『エイリアン2』考察│母であり「戦う女性」リプリーと「不自然な生物」エイリアンの描き方

エイリアン2考察│母であり戦う女性リプリーと不自然な生物エイリアンの描き方イメージ画像。宇宙船、母性を象徴。

自分が母親になったと仮定して想像してほしい。もし自分の愛する子供が化け物にさらわれたとしたら?何もかもをなげうってでも、助けに向かおうとするだろう。

名作SFホラー映画『エイリアン』の続編として制作された『エイリアン2』には、そんな母親が登場する。その母親とは「戦う女性/強いヒロイン」として有名なエレン・リプリーである。それに対峙するのは、謎の生物エイリアン。

本記事では、『エイリアン2』で描かれる「戦う女性/強いヒロイン」及び母親としてのリプリー像と、生物として不自然なエイリアン像について考察していきたい。

『エイリアン2』の作品概要

『エイリアン2』は、1986年に公開されたアメリカのSFアクション映画である。『エイリアン』の続編にあたり、ジェームズ・キャメロンが監督を務め、シガニー・ウィーバーが主演を続投した。

SFホラー映画として名高い前作とは異なり、本作はアクション要素の強い作品である。装甲車でエイリアンに体当たりするリプリーや、近未来的な銃器を使ってエイリアンに対抗する植民地海兵隊など、激しいアクションシーンが幾度も展開される。アクションが多い分ホラー描写が控えめ(あるにはある)なため、ホラー映画が苦手な人でも楽しみやすいだろう。

また、本作はリプリーのイメージを確立させた作品だと言えるだろう。詳しくは後述するが、本作でリプリーは、武器を使ってエイリアンと戦っている。これが現在のリプリー像である「戦う女性/強いヒロイン」に繋がっているのだ。

あらすじ

ノストロモ号の惨劇から57年後。

唯一の生存者であるリプリーが乗った脱出艇が、地球周回軌道付近で見つかった。病院で目覚めたリプリーは、57年間も宇宙を漂っていたこと、そして、彼女の娘が2年前に亡くなっていたことを知りショックを受ける。

ノストロモ号を爆破したことについてウェイランド・ユタニ社から尋ねられたリプリーは、エイリアンに襲われたことやその危険性について訴えるも、誰も彼女を信じない。その上、精神的に異常があるとして、航海士資格を停止されることになってしまった。

そんな中、小惑星LV-426において、入植者157人が行方不明になるという事件がおきた。リプリーは航海士への復帰と引き換えに、LV-426の調査にアドバイザーとして同行することになる。同行の条件は「エイリアンを見つけても持ち帰ったり、研究したりはせず、殲滅すること」だった。

LV-426に降り立ったリプリーと植民地海兵隊の隊員たちは、生き残りの少女・ニュートを保護する。ニュートに愛情を感じはじめたリプリーだったが、彼らは大量のエイリアンに襲われることになる。

「戦う女性/強いヒロイン」、そして、母親としてのリプリー像

映画に登場する「戦う女性/強いヒロイン」と聞くと、誰を想像するだろうか。おそらく「『ターミネーター』の進化と分析:シリーズが映すアメリカの価値観の変遷と多様性」でも論じたサラ・コナーや、『ニキータ』の同名主人公、そしてそれに並ぶほど、本作の主人公・リプリーを思い浮かべる人が多いだろう。

事実、リプリーは「戦う女性/強いヒロイン」の代表格だ。ライフルや火炎放射器などの武器だけでなく、車やパワーローダーなども利用してエイリアンと戦い、生き残っている。本シリーズの映画作品において、エイリアンと複数回渡り合った人物は彼女だけだ。

しかし、リプリーは最初から「戦う女性/強いヒロイン」だったわけではない。前作については「歴史に残るSFホラー!映画「エイリアン」の魅力とは?」でも触れた通り、『エイリアン』はSFホラーであったため、状況を打開しようと考え行動する力はあるものの、「襲われる側」としての描き方が強かったからだ。

しかし前作の最後で、リプリーは大きな進化を遂げる。仲間の全滅という過酷な状況の中で、単身エイリアンに立ち向かい、見事宇宙空間に放出することに成功するのである。

この流れを引き継ぎ、リプリーを「戦う女性/強いヒロイン」として一段引き上げたのが本作だ。本作での彼女はエイリアンに対する恐怖を抱きながらも、エイリアンの巣に乗り込んだり、パワーローダーに乗り込んだりしてエイリアンクイーン肉弾戦を繰り広げるにいたる。「恐怖感」が前面に出ていた前作とは異なり、今作で見られるのは「覚悟を決めた」表情だ。

ここで言う覚悟とは、「死ぬことを覚悟した」という意味ではない。絶対にエイリアンを倒し、大切な人を救うという強い意志のことを指す。

また本作では、母親としてのリプリーが描かれていることにも注目したい。

リプリーは、コールドスリープ状態で宇宙を漂っている間に、地球に残してきた最愛の娘を亡くしている。そんな経験があるためか、彼女が生き残りの少女・ニュートに向ける目は温かだ。ニュートへの感情はやがて母性愛へと変わっていき、ニュートもまた、彼女を母のように慕うようになる。

『ターミネーターシリーズ』のサラ・コナーは息子のジョン・コナーを守るため、「戦う女性」へとなった。リプリーもまた同じである。本作で描かれるのは腕っぷしの強さだけではなく、「母親としての」強さなのである。

ちなみに、本作の最後でリプリーと戦うエイリアンクイーンもまた、多数の子供を抱える母親である。エイリアンにも何らかの母性的感情が存在しているようなので、本作は「母対母」の映画とも言えるかもしれない。

生物として不自然なエイリアン像

第一作の『エイリアン』からはじまる本シリーズの数は、『エイリアンvsプレデター』などのスピンオフを含めると9作にのぼる。長い年月をかけて制作され続けてきた本シリーズは、様々な設定が明かされたり、追加されたりしてきた。その中で、第一作の雰囲気はどんどん薄れていくことになった。

本作もまた、第一作とは大きく異なる作品だ。見ているのも辛いほどの緊迫感が漂う前作と比べ、より豊かなアクション性と娯楽性を持っている。

これだけの違いがありながら、本作は非常に「エイリアンらしい」作品だ。何よりも、名作と名高い第一作の続編「らしい」のだ。大きく内容を変えているにも関わらず、『エイリアン』の続編を見ているという、高い満足感を味わえる。

「エイリアンらしさ」とは本来、得体のしれないものが暗闇に潜んでいるかもしれない、という静かな恐怖感や、味方が一人ひとり殺されていく絶望感、そしてこうした事態が、広い宇宙のどこかで起こっているという孤独感を特徴としているはずだ。これらはホラーを構成する感覚で、本作とは少しずれた軸にあるものだ。

では、本作はなぜ「エイリアンらしい」のか。その理由を考えると、激しいアクションの裏に見え隠れする生物としてのエイリアンの不気味さにたどり着く。

作中でエイリアンは「完全生物」と言われている。生物ということは、生命活動を行っているはずだ。生命活動の代表的な行動と言えば、食べることである。しかし、エイリアンが何かを食べている描写は一切描かれていない。人間を襲うのは繁殖のためであり、捕食のためではないのだ。繁殖とそれに伴う営巣活動も生命活動の一環ではあるが、それだけを行うのは不自然である。

本作では、その不自然さがより強調された形だ。まるで蟻のように、エイリアンクイーンをトップとする真社会性生物的特徴を持ち、一定の母性本能を示しながらも(リプリーに卵を焼かれ、激怒するエイリアンクイーンが描かれている)、繁殖を除く生命活動を行っていない。生物であって生物でないような不気味さが際立つのだ。

この不気味さがあるからこそ、本作はアクション性に焦点を当てた内容ながら、『エイリアン』らしさを失わずにいるのではないだろうか。

謎は解けると気持ち良いが、解ければ解けるほど、当初の持ち味は薄れてしまう。比較的新しい本シリーズ作品に「エイリアンらしさ」を感じにくいのは、「『プロメテウス』考察│創造主、人間、デヴィッド、エイリアンの連鎖」でも掘り下げたように、起源や創造の問題が前に出ることで、エイリアンという生物の謎が解き明かされ続けていることも要因ではないか、というのが筆者の私見である。

まとめ

『エイリアン2』のリプリー像、さらにはエイリアンが持つ生物としての不自然さについて、筆者なりに考察してみた。

本作を含む『エイリアンシリーズ』の世界観は、どんどん広がっている。おそらく今後も、新作が作られ続けていくだろう。その度にエイリアンの謎が解け、また別の謎が提示されるかもしれない。

筆者は、本シリーズのほぼ全ての作品を鑑賞している大ファンの一人だ。作品それぞれに違う魅力があり、映像技術の向上も相まって、見飽きることがない。しかし、どれだけ素晴らしい作品を見たとしても、第一作と本作を再度見返したくなってしまう。ありきたりな言葉ではあるが、本作は本当におもしろいのである。


■ 資料案内
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作品そのものに触れたい読者は、各種流通情報を参照されたい。
▶外部リンク Amazon『エイリアン2(字幕版)


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ココナラをメインに活動中のWebライターです。2017年より、クラウドソーシング上でwebライターとして活動しています。文章を読んで、書く。この行為が大好きで、本業にするため日々精進しています。〈得意分野〉映画解説・書評(主に、近現代小説:和洋問わず)・子育て記事・歴史解説記事etc……

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