熊本市南区元城南町議殺人事件

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2021年5月24日、熊本市南区の自宅で元城南町議のN氏が殺害される事件が発生した。事件から3年が経過し、捜査本部は2024年5月までに延べ約3万1000人の捜査員を投入した。そして2024年6月28日、ついに「犯人逮捕へ」の報道があった。

事件の概要

2021年5月24日午前6時15分ごろ、熊本県熊本市南区城南町東阿高の住宅で、元城南町議で農業のN氏(74歳)が殺害されるという事件が発覚した。

自宅の寝室でうつぶせに倒れているところを妻に発見されたN氏の遺体には目立った外傷はなく、鼻と口には粘着テープが貼られ、両手足はひもで縛られていた。司法解剖の結果、死因は窒息死と断定され、死亡推定時刻は同日午前0時から6時ごろだと判明した。

事件は同日の午前6時15分ごろ、別室で寝ていた妻が、N氏の寝室で両手足を縛られ倒れているのを発見した。妻は、物音などに気づかなかったと証言している。N氏の口と鼻は粘着テープで塞がれていた。N氏の遺体発見時、窓が割られた形跡はなく、自宅玄関には外側から鍵がささったままだった。寝室からN氏の財布が見つかり、中身は小銭とカード類だけで紙幣はなかったと判明したが、携帯電話も寝室で見つかった。また、室内などから毛髪や指紋、足跡など数百点を採取した。

同日午前11時45分ごろには、西方向に直線距離で約4kmに位置する熊本県宇土市花園町の路上で、鍵がついたままで無施錠のN氏の軽トラックが止まっているのを捜査員が発見した。事件現場となったN氏の自宅とN氏の軽トラックが発見された熊本県宇土市花園町の路上に至る道路沿い店舗の防犯カメラには、N氏の軽トラックと同じ色の白い車が映っていた。

事件から3年後の2024年5月の時点で、熊本県警捜査本部は延べ約3万1000人の捜査員を投入したが、事件は未解決のままであった。この事件は地域社会に大きな衝撃を与えた。事件が起きたとみられる未明から早朝にかけて、現場の周囲は一気に暗くなり、交通量も日中に比べて少なくなるため、目撃されにくかった。また、周囲には住宅が数軒しかなく、事件の発生は地域の安全性に対する不安を増大させた。

年月日出来事
2021年5月23日 08:00頃N氏が友人2人と熊本・天草に釣りに出かける
2021年5月23日 16:00頃N氏が帰宅
2021年5月23日 16:30~17:00N氏が釣り仲間に電話をかける
2021年5月23日 夕方妻が自宅に止まっているの軽トラックを確認
2021年5月23日 21:00頃N氏が妻と話した後、就寝のため寝室に入る
2021年5月23日 22:00頃釣り仲間からN氏のスマートフォンに電話がかかる
数分間、釣りの話などをする
2021年5月24日 00:00~06:00司法解剖で判明した死亡推定時刻
2021年5月24日 06:15頃N氏が両手首と両足首をひもで縛られ、口と鼻に粘着テープを貼られて寝室に倒れているのを妻が発見
家の玄関には鍵がささったままだった
2021年5月24日 11:45頃N氏宅から約4キロ西の熊本県宇土市花園町の路上で、鍵がついたままで無施錠の軽トラックが見つかる
2021年5月23日~24日の出来事
5月 23, 2021
 08:00頃

N氏が友人2人と熊本・天草に釣りに出かける

5月 23, 2021
5月 23, 2021
16:00頃        

N氏が帰宅

5月 23, 2021
5月 23, 2021
16:30~17:00頃           

N氏が釣り仲間に電話をかける

5月 23, 2021
5月 23, 2021
夕方(時刻不明)      

妻が自宅に止まっているの軽トラックを確認

5月 23, 2021
5月 23, 2021
21:00          

N氏が妻と話した後、就寝のため寝室に入る

5月 23, 2021
5月 23, 2021
22:00頃         

釣り仲間からN氏のスマートフォンに電話がかかる。数分間、釣りの話などをする

5月 23, 2021
5月 24, 2021
00:00~06:00頃            

司法解剖で判明した死亡推定時刻

5月 24, 2021
5月 24, 2021
06:15頃         

N氏が両手首と両足首をひもで縛られ、口と鼻に粘着テープを貼られて寝室に倒れているのを妻が発見。家の玄関には鍵がささったままだった

5月 24, 2021
5月 24, 2021
11:45頃         

N氏宅から約4キロ西の熊本県宇土市花園町の路上で、鍵がついたままで無施錠の軽トラックが見つかる

5月 24, 2021

N氏宅と周辺の状況

N氏宅は、JR「宇土」駅から南東方向へ直線距離で約6kmに所在し、自宅前には国道266号線が通っている。周囲は自然に囲まれた環境である。自宅周辺には街灯が少なく、夜間は暗くなりがちであった。N氏は長年この地に住み、地域社会に貢献していた。

国道266号線は熊本県内を通る主要な幹線道路の一つであり、交通量は比較的多い。この道路は熊本市と天草地域を結ぶ重要なルートであり、特に通勤・通学の時間帯や観光シーズンには交通量が増加する。また、地元の商業施設や観光地にアクセスするための主要な道路でもあるため、一日を通して一定の交通量が見られる。

しかし、N氏宅の周辺は農地が多く、住宅が点在する地域であるため、深夜や早朝には交通量が減少し、静かになることが多いと考えられる。

熊本市南区元城南町議殺人事件現場近辺の地図:出典:Googleearth

N氏の経歴など

N氏は1999年から2010年の間、熊本市と合併する前の旧城南町で町議を3期務めた。また、2003年から2007年には同議会の副議長も担当し、市農業委員会の農地利用最適化推進委員を務めた。

さらに、2005年には地元のライオンズクラブの役員を務め、地元JA(農業協同組合)の部会長も務めた。 N氏は地元コミュニティに深く根付いており、その活動は地域の発展に寄与していたと考えられる。

彼のリーダーシップと尽力は、多くの住民から尊敬と感謝を受けていたようだ。

推測されていた犯人像と動機

犯人の目的は何か。寝室から見つかったN氏の財布には小銭だけが残り、紙幣は入っていなかった。N氏は手足を縛られていた。このことから犯行は事前準備のある計画性が推測され、突発的に金銭を狙った犯行の可能性は低いと見られていた。

別室で寝ていた妻は犯行に気づいていない。犯人は激しく争うことなくN氏を緊縛、殺害し、軽トラを奪って逃走したとみられる。その手際のよさから複数犯の可能性が考えられている。

犯人の動機については、具体的な詳細が公表されていないため確定的なことは言えない。しかし、一部報道によると、犯人がN氏を拘束した理由は殺害の目的ではなく、騒がれないように緊縛し、何かを聞き出そうとして、脅かしを目的としたことも考えられている。

高齢者宅に複数犯が押し入り家人を緊縛し金銭の在処、金庫の暗証番号などを聞き出す過程で被害者を殺害する事件は、2023年に話題となったSNSを利用した闇バイトや広域連続強盗事件の手口に類似する。 これらの事件は、SNSを通じて集められた犯罪者グループ(トクリュウ)が計画的に役割分担しながら行動することが特徴であり、本事件の計画性や複数犯の可能性と一致する点が多い。本事件の動機や背景に犯罪者グループ(トクリュウ)の存在が考えられていた。

容疑者逮捕へ報道

2024年5月27日、捜査の過程で、既に別の詐欺事件で逮捕・起訴されていた40代の男性2人が、熊本市南区元城南町議殺人事件に関与しているとして逮捕の方針と複数のメディアが報道した。

2人の容疑が固まり次第、未解決だった熊本市南区元城南町議殺人事件の捜査が進展するだろう。 2人のうち1人は、2022年に関西地域の高額強盗事件で既に逮捕、起訴され、実刑判決を受けたようだ。

また、この2人の他にも城南町の事件に関わっている人物がいることを視野に入れ、捜査を進めているとみられている。

まとめ

熊本市南区元城南町議殺人事件に関与していると見られる2人の男性は、すでに別の詐欺事件で逮捕・起訴されていた。また、1人は強盗事件にも関与し実刑を受けている。これら点に着目すると、2023年に世間を騒がせた匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)との関連が考えられる。

彼ら彼女らは一度犯罪に手を染めた人物を使い回す傾向があるため、この2人が組織内で複数の犯罪に関与していたとしても不思議ではない。

また、計画的かつ組織的に犯罪を実行することで知られており、今回の事件も同様の手口が見られ、広域的に活動し、特定の地域にとどまらず犯罪を行うことから、関西地域の高額強盗事件や詐欺事件に関与していた人物が、熊本の事件にも関与している疑いのある事実は、トクリュウの広域的な活動範囲と一致する。

捜査は、他にも城南町の事件に関わっている人物がいることを視野に入れて進められている。彼ら彼女らは、複数のメンバーが役割分担を行いながら連携して犯罪を実行するため、他のメンバーの存在も視野に入れることは合理的である。捜査当局がこの観点からも捜査を進めていることは、事件の解決に向けた重要な一歩となるだろう。

熊本市南区元城南町議殺人事件:容疑者逮捕

2021年5月、熊本市南区元城南町議殺人事件で、熊本県警は2024年6月30日、熊本市中央区渡鹿の無職、陳野直也(43)と、八代市鏡町の塗装工、上田亨(41)の両容疑者を強盗殺人と住居侵入の疑いで逮捕したと発表した。(2024年6月30日追記)

陳野直也容疑者の経歴

逮捕された陳野直也容疑者と思われる同姓同名者の経歴、過去の犯罪報道について調査を行ったところ、2001年頃に熊本市内で発生した火災の際に逃げ遅れた高齢女性を助け、熊本市消防局から表彰を受けていたことが確認できた。

その後、2023年には熊本県八千代市内の中古車販売店から車を盗んだ容疑で逮捕され、さらに他の4人と共に奈良県などの住宅から約2億円の現金や貴金属を盗んだ住居侵入、窃盗などの容疑で2度逮捕されている。

2024年6月には、本事件で陳野直也容疑者と共に逮捕された上田亨容疑者を含む計4人が、クレジットカードを使って170万円の金券を詐取した疑いで逮捕されている。

陳野直也容疑者は、過去に少なくとも3つの事件に関与している。1つ目の自動車窃盗では共犯者が68歳の無職男性であり、約2億円の貴金属窃盗にはこの68歳の共犯者を含め計6人の人物が関与している。170万円の金券詐取では、本事件で逮捕された上田亨容疑者の他に、仙台市宮城野区の会社役員男性(36歳)と兵庫県豊岡市のパート従業員男性(26歳)の計4人が逮捕されている。

170万円の金券詐取で逮捕された4人は知人関係らしいが、一方で、陳野直也容疑者が関与した過去の事件からは、年齢、居住地域、職業などに関係性のない者たちが集まり犯罪を行うトクリュウ型の犯罪(緩やかな結びつきで離合集散を繰り返す集団)の特徴がうかがえる。

上田亨容疑者の過去の犯罪報道

上田亨容疑者の過去の犯罪報道について確認を行ったところ、2024年に陳野直也容疑者らと共に逮捕されたクレジットカードを使った170万円の金券詐取が確認されたが、その他の情報は得られなかった。


◆参考資料
「【続報】3年前の元町議殺害事件 男2人を逮捕へ1人は高額窃盗団メンバー」熊本県民ニュース2024年6月28日18時46分配信
「手足縛られ元町議死亡熊本殺人事件の可能性」読売新聞社2021年5月25日付
「元町議の寝室に財布、紙幣なし熊本殺害、小銭とカード類のみ」共同通信社2021年5月26日付 
「元町議殺害 被害者の車で逃走か現場近く防犯カメラに映る」読売新聞2021年5月28日付
「熊本元町議殺害:熊本元町議殺害発生1週間複数犯か争う音、聞こえず」毎日新聞2021年5月31日付 
「自動車窃盗容疑、男2人を再逮捕」朝日新聞2023年6月30日付
「現金約900万円窃盗容疑で再逮捕」朝日新聞2023年8月24日付
「金券170万円詐取容疑の4人逮捕クレカ悪用」読売新聞2024年6月11日付
「元町議への強盗殺人容疑で40代男性2人を逮捕」毎日新聞2024年6月30日配信


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Jean-Baptiste Roquentin運営者

投稿者プロフィール

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。
Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。
小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。
分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。

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