
渋谷通り魔事件の概要
本記事は「渋谷通り魔事件」の15歳の女子中学生の氏名、SNS、学校などを特定する内容ではありません。本記事は頻発する「無差別殺傷事件」に関する考察記事です。
2022(令和4)年7月26日、加藤智大死刑囚(39歳)の死刑が執行された。
加藤智大元死刑囚(事件当時25歳)は、2008(平成20)年6月8日、休日の(東京都)秋葉原の歩行者天国で発生した無差別殺傷事件「秋葉原無差別殺傷事件(死亡7人、負傷10人)」で現行犯逮捕され、その後、殺人罪などの罪により2015(平成27)年に死刑が確定していた。
それから約一か月後の2022(令和4)年8月20日19時20分頃、渋谷区内で15歳の中学3年生の少女による無差別殺傷事件が発生、「死刑になりたかった(引用:渋谷の母娘負傷事件、逮捕の少女「死刑になりたかった」産経新聞2022/08/21 12:39配信)」など供述しているともいわれる15歳の中学生による無差別殺傷事件の発生は社会に大きな動揺を与えている。
東京都渋谷区円山町 事件現場付近の地図
発生日時 | 2022年8月20日 19時20分頃 |
発生場所 | 渋谷区円山町 |
容疑者 | 埼玉県在住 15歳女子中学生 |
凶器 | 包丁(その他2本のナイフ所持) |
被害者 | 19歳女性、53歳女性の母娘(事件当時) |
渋谷の母娘負傷事件、逮捕の少女「死刑になりたかった」 東京都渋谷区円山町の路上で20日夜、母娘が刃物を持った少女に襲われた事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された埼玉県戸田市の市立中3年の少女(15)が「死刑になりたいと思い、たまたま見つけた人を殺そうとした」などと供述していることが、分かった。警視庁少年事件課と渋谷署が詳しい犯行の経緯や動機などを調べている。逮捕容疑は、20日午後7時20分ごろ、円山町の路上で、いずれも杉並区に住む女性(53)と娘(19)を背後から包丁で襲って殺害しようとしたとしている。調べに対し「女性2人を刺した」などと容疑を認めているという。少年事件課によると、母娘は肩や腹、腕などを刺されるなどし、いずれも重傷を負った。娘は腎臓を損傷し、傷の深さは約10センチに達しているという。母娘は渋谷に遊びに来ていて、帰宅しようと、近くの京王井の頭線神泉駅に向かっていた際に襲われた。一方、少女は事件当日の20日に自宅を出て、犯行に及んでいた。犯行に使用した包丁のほか、ナイフ2本も所持していたという。現場で2人ともみあいになり母親や通行人らに取り押さえられた。
産経新聞2022/08/21 12:39配信
現行犯逮捕された15歳の女子中学生は、母親と弟の3人暮らし。一部週刊誌上などでは部活での人間関係のトラブル(「いじめ」との表現も散見される:参考:渋谷母娘刺傷事件 少女を凶行に至らしめた「新型コロナといじめ」Fridayデジタル2022年8月27日配信)。また『デイリー新潮 2022/8/22配信』では同級生とのトラブルはないとの報道もあり2022年8月31日の現時点では情報が錯綜している)などが報じられ、何らかの原因により「少女は戸田市内の公立中学校に通っていたが、中学1年の冬ごろから不登校気味になり、週に1~2度ほどは学校に行っても保健室などで過ごしていた。受験勉強のために市内の塾に通っており、事件のあった20日昼過ぎに『塾に行ってくる』と母親に告げて自宅を出たという」(引用・参考:中3容疑者「塾」と偽り外出か 学校は不登校気味 渋谷母子刺傷事件 朝日新聞2022年8月22日付)などとの事件後報道もある。
【15歳少女の家庭環境、生活状況など】 ・母、弟との3人暮らし ・両親は少女Aが小学校高学年の頃に離婚 ・中学1年の3学期から不登校 (出典:渋谷で母娘を刺した中3少女「母親と弟を殺すための練習」という供述は本当か? 週刊文春 2022年9月8日号、《渋谷通り魔事件》「母子の背後へ足早に近づき、犯行のタイミングを…」防犯カメラに残された“逮捕の15歳少女”凶行直前の“足どり画像”文春オンライン 2022/8/22配信) |
近年の若年層(15歳から34歳)による無差別殺傷事件
一般的に無差別殺傷事件の犯人は、有効求人倍率が「1」を切り、若者世代の失業率が増えた1990年代初め頃から2005年頃の就職氷河期(ロスジェネ世代。また2009から2010年のリーマンショックの影響から派遣切りを体験した世代)世代の無職、引きこもりの「男性」が多いといわれ、ネットなどでは失うものが何もない(そもそも何も持っていない)「無敵の人」などと呼ばれることもある。
たしかに、近年の無差別殺傷事件の犯人には上記に該当する属性の者が確認される。2022年7月7日、宮城県仙台市太白市内路上で発生した通り魔事件(被害者は登校中の2人の女子中学生)で現行犯逮捕された尾張裕之容疑者は無職の43歳男性である(参考:刺された女子中学生の1人は腕押さえ、もう1人が抱きかかえる…男「殺そうと思った」読売新聞2022年7月7日 13:45配信) だが、2020年以降の無差別殺傷事件の容疑者の属性をみると、15歳から34歳までの若年の属性の者も確認できる。確認された若年層の容疑者と事件詳細などは以下のとおりである。
発生年月日 | 事件名 | 犯行時の犯人の年齢 | 被害者数 |
2020(令和2)年7月27日 | 愛知県豊橋市大村町の事件 | 27歳 | 1人死亡、2人負傷 |
2020(令和2)年8月28日 | 福岡商業施設女性刺殺事件 | 17歳 | 1人死亡 |
2021(令和3)年10月31日 | 京王線刺傷事件 | 24歳 | 17人負傷 |
2022(令和4)年1月15日 | 東京大学前刺傷事件 | 17歳 | 3人負傷 |
また、2022年6月に放送されたNHKスペシャル『なぜ一線を越えるのか無差別巻き込み事件の深層』によれば、「この1年余り、見ず知らずの人を無差別に巻き込む事件が相次いでいる。2021年8月、小田急線内で起きた事件以降、10月ハロウィーンの夜に起きた京王線内での切りつけ事件。26人が犠牲になった12月の大阪クリニック放火殺人事件。2022年1月には、東大前での切りつけ事件と、その数は15件にのぼる(引用:NHKスペシャル『なぜ一線を越えるのか無差別巻き込み事件の深層』)」との指摘があり、我々の体感だけではなくデータからも無差別殺傷事件の増加が認められる。
増加傾向にある無差別殺傷事件。「渋谷通り魔事件」は、現行犯逮捕された容疑者が15歳の中学3年生の女子という社会が想定していなかった属性であることに衝撃を受ける。
本記事では、無差別殺傷事件の犯人の基本属性の特徴、若者の自殺(近年の無差別殺傷事件の犯人は「死刑になりたい」などを動機として語る者がいる。これは他者を巻き込む拡大自殺ではないかとの指摘がある)、若者の意識などから15歳の中学生女子が逮捕された無差別殺傷事件「渋谷通り魔事件」を考察していきたいと思う。
無差別殺傷事件に関する法務省の研究
まずは、無差別殺傷事件の犯人の基本属性などを知るために「研究部報告50無差別殺傷事犯に関する研究(2013/平成25年3月法務総合研究所)」をみていこう。また、同報告書には「調査対象事件は,平成12年3月末日から22年3月末日までの間に裁判が確定した無差別殺傷事件であって,同事件の裁判が確定したことにより対象者が刑事施設に入所したものである。調査対象者は52人であった」との記述があり、この点は留意が必要である。なお、「法務総合研究所」は法務省の施設機関である。
同調査報告書に「無差別殺傷事件が弱者型の犯罪であるという評価がなされることがある」との記述がある。これは、無差別殺傷事件の被害者が比較的体力などがない、老人、女性、子供に多いことから、弱い者が自分よりも弱い者を襲う構図が推認されることからの言葉であろう。
さらに同報告書には「無差別殺傷事犯の特徴」として以下の記述がある。
無差別殺傷事犯の特徴 無差別殺傷事犯者の多くは男性であり,その年齢層は一般的な殺人事犯者に比べて低い者が多い。犯行時において,友人との交友関係,異性関係,家族関係等は劣悪である者がほとんどである。また,安定した職業を得ていた者は少なく,低収入にとどまる者が多い一方で,居住状況でも不安定な者が相当の割合でいる。全般的に,社会的に孤立して困窮型の生活を送っていた者が多いと評価できる。 無差別殺傷事犯者には,何らかの精神障害等,特にパーソナリティ障害の診断を受けた者が多いが,犯行時に入通院して治療を受けていた者は少ない。前科を有する者は約半数であり,その罪名としては粗暴犯が多い。また,犯行前に問題行動がある者がほとんどであるが,その内容としては自殺企図が多く,特に前科のない者で多く自殺企図歴が認められる。また,犯行前に医師等に犯行に関する内的衝動を相談するなどの行為を行っていた者もいる。 無差別殺傷事犯の動機としては,自己の境遇に対する不満から犯行に及ぶもの,特定の者に対する不満から無関係の第三者に対する犯行に及ぶもの,自殺できないことから死刑を意図したり,自殺への踏ん切りをつけるために犯行に及ぶもの,社会生活への行き詰まりから刑務所へ逃避しようと犯行に及ぶもの,殺人に対する興味・欲求を満たすため犯行に及ぶものの五つの類型が認められた。これらの複数の類型の動機が併存している者もおり,特に,自己の境遇に対する不満によるもの,特定の者に対する不満によるものでは,これらの不満が直接に犯行に結び付くものと,これらの不満に基づいて,自殺や刑務所への逃避を考えるなど他の類型の動機が派生するものが認められた。事例数としては,自己の境遇に対する不満によるものが最も多く,次いで特定の者に対する不満であった。無差別殺傷事犯は全て単独犯であり,共犯者はいない。無差別殺傷事犯者も何らかの理由によって被害者を選定している者が多く,特に,女性,子ども,高齢者が弱者だからという理由で選定されている場合が多い。そのほか,怨恨相手等の投影・代替として選定する場合もある。受刑歴を有する者では,刑事施設出所後1年未満に無差別殺傷事件に及んだ者が多く,出所後の問題も存在していることがうかがえる。
研究部報告50無差別殺傷事犯に関する研究(平成25年3月法務総合研究 )
年齢・性別 | 男女比と相当程度に異なっており、一人を除いて全員が男性である。調査対象者では,39歳以下が大多数であり、特に20歳から39歳が多く,少年も一般殺人に比べて高い構成比となっている。 |
居住・家族 | 人口規模が大きい市・特別区に居住していた者の比率が高い傾向がうかがわれる。 |
居住状況(同居人別) | 同居人別に見ると、単身である者が半数である。そのほか、親と同居している者も多いが、配偶者、子らと同居している者は非常に少ない。自立して他の者と家族を構成して生活している者が少ないと言える。 |
交際関係 | 異性との交際経験について不詳である者を除いた46人中、同経験が全くない者が18人であり、約4割に及んでいる。交際経験がある者、同居経験がある者は、それぞれ28人、17人であるが、犯行時の婚姻・交際状況を見ると、同居の婚姻者がいた者が1人、異性の交際相手がいた者が1人だけであり、ほとんどは異性との婚姻・交際関係が消滅している。犯行時において、異性との交際関係について充足感を持つような状況にはなかった者が多いと考えられる。 |
交友関係 | 友人がいない者が28人と過半数であって、社会とのつながりが弱い者が多いと考えられる。 また,学校、職場等の在籍時においても、友人がいなかった者が19人、険悪又は希薄であった者が8人であり、適切な交友関係を構築する力が不十分な者が多いことがうかがわれる。交友関係の構築力がもともと不十分な者のほか、就職後における職場・社会への適応が十分にできず、新たな交友関係を構築することができなかった者がいるのではないかと思われる。 |
就労・就学 | 犯行時に就労していた者は10人にとどまっている。その就労形態を見ると,犯行前1年間においても、犯行時においても非正規雇用(アルバイト、パート等をいう。)が多く、犯行時に正規雇用され、安定した職を有していた者は4人のみと少ない。 |
収入 | 調査対象者本人の犯行時の一月の収入(労働による賃金のほか,生活保護等の社会保障給付を含む。)については、20万円以上の者は3人のみであり、10万円以下の者が9人、収 入が全くない者が31人である。収入面で不十分な状況にあった者が多い。反対に、借入を見ると、借入なしの者が37人と多数であって、多額の借入をしていた者は少ない。 収入の面からも借入の面からも経済活動は不活発であると言える。 |
教育程度 | 中学校卒業、高校中退の者が併せて33人であり、過半数を占めている。大学卒業の者は2人であって、少ない。 |
動機 | 裁判所において認定された動機内容をそれぞれ精査した上で、共通点を抽出することとした。犯行動機としては、Ⅰ「自己の境遇への不満」、Ⅱ「特定の者への不満」、Ⅲ「自殺・死刑願望」、Ⅳ「刑務所への逃避」、Ⅴ「殺人への興味・欲求」の五つの類型を見いだすことができる。 Ⅲ「自殺・死刑願望」とは、自殺願望がありながら、それを実行・完遂できないため、自殺の代わりに死刑になろうと考え、又は、自殺の実行に踏ん切りをつけるために、無差別殺傷事件に及ぶものであり、例えば、恐怖感から自殺することができないため、通り魔殺人をすれば死刑になると考えたものなどをいう。 調査対象者においては、Ⅰ「自己の境遇への不満」型が最も多く、Ⅲ「自殺・死刑願望」型、Ⅴ「殺人への興味・欲求」型は多くはない。 |
調査対象者が犯行前に抱えていた代表的な主観的な不満や閉塞感等 | ・ 友人ができないことから誰からも相手にされないという対人的孤立感 ・ 誰にも必要とされていないという対人的疎外感 ・ 失職したことを契機とする将来への不安 ・ 生活に行き詰まり,生きる気力を失い餓死しようという絶望感 ・ 生きていても仕方なく死にたいが,死ぬのは怖いから刑務所に戻りたいという現実逃避的な願望 ・ 努力しても何も報われないという諦め ・ 職場いじめを受けたと感じてのストレスや怒りのため込み ・ 守るもの,失うもの,居場所が何もないという孤独感や虚無感 ・ 自分だけがみじめな思いをしてきたのに周りがぬくぬく生きているという被害感や怒り ・ 失職や交際相手との復縁がかなわず何事も自分の思惑どおりに行かないという憤まん |
家庭生活の状況 | 調査対象者52人のうち、関係記録から家庭の問題が確認できたものとしては、生育家庭で親の離婚があった者が10人(19.2%),家庭が経済的に困窮していた者が10人(19.2%)、親による虐待があった者が8人(15.4%)であった。 |
上記の無差別殺傷事件の特徴によれば、無差別殺傷事件の犯人像が所謂「就職氷河期世代の無敵の人(失うものがない人。何も持っていない人)」像に当て嵌まるともいえるが、「渋谷通り魔事件」で現行犯逮捕されたのは15歳少女である。
「渋谷通り魔事件」は、15歳少女が「(少年事件のため死刑になることはないが)死刑になりたい」「親を殺すための練習」などを理由に何ら関係性のない人に凶器の刃を向けた事件である。
子供の事件の背景には、その社会を作った大人の影響が大きい。子供は「家族」「家庭」「学校」に強制的に組み込まれる。その「家族」「家庭」「学校」を作ったのは大人だ。大人が作ったそれらの共同体、組織に問題があれば、組み込まれた子供も必然的に問題を抱えてしまう。 次に子供の自殺についての統計をみてみよう。

小学生、中学生、高校生の自殺統計
「令和2年度 小・中・高等学校から報告のあった自殺した児童生徒数は415人(前年度317人)で,調査開始以降,最多となっている(引用:令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要)」
また、自殺した児童などの自殺の理由は、「家庭の不和」が一番多く、小学生の自殺者の自殺理由には「友人関係(いじめを除く)」「いじめ」などの理由が並んでいる。
このことから、大人が作り用意した「家庭」「学校」という「場」のなかで子供達は悩みを抱え、その悩みを大人が積極的に解決などできない状態があったと推察される。


(ネットを含む)メディアなどでは、コロナ過が要因となり自殺者が増加したなどの意見が散見されるが、日本の子供の自殺者が増えている要因はコロナだけであろうか。日本の社会システムに要因があり、子供達が生きることを諦め、さらに他人を巻き込む拡大自殺(無差別殺傷事件)などを起こすのではないか(当然だが自殺や犯罪の原因は複数ある。そして、その原因にメンタル面の疾患など心の問題が関係していることは各種の統計からもわかる)
さらに、日本の子供達の意識をみてみよう。
自己肯定感統計
以下の図表は、2014(平成26)年に内閣府が実施した「平成26年版 子ども・若者白書」(平成25年11月から12月の間に日本、韓国、アメリカ、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン各国のそれぞれ1000人以上の満13歳から満29歳までの男女が回答した「(1)人生観関係(2)国家・社会関係(3)地域社会・ボランティア関係(4)職業関係(5)学校関係(6)家庭関係」の回答)の抜粋である。
自己肯定感「日本の若者は諸外国と比べて、自己を肯定的に捉えている者の割合が低く、自分に誇りを持っている者の割合も低い。」画像は「次のことがらがあなた自身にどのくらいあてはまりますか。」との問いに対し、「私は、自分自身に満足している」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。出典:平成26年内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」
社会規範「日本の若者は、諸外国の若者と同程度かそれ以上に、規範意識を持っている。」 (注)「あなたは次のことについてどう思いますか。」との問いに対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。出典:平成26年内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」
自らの将来に対するイメージ「日本の若者は諸外国と比べて、自分の将来に明るい希望を持っていない。」 (注)「あなたが40歳くらいになったとき,どのようになっていると思いますか。」との問いに対し、「幸せになっている」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。出典:平成26年内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」
意欲「日本の若者は諸外国と比べて、うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組むという意識が低く、つまらない、やる気が出ないと感じる若者が多い。」 (注)この1週間の心の状態について「次のような気分やことがらに関して、あてはまるものをそれぞれ1つ選んでください。」との問いに対し、「つまらない、やる気がでないと感じたこと」に「あった」「どちらかといえばあった」と回答した者の合計。
なお、「心の状態」に対する意識調査の結果概要は以下のとおりであり、日本の若い世代は他の国の若い世代よりも「悲しい」「憂鬱」などネガティブな心理状態を持つ者が多いことがわかる。
心の状態 | 「日本の若者は諸外国と比べて、悲しい、ゆううつだと感じている者の割合が高い。」 |
同調査から、日本の子供を含む若者世代の社会規範は比較対象各国と同等またはそれ以上だが、自己肯定感や意欲が低く、将来に対する不安が大きいことがわかる。
日本社会は他人に迷惑をかけたくない、恥をかきたくないなどの気持ちから規範意識が高い社会だと思われるが、自己肯定感や意欲が低く、将来に対する不安を持つ子供たちの多い社会でもある。自殺や「渋谷通り魔事件」のような死刑になりたい拡大自殺が増える可能性が考えられる社会だ。
「無敵の人(失うものがない人。何も持っていない人)」は、就職氷河期の大人だけではない。「家庭」「学校」など大人が用意した「場」が整っていない(家庭不和、育児放棄、教師の無関心など)と――「無敵の子供(失うものがない人。何も持っていない人)」が生まれてしまうかもしれない。 「渋谷通り魔事件」は、異質な「少女A」が犯した(事実認定はされていないが)犯罪なのだろうか――社会を構成する大人達に反省すべき点はないのだろうか。
無差別殺傷事件に限らず、事件は社会のなかで起こるのだから。
【追記 2022年9月11日】
2022年9月9日、東京地検は、逮捕された「少女A」を殺人未遂の非行内容により家庭裁判所に送致し、家庭裁判所は14日間(2週間)の観護措置を決定(参考:中3少女を家裁送致 渋谷母娘刺傷―東京地検 時事ドットコム2022年9月9日19時48分配信)し、同日、警視庁は正当な理由がなく3本の刃物を所持した銃刀法違反の嫌疑で追送検している(参考:親子2人切りつけ事件 逮捕の中学3年女子生徒を家裁に送致 NHK首都圏WEB 2022年9月9日 17時13分配信)
今後は、家庭裁判所調査官による生活状況、家庭内の状況、交友関係などの調査が実施され、その結果を受けた裁判官が少年審判の有無(保護処分など)や検察官送致(逆送)を決定する。

なお、法務省のHPによれば「原則逆送対象事件」は、「16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」及び「18歳以上の少年(特定少年)のとき犯した死刑,無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件(改正少年法により追加)」である。
また、「刑事処分の対象年齢を「16歳以上」から「14歳以上」へと引き下げた改正少年法が施行された平成13年以降の15年間で、刑事処分が相当として家庭裁判所から検察官送致(逆送)された14、15歳の少年は全国で17人にとどまっていたことが27日、最高裁への取材で分かった。16〜19歳では逆送が原則とされる殺人や傷害致死の非行内容であっても、14、15歳では逆送の割合が1割に満たないことも判明した(後略)(引用:14、15歳の逆送はわずか17人 殺人、傷害致死でも1割に満たず…改正少年法施行後の15年 産経WEST 2017年5月28日 07:25配信)」といわれ、「少女A」に対する今後の処分の行方が非常に気になる。
★参考資料
「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」
「内閣府 特集今を生きる若者の意識~国際比較から見えてくるもの~」
「NHKスペシャル『なぜ一線を越えるのか無差別巻き込み事件の深層』」
「無差別殺傷事犯に関する研究」
中3容疑者「塾」と偽り外出か 学校は不登校気味 渋谷母子刺傷事件 朝日新聞2022年8月22日付など
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