持続化給付金詐欺の主な逮捕者・事例(5つの事件の共通点)

持続化給付金詐欺の主な逮捕者・事例

2019年から始まった新型コロナウイルス (COVID-19)の猛威は、日常生活を一変させ、日本経済や世界経済に大きな打撃を与えた。

2020(令和2)年、日本政府は新型コロナ感染症により打撃を受けた(受ける)個人事業主、中小企業などへの緊急的な支援・対応策「持続化給付金」「家賃支援給付金」などの給付を開始した。

急激に悪化する経済情勢のなか、緊急性が最重要視される「持続化給付金」「家賃支援給付金」などは、申請・審査が簡略化されたため、不正受給(詐欺事件)が横行した。 経済産業省(中小企業庁)の発表によれば、2023(令和5)年1月26日現在の持続化給付金の不正受給総額は17億3482万6130円(不正受給者1710者のうち、1339者は、20パーセントの加算金と年率3パーセントの遅延金を国庫に納付している)であり、経済産業省(中小企業庁)が認定した家賃支援給付金の不正受給者は、2023(令和5)年1月26日で、88者(不正受給総額 2億4706万9428円)である。(出典:経済産業省HP「持続化給付金の不正受給者の認定及び公表について」)

2022年中の持続化給付金詐欺の主な逮捕者例

本記事の主な目的は、2022年中に摘発されたコロナ関連の持続化給付金などの給付金詐欺の5つの事件から、逮捕(起訴)された容疑者(被告)の(サンプル数は少ないが)共通点を探り、現代社会の一面を考えていきたい。

結論から言えば、今回、紹介する5つの事件(「持続化給付金約10億円を詐取したTグループのT容疑者(被告)」、「ドバイに出国した男のM容疑者(被告)」、「逮捕された現役市長の長男のK・S容疑者」、「税理士法違反等の容疑で逮捕された会社役員と交際相手のU容疑者」、「逮捕された女性市議会議員の吉羽美華容疑者(被告)」)の共通点は――「砂上の楼閣」だ。

5つの事件で摘発された容疑者(被告)の逮捕前の生活は、優雅で豪華で派手な印象を受ける。そう、それは、成功者のイメージだ。だが、その成功者のイメージを保つためなのか、それとも成功者のイメージは、そもそも事件に利用するための芝居だったのか――「成功者」は、詐欺の容疑者(被告)となる。

「砂上の楼閣」の住人(「成功者」)は、SNSを使い「砂上の楼閣」を拡散する。SNSや地縁などを通し「砂上の楼閣」に魅了され、「ワンチャン(ワンチャンス)」を狙う者達が集まり(闇バイト)、共犯者(実行犯)となってしまう。

ここからは、2023年1月時点で話題の「闇バイト」の問題にも繋がる5つの事件の詳細を記していこう。

持続化給付金約10億円を詐取したTグループ

日本時間2022年6月8日、0時30分、持続化給付金約10億円を妻や子などと共に詐取した嫌疑のあるT容疑者(逮捕時47歳)が、出国していたインドネシアの捜査当局に不法滞在の疑いで身柄拘束された。(参考:【速報】“10億円詐欺”容疑者を逃亡先のインドネシアで逮捕 KSB 5ch 2022年6月8日 10:43配信)

2022年は、コロナ禍のなか個人事業主、中小零細企業を緊急的に救済などする持続化給付金を悪用した組織的な犯罪の発覚、検挙が相次いだ。また、それらの犯罪の中心的な役割を担うと指摘される容疑者の海外への「逃亡」も相次いで報道された。

令和3(2021)年4月某日、日本国政府は、T容疑者(昭和49(1974)年7月生)に対し、「詐欺罪を犯した疑い」で、令和3(2021)年5月17日までに外務大臣または領事官に旅券を返納するよう「旅券法第十九条の二第一項の規定に基づく一般旅券の返納命令に関する通知」を行っていた。インドネシアで身柄を拘束されたT容疑者の逮捕容疑は「不法滞在」の容疑である。

国難的な有事に対する緊急的制度を悪用したT容疑者(被告)は、日本に移送され日本の警察が詐欺などの嫌疑で逮捕された。注,2023年2月1日現在、公判中。なお、逮捕された妻と長男も公判中である(三重の給付金詐取で元妻起訴内容認める 東京地裁初公判 中日新聞 2023年2月1日付)

前述のとおり、T容疑者(被告)には妻や子などと共に約10億円の持続化給付金を詐取した疑いがあり、組織的な持続化給付金詐欺の中心的な立場だと報道された。

T容疑者(被告)の過去の犯罪報道について調査を行った結果、平成23(2011)年3月4日、T容疑者と思われる同姓同名者が「松阪市内の金融機関から虚偽の内容で住宅ローン融資を申し込み、約3100万円をだまし取った疑い(引用:「ローン融資で3100万だまし取った疑い男3人を逮捕」読売新聞2011年3月5日付)」で逮捕されていた。

上記のT容疑者(被告)の同姓同名者の逮捕当時の年齢は36歳、当時の住所は「三重県松阪市久保町」とあり、インドネシアで身柄拘束されたT容疑者の可能性が高いと判断される。

平成23(2011)年3月5日の同報道によれば、逮捕された3人は平成21(2009)年4月、三重県松坂市内の金融機関に「虚偽の内容で住宅ローン融資申請」を行ったとある。

今回の持続化給付金詐欺の手口も虚偽内容の申請だ。上記の同姓同名者がT容疑者(被告)であるなら、過去にも虚偽内容を申請する手口で詐欺を行っていたと思われ、今回の事件の被害額約10億円を勘案すると今回の事件ではかなり重い刑が言い渡される可能性もある。T容疑者(被告)の海外逃亡の理由には想定される長期刑の懸念があったのかもしれない。

T容疑者(被告)を中心とする組織的な持続化給付金詐欺は、「六本木人脈」が関係しているとの報道が散見され、「嘘の給付金の申請者が増えていった背景に「六本木人脈」と呼ばれる、東京・六本木の飲食店を舞台にしたグループの存在が浮かび上がってきました(引用:「10億円給付金偽申請のウラに“六本木人脈”『何千人集めてでっかい仕事を』」テレビ朝日 2022年6月6日 18:03配信)」との報道もある。

上記報道と関係すると思われるT容疑者(被告)の東京都港区六本木の法人は、以下の法人である。

商 号株式会社某(正式名称は割愛)
本 店東京都港区六本木2丁目
設 立平成26年6月2日
目 的1.飲食店の経営
2.不動産の売買、賃貸借及びその仲介業務
3.インターネットを利用した通信販売業務
4.経営コンサルタント業務
5.タレント事務所の企画、制作
6.イベント業務の企画、制作
7.株式投資業務
8.株式、社債等有価証券の取得、保有、売却 
9.前各号に附帯する一切の業務
 
資本金300万円
役 員T容疑者(被告)
T容疑者(被告)が経営する東京都港区六本木の法人概要(2022年6月8日現在)

同社の登記面本店所在地は六本木通りに面しており、付近には、首都高速「谷町JCT」やアメリカ大使館宿舎などが所在する。また、同所はワンルームマンションと思われる。

さらに同所には、令和2(2020)年6月までT容疑者(被告)が代表取締役に就任していた病院及び薬局経営などを目的に平成26(2014)年11月設立された株式会社M社が所在していた。

株式会社M社の当時の資本金は、995万円であり、T容疑者(被告)の役員辞任とほぼ同時期に本店所在地を他所へ移動している。

T容疑者(被告)は、前述の東京都港区六本木の法人の以外にも三重県松坂市内に飲食店の経営などを目的にした有限会社U社を経営しており、持続化給付金詐欺の容疑で既に逮捕されている妻Aを代表取締役とする不動産の売買、賃貸借及びその仲介業務などを目的とする株式会社も確認される。

そして、前述の通り、T容疑者(被告)は、一時、病院、薬局などの経営を目的とする法人の代表取締役にも就任していた。T容疑者(被告)は、飲食業や不動産業の知識、経験、人脈などを悪用しながら公的機関などに虚偽内容の申請を繰り返していたのだろう。

報道されているT容疑者(被告)の自宅は、平成16(2004)年11月にT容疑者(被告)が購入している。実際の購入額は不明だが、ローンの総額は約1億円のようだ。高級外車にも乗っていたとの報道も散見される。

飲食業や不動産業など手広く商売をしていたT容疑者の詐欺事件――T容疑者(被告)は、様々な業種に手を広げることができるやり手の人物だ。

人間は簡単に生活の質を下げられない。見栄や虚栄もあるだろう。そして、貧すれば鈍する。

ドバイに出国した男

2022年6月13日、東京国税局職員(事務官)や元大手証券会社の社員など男女7名が逮捕、被害額約2億円の組織的な持続化給付金詐欺の中心的立場だと言われているM容疑者がドバイから帰国し逮捕された(参考:国税局職員らの持続化給付金詐欺 ドバイから帰国の主犯格の男を逮捕 ANNnewsCH 2022年6月13日付)

M容疑者(被告)は、既に逮捕された東京国税局男性職員のT容疑者(逮捕当時24歳)などを含む詐欺グループの中心的人物と目されており、M容疑者(被告)を中心とする詐欺組織は約200人の持続化給付金の虚偽申請に関り、そこから得た金銭を仮想通貨などに投資していたともいわれている。

東京国税局職員などが関与した衝撃的な持続化給付金詐欺容疑の主犯格ともいわれるM容疑者(被告)は、SNSなどで派手な生活ぶりを披露しながら組織拡大をしたのだろう。実際、M容疑者(被告)は、株式会社Aと合同会社R社を経営する青年実業家だった。

株式会社A社は、飲食店のプロデュース、運営、管理及び経営並びにそれらのコンサルティングなどを目的に平成27(2015)年12月、資本金800万円で設立され、合同会社R社も飲食店のプロデュース、運営、管理及び経営並びにそれらのコンサルティングなどを目的に平成30(2018)年10月、資本金200万円で設立。その他、M容疑者は、東京都港区六本木7丁目に本店所在地のある株式会社R社など他の法人にも関係していた(いる)。

また、M容疑者(被告)は、自身のSNS(facebook、Instagramアカウント情報はプライバシーに配慮し省略)の投稿には高級外車や高級時計の画像(写真)がある。また、ネット上で散見されたM容疑者(被告)所有の投資用マンションは、平成27(2015)年に新築された東京都内にあるマンションの一室(床面積約23平方メートル)だと推認された。

だが、東京都内にあった上記M容疑者(被告)の部屋は、平成30(2018)年頃から、東京都某都税などからの数度の差押を受け、令和1年(2019)年の秋頃、東京地方裁判所が競売開始決定、令和2(2020)年の春頃には所有権が第三者に移転していた。

M容疑者(被告)は、平成30(2018)年5月以前から金銭的に困窮などしていた可能性も考えられる。

自分の信用性やカリスマ性を大袈裟な手振り身振り、派手な服装や高級そうな持ち物、有名人との交流、交際などの話などを優れた話術で語る者がいる。

M容疑者(被告)は、いくつかの法人を経営しながら、投資用と思われるマンションを購入し、自身も東京の人気の街にある高級賃貸マンションに住所を定めていた形跡がある(報道では住所、職業ともに不詳:参考、「国税局職員らによる持続化給付金2億円不正受給 ドバイから帰国のリーダー格男を詐欺容疑で逮捕 日刊スポーツ 2022年6月13日20時10分配信」)。

20代で成功を収めたと思われるM容疑者(被告)。だが、自身のSNS(facebook、Instagram)の投稿には高級外車や高級時計の画像(写真)などは、人を勧誘するための――虚構だったのかもしれない。

逮捕された現役市長の次男

2022年9月28日、現職(4期)の神奈川県厚木市市長小林常良1949(昭和24)年4月28日生まれの次男で45歳のK・S(逮捕時45歳)が、国の新型コロナウイルス対策の一つである続化給付金を詐取した詐欺容疑で逮捕された。

逮捕されたK・S容疑者被告)注,2023年1月10日現在、公判中(参考:給付金詐取事件 2人罪状認める 初公判、1人は留保 読売新聞2023年1月11日付)ら3人は、持続化給付金の申請代行をSNSで告知し、受給資格のない約100人を集め申請代行の手数料を得ていたといわれる。 K・S容疑者(被告)のグループが不正に得た給付金額は約1億円とも報道された。(参考:持続化給付金をだまし取った疑いで3人逮捕 被害は1億円超か 神奈川NHK NEWS WEB 09月28日 16時07分 配信)

現役市長の長男であり、自身も県議補選に立候補した経歴を持つK・S容疑者(被告)は、現在(2022年9月29日現在)確認できる範囲で過去に2つの法人を代表取締役に就任し、現在1つの一般社団法人の理事長に就任しているが、過去の経営先2社は2016(平成28)年春頃、倒産していた。

法人名設立日資本金出資金その他事項事業目的等
某・株式会社(詳細割愛)平成21年8月500万円食料品の販売及び飲食店の経営など
平成28年破産
有限会社・某(詳細割愛)平成14年5月10万円食料品の販売及び飲食店の経営など
平成28年倒産
一般社団法人・某(詳細割愛)令和1年11月福祉の増進を目的とし、その目的に資する等
確認されたK・S容疑者(被告)の経営先一覧

2016(平成28)年以前から金銭的な問題を抱えていたと推察されるK・S容疑者(被告)の過去の報道などから確認された経歴は以下のとおりである。

出身大学帝京科学大学
2002年有限会社・某 設立
2009年 某・株式会社 設立
2012年出馬 県央経営者会理事(現在の事務局所在地:厚木市)
2015年出馬 
2016年経営先2社などが倒産
2019年一般社団法人・某設立
K・S容疑者(被告)の経歴

上記の出身大学及び2012年当時の県央経営者会理事の肩書の出所は、「県議補選告示、新顔3氏立候補 伊勢原市区(朝日新聞2012年9月15日付)」、「15統一地方選:県議選 立候補者(毎日新聞2015年4月4日付)」である。

K・S容疑者(被告)の父親は周知のとおり現職の神奈川県厚木市市長であり、K・S容疑者(被告)自身も過去に神奈川県議会議員補欠選挙(2012年09月23日投票)及び神奈川県議会議員選挙(2015年04月12日投票)への2回の立候補歴がある(参考:飲食業の小林氏、みんなの党から出馬 県議補選伊勢原市区 朝日新聞 2012年9月11日付)。

1回目の神奈川県議会議員補欠選挙(2012年09月23日投票)は、みんなの党(2009年に結成、2014年に解散)からの立候補であり、3人の候補者のなか最下位で落選、2回目の神奈川県議会議員選挙(2015年04月12日投票)は、維新の党から「藤沢市選挙区」への立候補であり、10人の立候補者のなか9位の得票数で落選している。

K・S容疑者(被告)は、2012(平成24)年と2015(平成27)年の選挙で落選、2016(平成28)年春頃に経営先2社を倒産させていたことから、この2度の選挙の落選がK・S容疑者(被告)の金銭問題に関係していた可能性も考えられる。

K・S容疑者(被告)の神奈川県議会議員選挙(2015年04月12日投票)出馬前後の住所は、神奈川県藤沢市湘南台3丁目内の木造2階建てアパートだが、その後は、父親である現職の神奈川県厚木市市長「小林常良(つねよし)」の後援会事務所に住所を異動しているが、前述の逮捕報道によれば、K・S容疑者(被告)は住所不定である。上記住所に居住実態などは無いとも推察され、逮捕前の暮らしぶりは明らかになっていない。

目に見えないコロナという敵からの攻撃による国難的状況のなか、政府は中小零細事業者などを救済する目的で大規模な財政出動を行った。その目玉政策が持続化給付金である。

2度も政治の世界を目指したK・S容疑者(被告)は、持続化給付金の目的を充分に理解していた思われる。また、申請の要件や手続きなどについても知識があったと思料される。

K・S容疑者の一家は父、兄ともに政治の世界の住人でもある。国民、県民、市民のために政治家を目指したK・S容疑者(被告)らの国の持続化給付金制度を悪用した約1億円不正受給の容疑に対し、現役4期の厚木市市長である小林常良市長は、何を考え、今後どのような発言をするのか等に注目していきたい。

なお、2022年9月29日現在、小林常良厚木市長は「(前略)ただただ驚いているのが正直な心境です。容疑が事実であれば到底許されるものではなく、真摯に向き合ってほしいです。市民の皆様に深くお詫び申し上げます(後略)」(引用:持続化給付金を不正受給 逮捕された指示役の男は…神奈川・厚木市長の次男だった 市長は「ただただ驚いている」 TBS NEWS DIG 2022/09/29 12:20配信)などのコメントを発している。

以下は厚木市HP(リンク先は同市HP内の「小林市長の次男による持続化給付金の不正受給に関するコメント」のページ)に掲載された小林常良厚木市長のコメント。

次男逮捕の報道を受け、ただただ驚いているというのが正直な心境です。現時点では私自身も報道以上の情報を持ち合わせておらず、情報の収集に努めております。容疑が事実であれば到底許されるものではなく、次男には取り調べに対して真摯に向き合ってほしいと願っております。市民をはじめとした多くの皆さまに、ご心配とご迷惑をお掛けしておりますことを深くお詫びを申し上げます。引き続き、情報の収集に努め、改めてお話しさせていただきたいと思っております。

出典:厚木市報道資料PDF
持続化給付金不正受給一覧イメージ画像
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税理士法違反等の容疑で逮捕された会社役員と交際相手

2022年1月31日、税理士資格を有しないのに2020年6月15日から7月4日の間、熊本県内などの20代の男女7人を個人事業主と偽り、新型コロナの影響を受け収入が減った(または無かった)とする虚偽の確定申告書を作成、電子申請した税理士法違反と私電磁的記録不正作出・同供用の容疑で会社役員、バーの経営者U容疑者(36歳)と交際相手K容疑者(25歳)が逮捕された。

U容疑者(36歳)と交際相手K容疑者(25歳)は、約1億6000万円の持続化給付金不正受給(詐欺)の容疑で既に逮捕、起訴されていたI被告からの紹介などにより、これまで100人以上の虚偽の確定申告を行い、その報酬は1件2万円~5万円との報道も散見される(参考:税理士法違反疑い男女逮捕 1億円不正受給関与か、警視庁共同通信2022年1月31日付)

上記事件は税理士法違反と私電磁的記録不正作出・同供用の容疑のため警視庁生活安全部のサイバー犯罪対策課による逮捕だと思料され、現時点(2022年2月1日)ではU容疑者とK容疑者が、直接、持続化給付金を不正に受給した(詐欺)との報道は認められず、前述の通り、既に1億6000万円の持続化給付金不正受給(詐欺)事件で逮捕、起訴されたI被告などから紹介された約100人に対し、1件2万円~5万円の報酬を得て確定申告書類(1件2万円~5万円の報酬:計,約200万円)を作成した容疑である。

上記の持続化給付金不正受給事件で逮捕されたI被告は、元携帯電話販売会社社長であり、Uが経営する株式会社Mの役員にも就任していたが、2022(令和3)年4月に役員を辞任していた。

なお、I被告の持続化給付金不正時給(詐欺)での逮捕は、M社役員辞任の一か月前の2021(令和3)年5月だったが、同人は2021(令和3)年3月4日、不正競争防止法違反容疑でも逮捕されていた。なお、同事件は元携帯電話販売会社社長だったI被告(当時35歳)が無断で顧客情報をコピーなどし、その情報が電子決済サービス「ペイペイ」や「ドコモ口座」の不正引き出し(電子計算機使用詐欺など)の容疑で逮捕された住所不定、無職男性容疑者(当時37歳)に渡り、使用された事件である。

U容疑者は、2021(令和3)年12月、ソーシャルネットワークを活用したブランディング及びパブリック・リレーションズ活動の企画、運営並びにそれらの代行及びコンサルティングなどを目的に資本金100万円で設立されたF合同会社及び2020(令和2)年6月、カフェ、レストラン、バー等の飲食店の経営、企画、管理及びコンサルティングなどを目的に資本金450万円で設立された株式会社Mを経営していた。また、U容疑者とK容疑者は「東京都港区赤坂2丁目」の高級マンションで生活していたとの報道も散見される。

誰もが認める国内の一等地――東京都港区赤坂の居住する会社経営者の実情は――やはり、砂上の楼閣の住人だったのかもしれない。

逮捕された現職の寝屋川市議会議員

2022年8月1日、現職の寝屋川市議吉羽(よしば)美華容疑者(被告)注,2022年12月20日現在、公判中(参考:寝屋川市議被告、起訴内容を否認 コロナ融資詐欺事件 朝日新聞 2022年12月21日付)ら5人が新型コロナ関連の公的融資制度を悪用した保証金詐欺の容疑で福岡県警に逮捕された。

同事件は、持続化給付金詐欺とは異なる事例だが、この5人の容疑などが事実ならば、コロナ過のなか経営悪化などの理由から公的融資を求める福祉施設運営会社などを狙った非常に悪質な事件である。

「自分に任せれば無担保・無利子」コロナ融資詐欺容疑者の1人、関連機関の審議官かたる 読売新聞 2022/08/02 15:08配信 コロナ禍での公的融資制度を巡り、大阪府寝屋川市議の吉羽美華容疑者(42)ら5人が詐欺容疑で逮捕された事件で、うち1人が融資元の関連機関で審議官を務めているなどと偽っていたことが捜査関係者への取材でわかった。福岡県警が詳しく調べている。利用された融資制度は、独立行政法人「福祉医療機構」(WAM、東京)の「新型コロナウイルス対応支援資金」制度。県警の発表では、5人は2020年7~12月、堺市の福祉施設に対し、「特別な条件で融資が可能で、返済しなくても民事上の責任は負わない」などと偽り、同年12月中旬、この施設に1億2000万円の融資を受けさせ、うち5940万円を業務委託料などの名目でだまし取った疑い。捜査関係者によると、5人のうち自称無職の渡部秀規容疑者(48)(大阪市)はこの福祉施設に対し、機構の関連機関で審議官を務めており融資の決定権限があると伝えた上で、「自分に任せれば、無担保・無利子になる」などと虚偽の説明を口頭で繰り返していた。さらに、医療福祉コンサルタント会社代表取締役の北村隆史容疑者(60)(大阪市)が同機構の関連機関を運営していると強調。吉羽容疑者が市議の名刺を渡すなどして信用性を高めていたという。

読売新聞 2022/08/02 15:08配信

吉羽美華容疑者(被告)は、2022年8月2日現在の時点で以下の2つの法人の代表取締役に就任していることが確認できた。

東京都内に本店を定める株式会社P社は、洋品雑貨、日用雑貨、化粧品、紙、印刷物、文房具、輸送用機器、衣服、靴、コンピューターとその周辺機器、通信機器、健康食品、肥料、飼料などの輸出入及び販売などを目的に平成30年3月、大阪府大阪市内を本店に定め資本金100万円で設立された。

また、株式会社P社の設立当時の社名は株式会社B社だが、令和2(2020)年に株式会社H社に商号変更を行い、さらに、令和3(2021)年、現在の株式会社P社に商号を変え本店を東京都内に移転させていた。

吉羽美華容疑者(被告)が代表取締役に就任するもう一つの法人は、昭和60(1985)年5月21日に大阪府大阪市内を本店所在地に定め設立された株式会社D社である。

株式会社D社の資本金は1000万円、事業目的は前述の吉羽美華容疑者経営先の株式会社P社とほぼ同じであり、株式会社P社は株式会社D社の関連企業の可能性も考えられる。

吉羽美華容疑者(被告)は、平成30(2018)年、株式会社D社の代表取締役に就任している。

画像とプロフィールは寝屋川市役所HP(令和4年5月18日現在)から

氏名:吉羽 美華(よしば みか)
年齢:41歳
当選回数:3
所属会派:ねやがわ未来議員団
所属委員会:文教生活常任委員会
住所:寝屋川市香里南之町28番6号
電話:<本記事筆者の判断により削除>

寝屋川市役所のホームページなどによると吉羽美華容疑者(被告)の住所(事務所)は、親族宅などと思料される「寝屋川市香里南之町28番6号」であるが、吉羽美華容疑者が、令和2(2020)年、大阪府寝屋川市内にある地上37階建タワーマンションの高層階の部屋を親族と一括購入(共有)していることが確認できた。

吉羽美華容疑者(被告)と共に逮捕された者のなかで氏名が公表されている人物が2名いる。そのうちの一名であるK容疑者(2022年9月12日、処分保留)は、医療コンサルタント会社代表を名乗る大阪府大阪市西区の60歳の人物らしい(参考:詐欺:大阪・寝屋川市議ら逮捕、詐欺容疑 コロナ融資巡り 十数億円被害か 毎日新聞 2022年8月2日付)。

当然だが、吉羽美華容疑者(被告)と共に氏名を公表されたこれら2名は、本事件において重要な役割を担っていると考えられる人物だ。

K容疑者の同姓同名者の過去の事件報道を確認した結果、同人の可能性が高い同姓同名者が、平成20(2008)年8月6日、公正証書原本不実記載・同行使容疑の共犯として、大阪府警に逮捕されていた。

上記の事件は、(当時)大阪弁護士会所属の弁護士のS容疑者(58歳)が、(当時)飲食店に勤務していた韓国人女性(共犯で逮捕)に在留資格を取得させるため日本人男性A(この男性も共犯として逮捕)と所謂「偽装結婚」させた容疑である。なお、K容疑者の同姓同名者はA容疑者の同僚と報道され(当時)弁護士S容疑者の共犯の疑いで逮捕、起訴されていた(参考:偽装結婚で弁護士ら逮捕 交際女性に在留資格/大阪府警 読売新聞 2008年8月7日付)

K容疑者の同姓同名者の逮捕当時の年齢は48歳であり、K容疑者と年齢的に「ほぼ一致」する。

吉羽美華容疑者(被告)と共に逮捕され氏名が公表されているもう一人の人物であるW容疑者(被告)は、「大阪市中央区南船場、自称・職業は無職(引用:詐欺:大阪・寝屋川市議ら逮捕、詐欺容疑 コロナ融資巡り 十数億円被害か 毎日新聞 2022年8月2日付)」「この福祉施設に対し、機構の関連機関で審議官を務めており融資の決定権限があると伝えた上で、『自分に任せれば、無担保・無利子になる』などと虚偽の説明を口頭で繰り返していた。(引用:読売新聞 2022年8月2日 15:08配信)」などと報道されている。

上記の報道から、W容疑者(被告)は「機構の関連機関で審議官を務めており融資の決定権限がある」などと語り、被害者を信用させていたようだ。

だが、自称無職の人間にそのような交渉事は難しいとも思われる。W容疑者(被告)は法人などを経営している(いた)可能性が高いと推測されるため、経営先の有無などの確認を実施した結果、大阪府大阪市中央区南船場4丁目の自宅を本店所在にするW容疑者(被告)の同姓同名者経営の株式会社N社が認められた。

上記N社は、平成26(2014)年11月、オフィスビル、商業施設等の企画、開発、運営、賃貸、管理及びコンサルティング業務などを目的に設立され、資本金は500万円の法人である。

また、同社の現在の事業目的には、eスポーツ(コンピューターゲームを使用した競技)の企画、開発、運営、管理業務などがあり、流行を意識した事業目的が追加されている。

吉羽美華容疑者(被告)らの事件は、有名詐欺事件のM資金に似た構図を持つ。M資金詐欺は、戦後の混沌とした時代背景のなかで生まれた有名な詐欺事件である。昭和20(1945)年8月15日の終戦(日本の敗戦)により日本はGHQの占領下に入る。

M資金詐欺の主な内容は「GHQは旧政府や旧日本軍から大量の金銀宝石などを接収した」「その秘密資金を選ばれた者に無担保、低金利で融資する」「そのためには手数料が必要だ」等々であるが、詐欺師側は「国債還付金残高確認証」といわれる偽の公文書を用意し、政治家の名刺や大蔵(現在の財務省)官僚の名前などを巧みに使い、時には旧皇族、旧華族(貴族)などの貴種の名前などを利用しながらの壮大な話を相手(被害者)に吹き込み、その話を信じた者、信じようとする者から金銭を詐取する。

M資金詐欺の被害は、大企業の経営者や大物芸能人にまで広がり被害者のなかには自殺を遂げる者もいた。令和の時代になってからも大手外食C社の創業者が被害に遭っている。

今回逮捕された吉羽美華容疑者(被告)らの事件もM資金詐欺と似た匂いを感じてしまう。無担保、無利子、「返済しなくても民事上の責任は負わない」などと語り、被害者から手数料名目の金銭を詐取する。

そこに現職の市議吉羽美華容疑者(被告)が登場する。審議官を名乗るW容疑者(被告)が登場する。

M資金は、その存在自体が都市伝説のように不明だが、「独立行政法人福祉医療機構(WAM)」の「新型コロナウイルス対応支援資金」制度は実際にある。実在の団体や実際の制度を悪用した詐欺事件。事実だとすれば非常に悪質な事件だ。

寝屋川市議会議事録「令和 4年3月定例会(第6日 3月11日)」の吉羽美華容疑者(被告)の以下の発言が確認された。

陽性者やその家族には配食サービスも行っています。国の休業支援金、給付金等も含め、福祉的施策の提供は幾重にも張り巡らされています。しかし他方、私たち議員は、コロナ陽性にはなっていないが、外出自粛要請を受け、そして負担を強いられていた、そういった市民の皆さんへも公平性を守っていかなければならないという、この信念を持たなければなりません。私たちは信念を持っています。

寝屋川市議会議事録「令和 4年3月定例会(第6日 3月11日)」

戦後最大の有事だともいえるコロナ過のなか、多くの人々が経済的困窮に陥った。そして、経済的困窮を救うための多くの制度の基本は「公平性」の筈だ。「公平性」を信念とする吉羽美華容疑者(被告)は――それを忘れてしまったのだろうか。

吉羽美華容疑者(被告)の逮捕以降も同事件に関係すると思われる複数の人物が逮捕されている。同事件は複数の人間が関与する組織的な事件のようだ。

2022(令和4)年8月22日、吉羽容疑者、K容疑者、W容疑者(被告)及び一名(H容疑者)が福岡県久留米市内の医療法人から2億3200万円を詐取した疑いで再逮捕された。また今回の逮捕容疑では福岡県北九州市小倉南区のH容疑者も新たに逮捕されている(参考:吉羽美華・寝屋川市議を再逮捕、医療法人から2億3200万円だまし取った疑い 読売新聞2022年8月22日 17:49配信)

さらに、2022(令和4)年8月23日、同日までに(逮捕は22日か23日)東京都港区の53歳女性M容疑者が新たに逮捕されたとの報道があった。(参考:コロナ融資金詐取容疑で新たに53歳女逮捕 福岡県警 産経新聞2022年8月23日 09:34配信)」

当該事件の逮捕者数は上記のM容疑者の逮捕により7人となった。

年月日容疑逮捕の人数など
2022年8月1日詐欺吉羽美華容疑者、K容疑者、W疑者ら5人逮捕
2022年8月22日詐欺吉羽美華容疑者、吉羽美華容疑者、K容疑者、W容疑者の再逮捕。H容疑者逮捕
2022年8月23日詐欺上記4名のほか、上記4名のほか、M容疑者が逮捕 (これまでの逮捕者は7名 2022年8月23日現在
<資料 寝屋川市議吉羽美華容疑者などによる詐欺事件の逮捕者数>

その後、吉羽美華容疑者(被告)は大阪府堺市の福祉施設「返済できなくても責任を追及されない」からなどと偽り、約2億9千万円を騙し取った詐欺罪で起訴され、2022年11月25日、「独立行政法人『福祉医療機構』(WAM)の新型コロナウイルス対応の融資制度をめぐる詐欺事件で、福岡県警は25日、詐取した約1億5千万円を事件の共犯者から盗んだとして、大阪府寝屋川市議の吉羽美華被告(42)=詐欺罪で起訴=を窃盗容疑で追送検した。」(引用:寝屋川市議、詐欺で得た1.5億円を盗んだ疑い 共犯者が管理 朝日新聞社 2022年11月25日 20:49配信)との報道がある。

詐取した10数億円のうち6億円余りを手にした吉羽美華容疑者(被告)は、手にした6億円のうち4億円を総合格闘技団体に出資していたとも報道されている(参考:詐取した十数億円、吉羽美華市議に6億円か…うち4億円を総合格闘技団体に出資 読売新聞オンライン 2022年9月12日付)

黄色のベンツと高級マンションと投資――吉羽美華容疑者(被告)は、何を得て、何を失ったのだろうか?

まとめ

今回、紹介した5つの事件(「持続化給付金約10億円を詐取したTグループのT容疑者(被告)」、「ドバイに出国した男のM容疑者(被告)」、「逮捕された現役市長の長男のK・S容疑者(被告)」、「税理士法違反等の容疑で逮捕された会社役員と交際相手のU容疑者」、「逮捕された女性市議会議員の吉羽美華容疑者(被告)」)の共通点は――やはり――「砂上の楼閣」なのかもしれない。


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投稿者プロフィール

Jean-Baptiste Roquentinは、Albert Camusの『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartreの『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場する主人公の名を組み合わせたペンネームです。メディア業界での豊富な経験を基盤に、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルチャーなど多岐にわたる分野を横断的に分析しています。特に、未解決事件や各種事件の考察・分析に注力し、国内外の時事問題や社会動向を独立した視点から批判的かつ客観的に考察しています。情報の精査と検証を重視し、多様な人脈と経験を活かして幅広い情報源をもとに独自の調査・分析を行っています。また、小さな法人を経営しながら、社会的な問題解決を目的とするNPO法人の活動にも関与し、調査・研究・情報発信を通じて公共的な課題に取り組んでいます。本メディア『Clairvoyant Report』では、経験・専門性・権威性・信頼性(E-E-A-T)を重視し、確かな情報と独自の視点で社会の本質を深く掘り下げることを目的としています。

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