2024年2月22日に、米国内で既に逮捕されていた日本の「ヤクザ」とされる人物が核物質を密売しようとした罪で起訴されたことが報道された。
この事件は、国際的な安全保障にとって重大な脅威を示すものであり、核物質の不正取引に対する国際社会の警戒を促している。核不拡散と国際安全保障の観点からも、この事件は非常に重要な意味を持っているだろう。また、日本の「ヤクザ」が核物質の密輸に関与したとなれば、日本の「ヤクザ」に対する取締り強化を求める国際世論の声が高まるかもしれない。
核物質の密売は、テロリストによる核兵器の製造や不安定な地域での核拡散リスクを高めるため、国際社会はこれを防ぐために厳重な監視と協力体制を維持している。
このような背景を踏まえると、今回の起訴は核物質の不正取引に対する国際社会の無容赦な姿勢を示しており、今後の裁判や捜査の進展に注目が集まっている。
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事件概要
アメリカの司法省(外部リンク:アメリカ司法省の報道)の発表によれば、国際組織犯罪シンジケート「ヤクザ」のリーダー、エビサワ・タケシ容疑者は、ウランや兵器級プルトニウムなどの核物質を密輸した疑いで起訴された。マンハッタンで公表された起訴状によると、エビサワ・タケシ容疑者はビルマから他国へ核物質を輸送するために仲間と共謀した。エビサワ・タケシと共同被告のソンフォップ・シンハシリ容疑者は、2022年4月に国際麻薬密売と銃器犯罪で起訴され、勾留されている。
司法省国家安全保障局のマシュー・G・オルセン司法次官補は、被告がビルマから兵器級の核物質と致死性麻薬を販売し、武装反政府勢力のために軍事兵器を購入したことを共謀したと述べた。ニューヨーク州南部地区連邦検事ダミアン・ウィリアムズは、被告がウランと兵器級プルトニウムを密輸したと述べ、その行為の深刻さを強調した。麻薬取締局(DEA)のアン・ミルグラム長官は、被告がイランの核兵器開発に使用されることを想定してウランや兵器級プルトニウムを提供したと述べた。
起訴状によると、エビサワ・タケシ容疑者は2020年初頭から核物質を入手し、販売したいと伝えていた。
エビサワ・タケシ容疑者は、ビルマの少数民族武装勢力の指導者に代わって、地対空ミサイルを含む兵器のリストを送付し、ウランを売ることを提案した。米国の核鑑識研究所は、押収された核サンプルに検出可能な量のウラン、トリウム、プルトニウムが含まれていることを確認した。
この事件は、麻薬取締局特殊作戦課二国間捜査班によって捜査され、インドネシア、日本、タイ王国の法執行機関の支援を受けている。ニューヨーク州南部地区の連邦検事補がこの事件を起訴しており、組織犯罪薬物取締タスクフォース(OCDETF)の作戦の一環として行われている。
なお、組織犯罪薬物取締タスクフォース(OCDETF)は、アメリカ合衆国司法省が主導する多機関連合の取り組みである。このタスクフォースは、1982年に麻薬密売と組織犯罪に対抗するために設立された。OCDETFの主な目的は、薬物取引、マネーロンダリング、その他の重大な犯罪を行う高度に組織化された犯罪組織を特定し、混乱させ、解体することである。
OCDETFは、検察官、連邦捜査官、州および地方の法執行機関が協力して活動する。この協力体制により、情報共有と資源の最適化が促進され、複雑で多層的な犯罪組織に対する効果的な対策が可能となる。タスクフォースは、検察官主導のアプローチを採用しており、捜査の初期段階から検察官が関与し、法的な戦略の策定と実行を指揮する。
OCDETFの活動は、米国を脅かす最も深刻な犯罪組織に焦点を当てており、その任務は、組織犯罪の根絶に貢献することにある。また、OCDETFは、薬物取締局(DEA)、連邦捜査局(FBI)、国税局(IRS)、国土安全保障省(DHS)など、複数の連邦機関と密接に連携している。この広範なネットワークと協力体制により、OCDETFは国内外の犯罪組織に対する包括的な対策を実施している。
エビサワ・タケシ容疑者に関する報道
報道によれば、エビサワ・タケシ容疑者は、1964年生まれ、栃木県出身の「海老澤剛」といわれ、以前から投資詐欺を行っていたといわれる。
また、エビサワ・タケシ容疑者は、古い日本の一万円札の大量買取や、中国国民党の裏金ドル洗浄計画など、架空の話をもとに投資を持ちかけ、ブラックマネー詐欺においては、特別な薬品を用いて黒い紙束を紙幣に変えるという手法で出資を募ったといわれる。
これらの話は、実際には実行不可能なものでありながら、彼の語る外国での経験や人脈を駆使した説得力のあるプレゼンテーションによって、多くの被害者が信じ込まされたようだ。 これらの報道から、エビサワ・タケシ容疑者が、詐欺を一種の生業として長年にわたり続けてきた人物であることが読み解けるが、日本の「ヤクザ組織」の幹部だとの確証は得られていない。
日本国内のエビサワ・タケシ容疑者の元関連会社
エビサワ・タケシ容疑者は、「中学卒業後、父親の木工屋で短期間働いた」(引用:デイリー新潮『DEAを欺いた「日本のヤクザ親分・エビサワ」は本物の闇商人だったのか? 米司法当局がウラン密輸容疑で追起訴 知人は「栃木県の2DKアパートに住むチンケな詐欺師」』2024年2月22日配信)といわれる。
エビサワ・タケシ容疑者の同姓同名者(海老澤剛)について調べを進めたところ、エビサワ・タケシ容疑者の同姓同名者(海老澤剛)が2007年頃、役員に就任してたS社の存在が確認された。
エビサワ・タケシ容疑者の元関連先法人の可能性が考えられるS社は、栃木県宇都宮市の北部に所在し、約50年前に設立された小さな法人である。ただし、数年前に解散してることが明らかになったため、同社とエビサワ・タケシ容疑者の関連性の確証は得られていない。
このため、現時点(2024年2月22日現在)で、S社がエビサワ・タケシ容疑者の元関係先だという断定はできない。
ブラックマネー詐欺
以前、エビサワ・タケシ容疑者が関わっていたといわれるブラックマネー詐欺は、詐欺師が黒く染められた紙を本物の紙幣に見せかけ被害者を騙す手法をとる。
この詐欺の特徴は、被害者に対して、特別な化学薬品を用いて黒い染料を洗い流すことで、紙幣を「洗浄」し、使用可能な状態に戻すと偽る点にある。詐欺師は、このプロセスに高額な費用がかかると主張し、被害者から資金を詐取する。
ブラックマネー詐欺の手口には、以下のステップが含まれる。
詐欺師は通常の紙を紙幣サイズに切り、黒い染料で覆う。被害者に接触し、「ブラックマネー」を低価格で提供すると申し出る。一部の紙を「洗浄」し、本物の紙幣に見せかけることで、プロセスの信憑性を高める。「洗浄」に必要だとされる高価な化学薬品の購入費用として、被害者から金銭を詐取する。
勿論、ブラックマネー詐欺を行う詐欺師は、詐欺の信憑性を高めるため紙幣が黒く塗られた背景について具体的な説明を提供する。
主な説明としては、以下のようなものが挙げられる。
政府の目を逃れるためや、大量の資金の国境移動の際の隠蔽手段として紙幣を黒く塗ったと語り、この方法により、紙幣がセキュリティチェックで検出されることを防ぐ目的があると説明することがある。また、ブラックマネーは、紛争地帯や政治的に不安定な国から資金を安全に移動させるために、紙幣を黒く塗ってその存在を隠したというストーリーが語られることが多い。前述の記事によれば、エビサワ・タケシ容疑者は、サダム・フセインの名前を挙げていたようだ。
また、詐欺師はブラックマネーが存在する目的を独裁国家に富裕層の脱税や独裁者から資産を隠蔽するためだとの説明を行うことがある。紙幣を黒く塗ることは特殊な保存方法であり、紙幣の長期保存や劣化を防ぐために行われたと説明する場合もあるようだ。
これらの説明は、ブラックマネー詐欺の架空の背景を構築し、被害者が紙幣の「洗浄」に必要だとされる化学薬品の購入や、それに伴う費用の支払いに同意させることを目指している。しかし、これらの背景説明はすべて虚偽であり、詐欺師の目的は被害者から金銭を騙し取ることにある。
ブラックマネー詐欺が流行した背景には、経済のグローバル化や情報技術の発展が挙げられる。インターネットの普及により、詐欺師は国境を越えて被害者を狙うことが容易になった。また、金融危機や経済不安が社会に広がる中で、高いリターンを求める人々の心理を利用しやすくなった。被害者は、通常の投資では得られない高いリターンを期待し、リスクを顧みずに資金を提供する傾向がある。
また、政情が不安定な国家や独裁国家などの国内問題から資産を移動したいという富豪の存在や反政府的立場の人間の存在を被害者に想像させ、圧政への抵抗だという正義を被害者に錯覚させることがある。
結論
米国内で起訴されたエビサワ・タケシ被告が有罪判決を受けた場合、終身刑の可能性が考えられる。エビサワ・タケシ被告とは何者か。今後の裁判の行方が非常に気になるところだ。
また、ブラックマネー詐欺等の防止策としては、非現実的なリターンを約束する取引や、その正当性が疑わしい取引には慎重に対応することが重要である。また、詐欺の手口に対する認識を高めることが、被害を未然に防ぐ鍵となる。ブラックマネー詐欺は、被害者の欲望を巧みに利用する詐欺であり、その手口を理解し警戒することが必要である。
※本記事は、2024年2月22日、20時現在の情報に基づき作成した記事である。
◆参考・引用記事(資料)
『DEAを欺いた「日本のヤクザ親分・エビサワ」は本物の闇商人だったのか? 米司法当局がウラン密輸容疑で追起訴 知人は「栃木県の2DKアパートに住むチンケな詐欺師」』デイリー新潮2024年2月22日配信
『日本の「ヤクザ」、核物質を密売しようとしたとして起訴米検察』BBSNEWS2024年2月22日配信
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