湯河原町女性放火殺人事件の犯人は?茨城一家殺傷事件との関係性は?などを考察

2015年4月21日に発生した未解決事件『湯河原町女性放火殺人事件』の犯人は、『茨城一家殺傷事件』(2019年9月23日発生)の被疑者として逮捕・起訴されたO被告と同一人物ではないかという説が散見される。

両事件には、動機が不明である点や、刃物による被害者の顔面・頭部への攻撃といった残忍な手口など、共通点が認められる。

また、神奈川県警のホームページに掲載された「現場方向からJR湯河原駅に現れ、事件について何らかの情報を持っていると考えられる人物」の特徴や行動が、O被告と類似しているとの指摘もある。

本記事では、未解決事件『湯河原町女性放火殺人事件』の犯人と、『茨城一家殺傷事件』のO被告の関係性について考察する。

『湯河原町女性放火殺人事件』の概要と発生経緯

事 件 名足柄下郡湯河原町の民家で発生した女性殺人並びに放火事件
発生日時2015(平成27)年4月21日(火曜日)午前5時~6時頃
発生場所神奈川県足柄下郡湯河原町宮下に所在するA氏方
被 害 者1名(66歳の女性A氏)
動  機不明
湯河原町女性放火殺人事件 事件概要

湯河原町女性放火殺人事件の犯人Xの動機は不明であるが、捜査本部によると、現場には物色の形跡がなく、室内から現金入りのポーチが見つかっている。このことから、金銭目的の犯行である可能性は低いと考えられる。なお、本事件は『殺人』および『非現住建造物等放火』などの罪名に該当する。

被害者A氏は、寝室のベッドの上で仰向けの状態で発見され、額には包丁のような刃物が刺さっていた。着衣に乱れはなく、布団がかぶせられていた。また、顔面は判別が困難なほど激しく損傷していたとされる。これらの状況から、犯人には極めて強い殺意、残虐性、破壊衝動があったと推察される。

また、本事件の発生時刻(午前5時から午前6時頃)より約5~6時間前、A氏宅から約300~350メートル離れた集合住宅で、当時61歳の男性が何者かに襲撃される事件が発生している。犯人は50~60センチの鉄パイプ(もしくは水道管)を所持し、男性を殴打したとされる。

『湯河原町女性放火殺人事件』と、この近隣で発生した男性殴打事件の犯人が同一人物であるかは不明だが、両事件の関連性を指摘する報道も見られる。

神奈川県警は、両事件の関連性について公式な言及をしていない。しかし、神奈川県警のホームページに掲載された『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられます。』という人物の特徴(身長170センチメートル、やせ型)は、男性殴打事件の犯人の特徴(身長約170センチ、やせ型、20~30代、グレーのパーカに黒いズボン、口元をタオルで隠していた)と類似している。

被害者の状況と犯行の残虐性

2015年(平成27年)4月21日(火曜日)午前5時~6時頃に発生した『湯河原町女性放火殺人事件』は、極めて残忍な事件である。

犯人Xは、自宅近隣の障害者支援施設に通う足の不自由な被害者A氏(66歳)を寝込みに襲い、刃物などで顔面や頭部を執拗に攻撃した。報道によれば、A氏の額には包丁のような刃物が刺さり、顔は判別が困難なほど損傷していたとされる。

また、被害者の着衣には乱れがなかったと報じられており、性的暴行を目的とした犯行ではないと考えられる。しかし、残忍な手口で殺害した上、灯油を撒いて放火するという極めて重大な犯罪である。

さらに、本事件の現場から300~350メートルの距離において、同日未明に発生した当時61歳の男性が被害者となった殴打事件(傷害事件)も、動機不明の未解決事件である。

同一日に、限られた地域で発生した両事件が同一犯による可能性は極めて高いと考えられる。

この二つの事件の同一犯と思しきXは、4月20日午後11時50分頃、帰宅途中の当時61歳の男性に目撃された。Xは電信柱の陰に潜んでいたが、男性と目が合うと急に振り返り、走り去った。

男性が帰宅して数分後、無施錠だった玄関からXが土足で侵入した。Xは両手に靴下をはめ、長さ50~60センチの水道管を手にしていた。驚いた男性が「後をつけられたのではないか」と疑念を抱く中、Xは次のように告げた。

――お前を殺す。あんたから取るものはない。金は金持ちから殺して奪えばいい。――

男性が「地元の人間か」と問いかけると、Xは「そうだ」と短く答えた。さらに、「親は俺を産んですぐ捨てた」と語ったという。

その後、Xは突然、手にしていた水道管で男性の頭部を2回殴打し、何も奪わずに逃走した。男性は軽傷を負ったものの、命に別状はなかった。

犯人特定の鍵となる証拠と目撃情報

これまでの報道によれば、『湯河原町女性放火殺人事件』には直接の目撃証言は確認されていない。しかし、犯人の手がかりとなる映像や情報はいくつか存在する。

事件発生時間付近、被害者A氏宅の玄関から出る性別不明の人物が、付近のパチンコ店の防犯カメラに記録されていた。また、神奈川県警がホームページで公開している『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』とされる映像および写真もある。さらに、『湯河原町女性放火殺人事件』と『男性殴打事件(傷害事件)』が同一犯によるものと仮定した場合、『男性殴打事件(傷害事件)』の被害者である当時61歳の男性による目撃情報も、犯人特定の手がかりとなる。

動画は神奈川県警察HPの映像から作成。Clairvoyant reportチャンネル。

神奈川県警察HPにある『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』人物の特徴と着衣・所持品は以下のとおり。

身  長170センチメートルくらい
体  格やせ型
髪  型耳に被るくらいの長さ
当時服装黒っぽい長袖上衣・黒っぽい長ズボン・白色マスク
所 持 品青色チェック柄の手提げ紙袋・黒色リュックサック
出典:神奈川県警察HP

なお、写真や映像から頭髪には自然なウェーブがかかり、ウィッグ(カツラ)を使用していないならば毛量は多めだと思われ、靴は白色に黒のラインなどが入っているようにも見受けられる。

「男性殴打事件(傷害事件)」の被害者男性61歳の目撃情報による犯人の特徴と着衣などは以下のとおり。

身  長170センチメートルくらい
体  格やせ型
年  齢20-30代
当時服装グレーのパーカ、黒いズボン、口元をタオルで隠していた
典拠:『産経新聞』2015年4月22日付

また、被害者男性は、『男は胸部分にオレンジ色と茶色のローマ字が入った灰色のパーカを着用し、黒いジーンズと黒い靴を履いていた。両手には灰色の靴下を着けており、フードを深くかぶり、口元にはタオルを巻いていた。目は一重で大きさは普通、眉毛はしっかりとしていた。声は高めで若々しかった。』と証言している。

繰り返しになるが、この2つの事件が同一犯によるものと仮定した場合、『男性殴打事件(傷害事件)』の被害者である当時61歳の男性の証言、すなわち『目は一重で大きさは普通。眉毛はしっかりとしていた。声は高めで若々しかった。』は、犯人特定において極めて重要な手がかりとなる。

湯河原町女性放火殺人事件:犯人Xの行動パターンと人物像の分析

動機不明な2つの事件(「湯河原町女性放火殺人事件」「男性殴打事件(傷害事件)」が同一犯ならば、事件当日(2015年4月20日月曜日から21日火曜日)の犯人の動きは以下のとおりである。

犯人Xの行動パターンと足取りの検証

4月20日23時50分頃:帰宅途中の男性殴打事件(傷害事件)の被害者が、電信柱に隠れる不審な男の後ろ姿を目撃した。男は男性と目が合うと、振り返り走り去った。被害者が帰宅して数分後、若い男が無施錠の玄関から土足で侵入した。男は両手に靴下をはめ、長さ50~60センチの水道管を持っていた。犯人Xは、被害者男性の部屋に侵入すると、窓やガラス戸を閉め、鍵を要求したという。

4月21日0時00~0時15分頃:犯人Xは被害者男性と10数分にわたり会話を交わした。Xは「地元の人間だ」「俺の両親は俺を産んですぐ捨てた」「俺はガキの頃からシャブを打ってきた」「仲間に入らないか」「お前を殺す」「あんたから取るものはない。金は金持ちから殺して奪えばいい」などと発言したとされる。その後、Xは被害者男性の後頭部を鉄パイプ状の金属棒で殴打し、取っ組み合いとなった。Xは男性を殴打後、0時00~0時15分頃に男性宅から立ち去ったと推測される。

4月21日 時間不明:犯人Xは、神奈川県足柄下郡湯河原町土肥5丁目の公園に、男性殴打に使用した鉄パイプ(報道によれば水道管ともされる)を遺棄したとみられる。

4月21日 5時前後:犯人Xは『湯河原町女性放火殺人事件』の被害者A氏宅に侵入し、A氏の顔面や頭部を刃物などで攻撃して殺害した。司法解剖の結果、A氏の死因は頭蓋骨骨折に伴う脳挫滅と判明し、死亡推定時刻は4月21日午前5時頃とされる。

4月21日 6時頃:被害者A氏の自宅から出火。放火によるものとみられる。

4月21日 早朝(時間不明):『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』とされる人物が、JR湯河原駅の自動改札を子ども料金の切符で通過した。その後、駅の上下線ホームへエスカレーターで上がる姿が防犯カメラに記録されている。同映像には、ホームで電車の到着を待つ、事件とは無関係と思われる人物の姿も確認されている。

事件が発生した2015(平成27)年のJR湯河原駅1日平均乗車人員は、5,986人(参考:外部リンク「湯河原町HP統計要覧令和4年版PDF」)である。早朝(時間不明)とはいえ、同駅ホーム(同駅は1面2線ホーム)には他に利用客がいただろう。

なお、『使用した切符が見つかっていないことが判明し、他の駅で改札を通らずに逃走したか、電車に乗らず駅を離れた可能性がある。警察は詳しい足取りを捜査している。』との報道もある。

犯人Xが電車を利用したと仮定した場合、神奈川県警の管轄外(警視庁管内、山梨県警管内、静岡県警管内など)まで移動し、いわゆる「キセル行為」切符の紛失を理由に最低運賃を支払って降車する行為など)で改札を出た可能性も考えられる。

ただし、防犯カメラの解析を担当する警視庁刑事部の『捜査支援分析センター』は、2009年に設置されている。犯人Xが電車内で着替えや変装を行わなかった場合、東京都内に移動した際の足取りを分析できたと推察される。

また、犯人Xが電車を利用した決定的な証拠はなく、駅構内からホームに入ったものの、実際には徒歩や別の手段で逃走した可能性も考えられる。その場合、誰かの車に乗せられた、あるいは駅構内の別の出口を利用して逃走した可能性も否定できない。

さらに、仮に電車を利用していた場合でも、防犯カメラを回避するため、車内で着替えや変装を行い、別人として降車駅を出た可能性がある。この場合、キセル行為による降車と組み合わせることで、移動経路の特定をより困難にしている可能性が高い。

犯人Xの人物像と犯罪傾向の分析

前述の『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』人物の映像には、特徴的な歩行姿勢が記録されている。

同人物が自動改札を通過した後の映像、およびエスカレーターを利用する映像では、左右の足が内側で交差するように見受けられる場面が確認されている。この歩行姿勢から、同人物がいわゆるX脚の特徴を有している可能性が推測される。また、『頭髪には自然なウェーブがかかり、ウィッグ(カツラ)を使用していないならば毛量は多めだと思われる』との特徴とあわせて、重要な身体的特徴となる可能性がある。

さらに、『湯河原町女性放火殺人事件』は、被害者の顔面や頭部を刃物などで激しく攻撃し、灯油を撒いて放火するという、極めて重大かつ残虐な犯罪である。

過去の類似事件としては、1997年(平成9年)2月から5月に発生した『神戸連続児童殺傷事件』(「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る当時14歳の少年による、性的快楽を目的とした連続殺傷事件。少年は医療少年院送致)や、2014年(平成26年)12月7日に発生した『名古屋大学女子学生殺人事件』(殺人願望を持つ当時19歳の女性による快楽殺人)が挙げられる。

なお、『名古屋大学女子学生殺人事件』の加害者は、同事件以外にも、中学・高校時代の同級生男子に密かに硫酸タリウムを飲ませ、重篤な後遺症を負わせた事件や、宮城県内の実家近隣で住宅に放火する事件などを起こしている。加害者は2019年10月22日付で無期懲役が確定している。

上記2つの事件の加害者には、性的サディズムや殺人願望があったとされる。また、殴打事件の被害者に対してXが話した内容などからも、Xが精神的に不安定であり、異常な思考を持っていた可能性が高い。

特に、『親は俺を産んですぐ捨てた』『俺はガキの頃からシャブを打ってきた』『金は金持ちから殺して奪えばいい』といった発言は、深刻な家庭環境の問題、反社会的思考の形成、さらには人格障害や精神疾患、薬物依存の可能性を示唆するものと考えられる。

さらに、Xの行動は突発的な衝動性を伴い、計画性に欠ける一方で、被害者を徹底的に攻撃する執拗さが見られる。このことから、Xには精神科病院への通院歴や、過去に精神疾患や人格障害と診断されていた可能性がある。

また、Xが20代から30代と仮定した場合、未成年時における重大犯罪の前歴や、(医療)少年院への送致歴を有していた可能性も否定できない。

『茨城一家殺傷事件』の概要と犯行の詳細

2019年9月23日0時40分頃、茨城県猿島郡境町大字若林のB氏宅に何者かが侵入し、家族4名が殺傷される茨城一家殺傷事件が発生した。

事件現場B氏宅が所在する茨城県猿島郡境町大字若林は、利根川を挟み千葉県野田市(千葉県野田市までの距離は西方向直線距離約1キロメートル)、埼玉県幸手市に隣接する県境に所在する。

O被告の自宅(埼玉県三郷市鷹野4丁目)から被害者B氏宅(茨城県猿島郡境町大字若林)までは、直線距離で約30キロメートル離れており、自動車運転免許などを所持していない岡庭由征容疑者は、同区間を自転車で移動した可能性が報道されている。また、茨城一家殺傷事件の1週間前頃にも、被害者B氏宅付近で不審者が目撃されていたとの報道もある。

事 件 名茨城一家殺傷事件
発生日時2019(令和1)年9月23日(月曜日)午前0時40分頃
発生場所茨城県猿島郡境町若林に所在するB氏方
被 害 者4名(死亡者2名、負傷者2名)
動  機不明(2021年9月17日、殺人、殺人未遂、傷害、住居侵入の罪で起訴)
茨城一家殺傷事件 事件概要

茨城一家殺傷事件と湯河原町女性放火殺人事件は県境の事件

茨城一家殺傷事件が発生した2019年9月23日は、雨だった。O被告は、雨のなか、自転車で自宅(埼玉県三郷市鷹野4丁目)から直線距離で約30キロメートル離れた害者B氏宅(茨城県猿島郡境町大字若林)を移動し、事件後も自転車で帰宅したのだろうか? O被告の事件前、事件後の移動などにはいくつかの仮説が成り立つ。

  1. 岡庭由征被告は、事件の1週間前頃から被害者B氏宅付近に滞在(宿泊)し、事件後は速やかに自宅に戻った。
  2. 岡庭由征被告は、事件の1週間前頃から被害者B氏宅付近に滞在(宿泊)し、事件後も同滞在先(宿泊先・隠れ家など)に戻った。
  3. 岡庭由征被告は、事件当日に自宅から被害者B氏宅に移動し、事件後は速やかに自宅に戻った。
  4. 岡庭由征被告は、事件当日に自宅から被害者B氏宅に移動し、事件後は以前から利用していた同滞在先(宿泊先・隠れ家など)に戻った。

公判が開かれていない現時点(2025年2月22日時点)、上記1から4は、全て仮説・推測の範囲となるが、『茨城一家殺傷事件』の着眼点は、被害者B氏宅が千葉県、埼玉県に隣接する位置に所在することだろう。

O被告が自宅のある埼玉県、千葉方面に移動するには、利根川を越えないとならない。

被害者B氏宅から北西方向直線距離約9キロメートルには、「茨城県警察本部 境警察署」(茨城県猿島郡境町大字長井戸51-27)が所在する。2019年9月23日0時40分頃、被害者B氏の妻が110番通報を入れ、約15分後には境警察署の警察官が被害者B氏に到着している。警察官は、「境警察署」から被害者B氏宅に向かったのだろか?

繰り返しになるが、被害者B氏宅から千葉県、埼玉県に移動するには、利根川を越えなければならない。利根川に架かる「橋」を通らなければならない。被害者B氏宅付近にある利根川に架かる「橋」は、「境大橋:北西方向直線距離で約5キロメートル」、「下総利根大橋:南方向直線距離で約3キロメートル」、「芽吹大橋:南東方向直線距離約9キロメートル」の3つの橋であるが、『茨城県警境警察署』方面にある「境大橋」を選べば事件現場に急行する緊急車両に現認された可能性もある。

O被告が『茨城一家殺傷事件』の犯人と仮定するなら、同被告は、『茨城県道・千葉県道162号岩井関宿野田線』の茨城県坂東市大字長須-千葉県野田市木間ケ瀬を結ぶ『下総利根大橋』を越えた可能性があるが――果たして雨のなか当日、自宅に戻ったのだろうか?『下総利根大橋』を越え、千葉県野田市内に入り、雨を避け宿泊できる場所を見つけ、宿泊したのではないだろうか?裁判で検察側、被告人側が何を語るか?大いに注目しよう。

また、湯河原町女性放火殺人事件の現場最寄り駅の『湯河原町』駅は、千歳川を挟み静岡県熱海市に隣接する。湯河原町女性放火殺人事件の被害者A氏宅が所在する「神奈川県足柄下郡湯河原町宮下」、男性殴打事件(傷害事件)の被害者男性宅のある「神奈川県足柄下郡湯河原町土肥」、男性殴打事件の凶器(鉄パイブ状棒)が捨てられていたとの報道にある「神奈川県足柄下郡湯河原町土肥5丁目の公園」――千歳川を越えれば静岡県熱海市である。

冒頭にも記したとおり、『湯河原町女性放火殺人事件』の犯人Xが、2019年(令和元年)9月23日未明に発生した『茨城一家殺傷事件』の被告Oではないかとの説が、ネット上で散見される。

確かに、前述の『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』とされる映像の人物とO被告の容姿(体型・頭髪など)には類似点がある。また、被害者の家に侵入し、顔面や頭部を刃物などで激しく攻撃した上で、灯油を撒いて放火するという残忍な手口も、『茨城一家殺傷事件』のO被告を想起させる。

なお、O被告は容疑を否認または黙秘しており、今後の裁判では被告と検察の徹底した対決が予想される。本事件の行方は、今後も大きな注目を集めることになるだろう。

茨城一家殺傷事件 O被告の経歴と犯罪歴の検証

ここからは、過去の報道を基にO被告の経歴を整理する。

1994年12月頃(詳細不明)埼玉県三郷市内で生まれる。出生時の名前は「吾義土(あぎと)」
2011(平成23)年11月18日埼玉県三郷市内で中学3年生の女子生徒の顔を切りつける殺人未遂事件。O被告は当時16歳
2011(平成23)年12月1日千葉県松戸市内で小学2年女児の脇腹を刃物で刺す殺人未遂事件
2011(平成23)年12月5日銃刀法違反などで逮捕
2012(平成24)年2月1日-5月21日鑑定留置。O被告は当時17歳
2012(平成24)年7月27日殺人未遂罪、動物虐待、放火などの罪でさいたま地検が起訴
2013(平成25)年3月12日『さいたま地裁』は「広汎性発達障害」などの理由により家庭裁判所への送致を決定。O被告は当時18歳
2013(平成25)年3月21日『さいたま地裁』は「広汎性発達障害」などを理由に、O被告を家庭裁判所へ送致。O被告は当時18歳。その後、『さいたま家裁』は、「治療的働きかけは23歳までとし、なお著しい問題がある場合は26歳までの収容継続を検討すべきだ」と判断し、O被告の医療少年院収容を決定した。
2017年12月頃(詳細不明医療少年院を退院。O被告は当時23歳。その後、1年未満の間、埼玉県北部のグループホームで生活し、時期不明ながら埼玉県三郷市内の自宅へ戻ったとされる。
茨城一家殺傷事件 岡庭由征被告の略歴 過去の各種報道を参考に作成

『茨城一家殺傷事件』O被告の身長は?

『茨城一家殺傷事件』のO被告の身長は詳細不明であるが、身長の参考となりそうな画像が『文春オンライン2021年5月7日配信:2020年11月19日、吉川署へ入る岡庭容疑者』に掲載されている。

同記事には、O被告(当時は被疑者)が警察関係車両『ニッサンセレナ・白系色・20G』で、『埼玉県警吉川署』に連行される数点の写真が掲載されており、同被告の身長が『ニッサンセレナ・白系色・20G』の全高(路面から車体の最上部)と「ほぼ」同等にも見受けられ(ただし、写真撮影の角度の詳細は不明)、連行などする埼玉県警察の他の警察官と比べても同等または少し高い印象を受ける。

『ニッサンセレナ・白系色・20G』(前期型2010年11月-2013年12月販売)は、「全長×全幅×全高(4685×1695×1865mm)」(写真の出典、「全長×全幅×全高」の参考:外部リンク先はグーネット「日産 セレナ(SERENA)20G(2010年11月)カタログ・スペック情報」)であることからO被告の身長は170センチ以上だと推測される。

神奈川県警察が公式に発表している『湯河原町女性放火殺人事件』の犯人Xの身長は170センチだが、前述の『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』人物の自動改札機(自動改札機の高さは1メートル前後)を通過する映像を見ると170センチよりも高い印象も受け(ただし、防犯カメラの撮影の角度は斜め上部からだと思われる)、やせ型だが肩幅のある体型にも見受けられる。

これらのことから湯河原町女性放火殺人事件の犯人Xと茨城一家殺傷事件O被告の身長は「同程度」の可能性があると推察でるだろう。

『湯河原町女性放火殺人事件』とO被告の関連性と矛盾点

公表されているO被告の経歴が正しいと仮定すれば、O被告は2017年12月頃まで医療少年院に収容されていたことになる。したがって、『湯河原町女性放火殺人事件の犯人Xは、2019年(令和元年)9月23日未明に発生した茨城一家殺傷事件のO被告ではないか?』という説には決定的な矛盾が生じる。なぜなら、『湯河原町女性放火殺人事件』の発生は、2015年(平成27年)4月21日(火)午前5時~6時頃である。

『少年院法(リンク先は法令検索)』規定(第137条第1項本文)によれば、原則として『少年院に収容されている保護処分在院者が二十歳に達したときは退院』とされている。しかし、前述のとおり、さいたま地裁は『治療的働きかけは23歳になるまでの期間とし、なお著しい問題がある場合は26歳までの収容継続を検討すべきだ』と決定したと報じられている。したがって、2015年(平成27年)4月21日時点で20歳だったと推認されるO被告は、医療少年院に収容されていた可能性が高く、『湯河原町女性放火殺人事件』を犯すことは不可能と考えられる。

しかし、強引かつ乱暴な仮説を立てることもできる。それは、『少年院法 第45条第1項(外出及び外泊)』の規定がO被告に適用された場合である。同条には、『少年院の長は、在院者(刑法第28条、少年法第58条または国際受刑者移送法第22条の規定により仮釈放を許すことができる期間を経過していない受刑在院者を除く。)の円滑な社会復帰を図るため、一定の条件のもと、少年院の職員の同行なしに外出または七日以内の外泊を許可できる』とある。

しかし、『少年院の長』が、殺人未遂・放火などの重大犯罪を起こしたO被告に対し、この規定を適用し、外出や外泊を許可する可能性は極めて低い。常識的に考えても、法の運用がこのような形で適用されることはあり得ないと考えるのが妥当である。

さらに、O被告が、『外出及び外泊』の際に『湯河原町女性放火殺人事件』を起こしていたとすれば、法務省および警察は当然ながらその事実を把握しているはずであり、事件は既に解決に向かっているはずである。

以上の結果から、『湯河原町女性放火殺人事件の犯人Xは、2019年(令和元年)9月23日未明に発生した茨城一家殺傷事件のO被告ではないか?』という説は誤りであり、本事件の犯人はO被告以外の者であると推論できる。

しかし、気になる点も残る。それは、前述の『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』とされる人物が『青色チェック柄の手提げ紙袋』『黒色リュックサック』を所持していた点である。

さらに、岡庭由征被告が「外出及び外泊」時に湯河原町女性放火殺人事件を起こしたのなら法務省、警察は当然ながら把握している筈であり、事件は解決に向かっているだろう。

上記の結果から「湯河原町女性放火殺人事件の犯人Xは、2019(令和1)年9月23日の未明に発生した茨城一家殺傷事件の岡庭由征被告ではないか?」の説は誤りであり、湯河原町女性放火殺人事件の犯人は岡庭由征被告以外の者だとの推論に至るが――気になる点も残る。

それは、前述の『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』人物が「青色チェック柄の手提げ紙袋」「黒色リュックサック」を所持していたことだ。『青色チェック柄の手提げ紙袋』および『黒色リュックサック』の中には何が入っていたのだろうか。『男性殴打事件(傷害事件)』の被害者である61歳男性の目撃証言による犯人の着衣(靴を含む)と、『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』とされる人物の着衣には若干の違いが認められる。

もし、これら2つの事件が同一犯によるものであるならば、犯人Xは着替えなどを携行し、それらを『青色チェック柄の手提げ紙袋』や『黒色リュックサック』に入れていた可能性が考えられる。

仮に、これらが犯罪(殺人など)のための準備であったとしても、『青色チェック柄の手提げ紙袋』および『黒色リュックサック』は、大掛かりな荷物であると考えられる。

この大掛かりな準備(複数の衣類などを所持していたと仮定した場合)は、果たして殺人などの犯罪を遂行するためのものだったのか。それとも、少年院法に規定される『七日以内の期間を定めた外泊』のための準備だったのか。

なぜなら、O被告の当時の収容状況を考慮すれば、犯行の時間帯に外部で自由に行動できた可能性はほぼ皆無であり、また仮に一時的な外出が許可されていたとしても、それが殺人事件などに関係したものであれば、法務省や警察が事実を把握し、すでに事件は解決しているはずだからである。

ただし、犯人XとO被告には、いくつかの類似点が見られるため、O被告の関与を完全に否定することはできない。

その類似点として、まずO被告は過去に刃物を使用した殺人未遂事件を複数起こしており、犯行時には標的の顔面や脇腹を狙っている点が、Xによる『湯河原町女性放火殺人事件』の犯行手口と共通している。 また、O被告は動物虐待や放火の前歴があり、『湯河原町女性放火殺人事件』でも、被害者を殺害後に灯油を撒いて放火していることから、同様の加害嗜好が見られる。

さらに、O被告の風貌とXの特徴には共通点がある。O被告は自然なウェーブのかかった髪を持ち、事件当時のXも『自然なウェーブのある毛量の多い髪』と報告されている。 また、O被告の推定身長は170cm前後とされており、『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物』も同様の身長と推定されている。 さらに、O被告はやや内股気味の歩行をするとの指摘があり、Xについても『JR湯河原駅の防犯カメラ映像に記録された人物が、左右の足が内側で交差するような歩行をしていた』ことが確認されている。

このように、O被告とXの外見的特徴や歩行の仕方には共通点が多く見られる。また、O被告は少年時代から衝動的な暴力行為を繰り返しており、犯行に計画性が乏しい点でも、Xの行動と一致する。

したがって、O被告が『湯河原町女性放火殺人事件』の犯人である可能性は極めて低いものの、犯行手口や加害嗜好、風貌、身体的特徴、歩行の類似性を踏まえれば、O被告とXが別人であるという前提自体に再考の余地がある可能性も否定できない。

『湯河原町女性放火殺人事件』の真犯人は誰なのか?

これまでの考察の結果、『湯河原町女性放火殺人事件』の犯人Xが、2019年(令和元年)9月23日未明に発生した『茨城一家殺傷事件』のO被告である可能性は、完全に否定はできないが極めて低い。したがって、O被告とは別の人物であると判断するのが自然であろう。

では、この極めて残忍な『湯河原町女性放火殺人事件』の犯人は誰なのか。『JR湯河原駅』に現れた人物が犯人だったとすれば、同人物は駅からどこへ向かい、どこへ消えたのか。

繰り返しになるが、『湯河原町女性放火殺人事件』は動機が不明なまま、極めて残忍な手口で実行された犯罪である。犯人Xの行動や犯行の異常性は、『酒鬼薔薇聖斗事件』や『名古屋大学女子学生殺人事件』の加害者、さらには埼玉県・千葉県で通り魔的な殺人未遂事件を起こし、殺人未遂・放火などの重大事件により医療少年院への保護処分が決定された10代のO被告を想起させる。

犯人Xもまた、これらの加害者と同様の嗜好や精神的問題を抱えていたのだろうか。

本事件の解決に向け、警察は引き続き捜査を行っている。事件の風化を防ぐことも重要であり、今後も警察の捜査と社会の関心が求められる。


◆参考文献
神奈川・湯河原の女性放火殺人 防犯カメラに玄関出る不審人物特定急ぐNHKニュース2015年4月22日付
湯河原放火殺人 犯行目的は依然不明 事件から1週間 現金入りポーチ残る中日新聞2015年4月28日付
神奈川女性殺害 火災前、近くで傷害事件 男逃走、関連を捜査 産経新聞2015年4月22日付
「殺して奪えばいい」女性殺害と関連捜査 神奈川県警 時事通信2015年4月22日付
湯河原放火殺人 犯行目的は依然不明 事件から1週間 現金入りポーチ残る 中日新聞 2015月4月28日付
湯河原殺人鬼と同じ男か 日刊スポーツ2015年4月23日付
神奈川県 湯河原町 鉄パイプ近くの公園で見つかる 凶器か NHKニュース2015年4月23日付
神奈川・湯河原の女性放火殺人 現場付近の歩道上に血痕か 関連捜査 NHKニュース 2015年4月22日付
神奈川 湯河原放火事件から2年 防犯カメラ映像の人物 使用切符見つからず NHKニュース2017年4月21日付
茨城一家殺傷、26歳起訴 刑事責任問えると判断 殺人罪など 朝日新聞 2021年9月18日
【真・治安論】第2部 塀の中 絶てぬ再犯(5)凶行の芽を摘む切り札は 産経新聞 2021年11月24日付


★独自視点の(未解決)事件考察

◆平成の殺人事件


Jean-Baptiste Roquentin運営者

投稿者プロフィール

Jean-Baptiste Roquentinは、Albert Camusの『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartreの『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場する主人公の名を組み合わせたペンネームです。メディア業界での豊富な経験を基盤に、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルチャーなど多岐にわたる分野を横断的に分析しています。特に、未解決事件や各種事件の考察・分析に注力し、国内外の時事問題や社会動向を独立した視点から批判的かつ客観的に考察しています。情報の精査と検証を重視し、多様な人脈と経験を活かして幅広い情報源をもとに独自の調査・分析を行っています。また、小さな法人を経営しながら、社会的な問題解決を目的とするNPO法人の活動にも関与し、調査・研究・情報発信を通じて公共的な課題に取り組んでいます。本メディア『Clairvoyant Report』では、経験・専門性・権威性・信頼性(E-E-A-T)を重視し、確かな情報と独自の視点で社会の本質を深く掘り下げることを目的としています。

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