、ドラマ『石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』のネタバレが含まれています。

ドラマ『石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』概要

2017年11月から放送された全8話のドラマ『石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』は、「外務省機密費流用事件」という前代未聞の事件に基づいた究極の刑事ドラマである。

原作は、元読売新聞の警視庁番記者・清武英利氏(1950年10月生)の傑作ノンフィクション『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』(講談社、2017年)。

出演は、佐藤浩市、江口洋介、北村一輝、萩原聖人、佐野史郎などの名優が名前を連ねる。

古くから刑事ドラマ・映画の主役といえば、華々しい活躍、複雑な謎解きを扱う「捜査一課」の刑事たちの独壇場だともいえるが、本作は警察組織の中でも特に秘密性の高い「捜査第二課」を主軸にする異色の刑事ドラマである。

出典:KODANSHA Books&Comics公式チャンネル

知能犯、詐欺、汚職、収賄、横領などを扱う無骨で古臭い警視庁捜査第二課の刑事たちが国家の中枢、霞が関のエリート集団・外務省に地道な戦いを挑む姿は古くからの刑事ドラマの印象を覆すと言っても過言ではないだろう。

ドラマ『石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』の魅力を考察しながら、実際の「外務省機密費流用事件」の概要などを解説していこう。

なお、原作のノンフィクション『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』(清武英利著,講談社,2019年)の登場人物は、政治家、官僚、警察官など※1,全て実名(現職警察関係者は匿名)で書かれているが、ドラマ『石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』では架空の名前が使われている。本記事でも『私とキャリアが外務省を腐らせました 汚れ仕事ザンゲ録』の著者・小林祐武氏以外はドラマ内の名前で表記する。

※1,「外務省機密費事件」関係者の詳細は、原作のノンフィクション『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』をお読みください。

ドラマ『石つぶて~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』あらすじ

物語は1997年3月の「外務省エリート高官2億円着服疑惑」の隠ぺいから始まる。この事件は、外務省がプールしていた年間50億円の機密費の一部を複数の外務省高官が料亭の飲食などで私的に使い込み着服しているという疑惑だが、「国益」を理由に省内に徹底的な箝口令が敷かれ、同事件は闇のなかに葬り去られてしまう。

それから2年後の1999年7月、警視庁捜査第二課で贈収賄事件などを担当する通称ナンバー(第四知能犯、第五知能犯、第六知能犯。各部署には3班が設置され第四、第五、第六には計9つの班がある)は、詐欺及び業務上横領の容疑で大手証券会社の強制捜査(家宅捜索)と支店幹部数名の逮捕に踏み切る。

だが、逮捕劇の裏にあった二課の出世頭を自任する担当刑事の収賄(加重収賄)容疑(捜査対象から金銭を受領し、捜査対象側に情報などを渡す)を同僚刑事が突き止め、全ての組織と人にあるだろう出世競争の妬み、嫉み、不信、承認欲求に職人気質と個人技を尊ぶ二課の刑事特有の無骨さと組織の閉鎖性が露わになる。

一方、警察隠語でサンズイ(汚職の汚はサンズイ)と呼ばれる「汚職」などの情報を収集、裏取りし、分析情報をナンバーに渡す「警視庁捜査第二課 第一知能犯情報係(通称、情報)」の主任(主任は役職。階級は警部補)木崎睦人は、汚職、談合の情報を集めるため「人に会い」「人の表情を読む」など、日々、地道な仕事を続けている。

木崎の徹底した「保秘(情報の秘匿。同僚からマスコミや捜査対象に情報が洩れる可能性があるため同僚にも情報は明かさない)」と情報収集相手からのクレームにも動じない情報収集作業は、「情報」の同僚にも風変りな頑固者、「かなり偏屈な男(後述する斎見晃明係長の言葉)」に映っているようだ。

同じころ、捜査第二課長室に警部補(警部に昇進)の斎見晃明が呼ばれる。斎見は暴力団を担当する刑事部捜査第四課(2003年から組織犯罪対策部第四課。さらに2022年から暴力団対策課に再編)での実績が買われ「情報」の係長(係長は役職)を拝命する。

暴力団を相手にしてきた斎見は、熱血漢でありながらも強い向上心と出世欲を持ち、当時(1999年頃)話題の「司法制度改革」「警察改革」推進派でもある。斎見は、強引な取り調べ、暴力、脅しなどを伴う違法性のある取り調べなどに問題意識を持ち、古い警察組織の在り方、保秘や単独行動を信条とする「情報」の木崎や暴力的な言動のナンバーの古参刑事と幾度となく衝突する。

なお、余談だが、日本の長期勾留、取り調べの全面可視化、録音などの未整備問題は2013年の「国連拷問禁止委員会」でも問題視され「日本の司法制度は中世レベル」と評された。

事件のネタ(情報)を探し回る木崎は、情報源の一人、元民主自由党総務会長溝口恭輔の東京事務所を訪れ、溝口から吉田茂元総理の秘書から野に下り会社を興した菱岡博文を紹介される。菱岡の会社は、菱岡の経歴(吉田茂事務所の秘書)を活かし、主に外務省に印刷物、事務納品など物品などを卸している。「基本的」に外務省との取引は入札により決まるが、菱岡の会社の番頭格社員が退職し独立した後から「基本」の秩序が乱れ始めたとのことらしい。

さらに菱岡は、外務省のノンキャリアのなかにはキャリアよりも贅沢な生活をしている者がいるなどと木崎に語り、木崎は菱岡の会社の社員からも外務省のノンキャリア三悪人に関する情報を得る。

先ず、木崎が狙いを定めたのは西欧局第一課課長補佐・秋村篤郎(モデルは『私とキャリアが外務省を腐らせました 汚れ仕事ザンゲ録』講談社2004の著者小林祐武氏。同氏は2001年、APEC大阪会議の会場費約4億2,300円の水増し請求による詐取の容疑で逮捕され、その後、執行猶予付きの有罪判決確定した)だった。

木崎は、「捜査関係事項照会書」を使い、公共料金(電気、ガス、水道)の引き落とし口座の有無(生活口座の割り出し)や勤務先の外務省に近い、虎ノ門から新橋までの全ての銀行を訪問し、口座の有無を確認する地道な作業を始める。

やがて、木崎は外務省の三悪人のなかで最近は最も力があると噂の要人海外訪問支援室長・真瀬和則(50歳)に目をつける。

秋村に対する捜査と同様に「捜査関係事項照会書」を使い、生活口座を洗い出し、地味な銀行口座確認の捜査を続け、自宅(真瀬は、キャリア官僚用の官舎にただ一人だけ入居するノンキャリア組)付近の宅配会社営業所に出向き「デポ」(配送歴の確認及び配送先の確認。例えばゴルフ場にゴルフクラブの発送があった場合などは利用先のゴルフ場がわかり、ゴルフ場への聞き込みから同行した人物の氏名などがわかる。これにより業者からの接待などがわかる場合がある)を行い、真瀬の住民票と戸籍から家族関係を洗い出し、真瀬の元特殊関係人(愛人)に任意で事情を聞くなど水面下での捜査(内偵捜査)が続く。

漁師のように狩人のように地道な捜査を繰り返す木崎。ついに彼は、1億7,000万円の残高のある真瀬の隠し口座を突き止め、木崎たち警視庁刑事の想定(当初の見立ては役人真瀬と業者との贈収賄事件)をはるかに凌駕する大事件「外務省機密費」の捜査が始まる。木崎と斎見は、激しく対立しながらも少しずつ互いを認め合い、個性的な捜査第二課長・キャリア組の東田将之の理解や「情報」の同僚たち、同じ二課でありながら対立関係にあったナンバーの同僚たちからの協力も得て、警視庁捜査第二課は特別捜査班を結成し、組織として霞が関のエリート集団・外務省に戦いを挑んでいく。

木崎たち捜査第二課は、外務省など官庁のプール金(裏金)、国家の最重要機密「裏の官房機密費」とその使途、キャリア官僚とノンキャリアの関係、官僚と政治家の関係、中央省庁と都道府県警察「警視庁」の関係、「国益」を大義とする国家中枢の深淵に少しだけ光をあてるのだが――。 1997年3月の「外務省エリート高官2億円着服疑惑」の隠蔽と同じ道を辿るのか?警察庁、警視庁幹部(キャリア組)はエリート集団・外務省とキャリア外務官僚に忖度するのか?それとも違う道を辿るのか?捜査の手は外務省キャリア官僚や政治家まで伸びるのか?伸ばすことができるのか?実話に基づいた究極の刑事ドラマが展開される。

刑事・木崎睦人 実存・刑事

木崎睦人は終戦の1945年生まれ。警察に就職した理由は、食べるためだったと真瀬に語っている。要人海外訪問支援室長・真瀬和則の外務省入省は1968年。当時、派出所勤務だった木崎は、1968年12月10日発生した三億円事件の犯人を自らの手で逮捕したいと思ったらしい。それから長い年月を捜査第二課で過ごした木崎は、真瀬の事件は10億円だと軽口を叩きながら親子二代の官僚・真瀬和則の琴線を探りながら触れていく。

まさにそれは、昭和という激動と苦難の時代を知る者同士のやり取りでもある。故郷に錦を飾りたい、母親や父親の自慢になりたい等々の言葉が社会に共有されていた時代にあった人々の心象風景を二人は共有している。二人の身体には組織のために尽くす、滅私奉公の精神が隅々まで沁み込んでいる。

キャリアと組織を守ろうと口を閉ざす真瀬。公とは国民のことだの信条を持ち役人の犯罪を追及する木崎。二人は似た者同士なのだ。 「木崎睦人の実存」は「刑事」だ。酒も博打もやらず、朝から夜中まで刑事の仕事を続け、昼は捜査先付近の公園でパンをかじり、夜は立ち食いソバ屋でソバを啜る。彼には家族はいないだろう。趣味もないだろう。木崎睦人は刑事なのだ。「仕事と生活の調和」など言えなかった時代に生まれ育ち職場で居場所を見つけた古い時代の人間。それが木崎睦人なのだろう。

実際の外務省機密費流用事件の概要

21世紀を迎えた2001年1月1日、読売新聞は特大の元日スクープを記事にした。それは、警視庁捜査二課が外務省の幹部職員を「外交機密費」流用の嫌疑で捜査しているとの報道だった。

外務省幹部、「外交機密費」流用か 自己口座に1億5000万円 警視庁が捜査 首相の外国訪問の際に支出される「外交機密費」を扱う外務省大臣官房の幹部(55)が、自分の銀行口座に一億五千万円もの資金をプールしていることが三十一日、読売新聞社の調べでわかった。問題の口座には、約五年にわたり、一回当たり百数十万-数百万円の入金が月数回のペースで繰り返されており、最も多い時には二億円の残高があった。警視庁捜査二課は、外交機密費の一部が流用された疑いがあるとみて、口座開設の事情を知る関係者の聴取に踏み切るなど捜査を始めた。 この幹部は一九九三年から九九年まで、首相が外国を訪問する際の日程調整などを担当する「要人外国訪問支援室」の室長を務めていた。 複数の同省関係者によると、室長は、首相の外国滞在時のホテル代や専用電話敷設代など必要経費のほか、相手国首脳への贈答品代や接待費など、外交機密費全般を一人で扱っており、年数回-十数回の外国訪問や事前の下見出張の度に、「臨時の出費に対応する」などの名目で一回数百万円の現金を管理する立場にあった。 問題の口座は定期預金口座で、この幹部が室長に就任した後の九四年に都内の銀行の支店に開設された。捜査二課が調べたところ、その直後から、同じ支店の本人名義の普通預金口座に、一か月に数回のペースで一回当たり百数十万-数百万円の入金が現金であり、ほぼ同額が定期預金口座に振り替えられていた。 一回に一千万円を超える入金も数回確認されており、九九年末時点の残高は約二億円にも上っていた。現金は幹部が自分で銀行の窓口に持ち込んでおり、九九年秋に別のポストに異動した直後から入金は途絶えている。 幹部には給与以外に収入はほとんどないことから、捜査二課は、幹部が外交機密費の一部を流用し、自分名義の口座に入金していた疑いがあるとみて関係者から事情聴取を続けている。 一方、幹部は、読売新聞社の取材に、「機密費を流用した事実はない」と疑惑を否定している。

読売新聞 2001年1月1日付

以下の図表は、外務省機密費流用事件の経緯及び外務省関係者のスキャンダルと国政などの流れである。

2001年1月1日ノンキャリアM元要人外国訪問室長の機密費流用疑惑を読売新聞が報道。
2001年3月10日警視庁は首相外遊の際の宿泊費を水増しし、官房機密費約4,200万円を詐取した容疑でM元室長を逮捕。
その後、「詐欺罪」で起訴された。立件された総額は5億円以上。
2001年4月26日第一次小泉純一郎内閣発足。田中真紀子氏が外務大臣就任。
2001年7月16日前年の九州・沖縄サミットに係る約2,200万円詐取容疑で小林祐武氏元経済産業局総務参事官室課長補佐らが逮捕される。
2001年7月26日外務省はデンバー総領事を不正経理により約1,000万円(約8万1,000米ドル)流用したとし、懲戒免職にする。
2001年9月6日警視庁はA欧州局西欧第一課課長補佐を逮捕。
逮捕の容疑は95年のAPEC大阪会議の会場費約4億2,300円の水増し請求による詐取の容疑で逮捕
2001年11月30日田中真紀子外相がプール金問題の最終報告を発表する
2002年3月東京地裁はM 元要人外国訪問室長に懲役懲役7年6月の判決を言い渡す。(東京地裁の判決が確定判決)
2002年5月小林祐武氏に懲役2年6月、執行猶予5年の有罪判決
『私とキャリアが外務省を腐らせました 汚れ仕事ザンゲ録』の小林祐武,著P7を引用・参考に作成

霞が関のエリート集団・外務省は特殊な官庁だ。2001年までの入省時試験は、外務省独自の「外務公務員採用1種試験」により選抜され、同試験に合格した者がキャリア官僚として採用されていた。

外交上の秘密に守られたエリート集団・外務省官僚や官邸、政治家は、それぞれの個人の保身や省益を守る、外交の秘密を守る、国益を守る、などを理由に「外務省機密費流用事件」の広がりを抑え込もうとする。

その広がりとは政府の最重要機密の一つである「裏の内閣官房機密費」の存在、捻出方法(国庫から外務省を含む各省庁に支出された外交機密費が外務省からの上納金として総理官邸に戻り、裏金として総理官邸にプールなどされていた可能性)や使途、関係する官僚、政治家、特に外務省のドン(役人)と呼ばれる人物と真瀬和則の関係性などである。真瀬の罪名も「業務上横領」ではなく「詐欺罪」での起訴となり、ノンキャリア官僚・真瀬の個人的な犯罪に抑え込まれてしまう。

実際の「外務省機密費流用事件」で立件された外務省関係者は、ノンキャリアの三悪と噂された詐欺罪のM元室長と小林祐武氏及びA欧州局西欧第一課課長補佐の三人だけである。勿論、M元室長個人への捜査により多くのキャリア官僚が懲戒処分を受けるが、M元室長からキャリア官僚や政治家への金品の流れの有無(贈収賄の疑い)などは解明されず、ドラマ『石つぶて~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』は、多くの謎と疑惑を残した事件として描かれている。

そう、「外務省機密費流用事件」は、「裏の内閣官房機密費」問題や「外務省機密費流用事件」に関与したと疑惑のある政治家とエリートキャリア官僚などへの警察・検察の捜査の限界など多くの謎と疑惑と課題を残す未解決事件でもある。

なお、外務省からの官邸への外交機密費の上納問題は、2010年の自民党から民主党への政権交代により政府が初めて「存在」を認めるが、その使途は公開されていない(参考:外交機密費上納の「闇」民主が使途公表NGの理由 JCASTニュース2010年2月9日配信)

以下は、岡田克也元外務大臣の「外交機密費(答弁では「外務省の報償費」と表現されている)」国会答弁の一部である。

今までの経緯等を改めて確認したところ、かつて外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われていたことが判明したということで、質問主意書の答弁になりました。

第174回国会 衆議院 予算委員会 第10号 平成22年2月12日 外務大臣 岡田克也

継承される昭和刑事の魂

ドラマ『石つぶて』の副題は『外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち』だ。木崎を筆頭に警視庁組織は、男性社会でもある。木崎たちが属する捜査第二課「情報」も当然ながら男性社会だ。

「情報」で唯一の女性刑事・矢倉かすみの言葉が印象的だ。これまで女性刑事が立件した「サンズイ」はない。女性が独自で掴んだ情報(犯罪の情報)はない。

事件後、外務省キャリアと昵懇の警察キャリア(刑事部長、警備部長など)の報復人事と噂される人事が行われ、木崎と矢倉かすみはナンバーへ異動となり、東田将之第二課課長は他府県(東田将之は警察庁所属)に異動となる。

司法制度改革・警察改革賛成派の斎見晃明は、昇進するが取り調べの録音可視化には反対的な意見を語るようになる。酒席で「サンズイの捜査には濁った水に住む少しはみ出したメダカのような刑事とその無茶を敢えて見逃す、いい上司が必要だ」などの持論を語り始めることもある。木崎たち「情報」の刑事たちと共に仕事をするなかで斎見の考えに変化があったことが伺える。

木崎は、所轄の渋谷署勤務の後、警視庁警察官を退任する。既に定年を迎えた木崎の元を訪れた斎見が木崎に報告する。木崎の全身から悔しさと嬉しさが溢れ出す。それは、実存=刑事、生涯・刑事の木崎の悔しさと警視庁初の快挙を成し遂げた愛弟子を誇りに思う複雑な感情の自然な発露だろう。

矢倉かすみが「サンズイ」を挙げた。女性刑事として初めてのことだ。司法制度改革・警察改革の風潮が昭和の時代の刑事たちの強引な取り調べ、被疑者の琴線に触れる取り調べなどをやり難くさせ、「サンズイ」の立件は激減しているようだ。

社会から汚職が消えたのか?収賄が減ったのか?それとも木崎のような仕事(刑事)が実存の人間が減ったのか?女性刑事として初めて「サンズイ」を立件した矢倉かすみは、木崎など昭和の時代の刑事(人間)の最後の愛弟子でもある。

昭和の時代の刑事(人間)は静かに去っていくが、昭和の時代の刑事(人間)の「魂」は女性刑事矢倉かすみに受け継がれ、さらに次の時代、次の時代へと――姿形を変化させながら受け継がれていくことだろう。


★参考文献
『私とキャリアが外務省を腐らせました 汚れ仕事ザンゲ録』小林祐武著,講談社,2004年
『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』清武英利著,講談社,2019年


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Jean-Baptiste Roquentin運営者

投稿者プロフィール

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。
Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。
小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。
分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。

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