持続化給付金詐欺の主な逮捕者・事例(5つの事件の共通点)

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税理士法違反等の容疑で逮捕された会社役員と交際相手

2022年1月31日、税理士資格を有しないのに2020年6月15日から7月4日の間、熊本県内などの20代の男女7人を個人事業主と偽り、新型コロナの影響を受け収入が減った(または無かった)とする虚偽の確定申告書を作成、電子申請した税理士法違反と私電磁的記録不正作出・同供用の容疑で会社役員、バーの経営者U容疑者(36歳)と交際相手K容疑者(25歳)が逮捕された。

U容疑者(36歳)と交際相手K容疑者(25歳)は、約1億6000万円の持続化給付金不正受給(詐欺)の容疑で既に逮捕、起訴されていたI被告からの紹介などにより、これまで100人以上の虚偽の確定申告を行い、その報酬は1件2万円~5万円との報道も散見される(参考:税理士法違反疑い男女逮捕 1億円不正受給関与か、警視庁共同通信2022年1月31日付)

上記事件は税理士法違反と私電磁的記録不正作出・同供用の容疑のため警視庁生活安全部のサイバー犯罪対策課による逮捕だと思料され、現時点(2022年2月1日)ではU容疑者とK容疑者が、直接、持続化給付金を不正に受給した(詐欺)との報道は認められず、前述の通り、既に1億6000万円の持続化給付金不正受給(詐欺)事件で逮捕、起訴されたI被告などから紹介された約100人に対し、1件2万円~5万円の報酬を得て確定申告書類(1件2万円~5万円の報酬:計,約200万円)を作成した容疑である。

上記の持続化給付金不正受給事件で逮捕されたI被告は、元携帯電話販売会社社長であり、Uが経営する株式会社Mの役員にも就任していたが、2022(令和3)年4月に役員を辞任していた。

なお、I被告の持続化給付金不正時給(詐欺)での逮捕は、M社役員辞任の一か月前の2021(令和3)年5月だったが、同人は2021(令和3)年3月4日、不正競争防止法違反容疑でも逮捕されていた。なお、同事件は元携帯電話販売会社社長だったI被告(当時35歳)が無断で顧客情報をコピーなどし、その情報が電子決済サービス「ペイペイ」や「ドコモ口座」の不正引き出し(電子計算機使用詐欺など)の容疑で逮捕された住所不定、無職男性容疑者(当時37歳)に渡り、使用された事件である。

U容疑者は、2021(令和3)年12月、ソーシャルネットワークを活用したブランディング及びパブリック・リレーションズ活動の企画、運営並びにそれらの代行及びコンサルティングなどを目的に資本金100万円で設立されたF合同会社及び2020(令和2)年6月、カフェ、レストラン、バー等の飲食店の経営、企画、管理及びコンサルティングなどを目的に資本金450万円で設立された株式会社Mを経営していた。また、U容疑者とK容疑者は「東京都港区赤坂2丁目」の高級マンションで生活していたとの報道も散見される。

誰もが認める国内の一等地――東京都港区赤坂の居住する会社経営者の実情は――やはり、砂上の楼閣の住人だったのかもしれない。

逮捕された現職の寝屋川市議会議員

2022年8月1日、現職の寝屋川市議吉羽(よしば)美華容疑者(被告)注,2022年12月20日現在、公判中(参考:寝屋川市議被告、起訴内容を否認 コロナ融資詐欺事件 朝日新聞 2022年12月21日付)ら5人が新型コロナ関連の公的融資制度を悪用した保証金詐欺の容疑で福岡県警に逮捕された。

同事件は、持続化給付金詐欺とは異なる事例だが、この5人の容疑などが事実ならば、コロナ過のなか経営悪化などの理由から公的融資を求める福祉施設運営会社などを狙った非常に悪質な事件である。

「自分に任せれば無担保・無利子」コロナ融資詐欺容疑者の1人、関連機関の審議官かたる 読売新聞 2022/08/02 15:08配信 コロナ禍での公的融資制度を巡り、大阪府寝屋川市議の吉羽美華容疑者(42)ら5人が詐欺容疑で逮捕された事件で、うち1人が融資元の関連機関で審議官を務めているなどと偽っていたことが捜査関係者への取材でわかった。福岡県警が詳しく調べている。利用された融資制度は、独立行政法人「福祉医療機構」(WAM、東京)の「新型コロナウイルス対応支援資金」制度。県警の発表では、5人は2020年7~12月、堺市の福祉施設に対し、「特別な条件で融資が可能で、返済しなくても民事上の責任は負わない」などと偽り、同年12月中旬、この施設に1億2000万円の融資を受けさせ、うち5940万円を業務委託料などの名目でだまし取った疑い。捜査関係者によると、5人のうち自称無職の渡部秀規容疑者(48)(大阪市)はこの福祉施設に対し、機構の関連機関で審議官を務めており融資の決定権限があると伝えた上で、「自分に任せれば、無担保・無利子になる」などと虚偽の説明を口頭で繰り返していた。さらに、医療福祉コンサルタント会社代表取締役の北村隆史容疑者(60)(大阪市)が同機構の関連機関を運営していると強調。吉羽容疑者が市議の名刺を渡すなどして信用性を高めていたという。

読売新聞 2022/08/02 15:08配信

吉羽美華容疑者(被告)は、2022年8月2日現在の時点で以下の2つの法人の代表取締役に就任していることが確認できた。

東京都内に本店を定める株式会社P社は、洋品雑貨、日用雑貨、化粧品、紙、印刷物、文房具、輸送用機器、衣服、靴、コンピューターとその周辺機器、通信機器、健康食品、肥料、飼料などの輸出入及び販売などを目的に平成30年3月、大阪府大阪市内を本店に定め資本金100万円で設立された。

また、株式会社P社の設立当時の社名は株式会社B社だが、令和2(2020)年に株式会社H社に商号変更を行い、さらに、令和3(2021)年、現在の株式会社P社に商号を変え本店を東京都内に移転させていた。

吉羽美華容疑者(被告)が代表取締役に就任するもう一つの法人は、昭和60(1985)年5月21日に大阪府大阪市内を本店所在地に定め設立された株式会社D社である。

株式会社D社の資本金は1000万円、事業目的は前述の吉羽美華容疑者経営先の株式会社P社とほぼ同じであり、株式会社P社は株式会社D社の関連企業の可能性も考えられる。

吉羽美華容疑者(被告)は、平成30(2018)年、株式会社D社の代表取締役に就任している。

画像とプロフィールは寝屋川市役所HP(令和4年5月18日現在)から

氏名:吉羽 美華(よしば みか)
年齢:41歳
当選回数:3
所属会派:ねやがわ未来議員団
所属委員会:文教生活常任委員会
住所:寝屋川市香里南之町28番6号
電話:<本記事筆者の判断により削除>

寝屋川市役所のホームページなどによると吉羽美華容疑者(被告)の住所(事務所)は、親族宅などと思料される「寝屋川市香里南之町28番6号」であるが、吉羽美華容疑者が、令和2(2020)年、大阪府寝屋川市内にある地上37階建タワーマンションの高層階の部屋を親族と一括購入(共有)していることが確認できた。

吉羽美華容疑者(被告)と共に逮捕された者のなかで氏名が公表されている人物が2名いる。そのうちの一名であるK容疑者(2022年9月12日、処分保留)は、医療コンサルタント会社代表を名乗る大阪府大阪市西区の60歳の人物らしい(参考:詐欺:大阪・寝屋川市議ら逮捕、詐欺容疑 コロナ融資巡り 十数億円被害か 毎日新聞 2022年8月2日付)。

当然だが、吉羽美華容疑者(被告)と共に氏名を公表されたこれら2名は、本事件において重要な役割を担っていると考えられる人物だ。

K容疑者の同姓同名者の過去の事件報道を確認した結果、同人の可能性が高い同姓同名者が、平成20(2008)年8月6日、公正証書原本不実記載・同行使容疑の共犯として、大阪府警に逮捕されていた。

上記の事件は、(当時)大阪弁護士会所属の弁護士のS容疑者(58歳)が、(当時)飲食店に勤務していた韓国人女性(共犯で逮捕)に在留資格を取得させるため日本人男性A(この男性も共犯として逮捕)と所謂「偽装結婚」させた容疑である。なお、K容疑者の同姓同名者はA容疑者の同僚と報道され(当時)弁護士S容疑者の共犯の疑いで逮捕、起訴されていた(参考:偽装結婚で弁護士ら逮捕 交際女性に在留資格/大阪府警 読売新聞 2008年8月7日付)

K容疑者の同姓同名者の逮捕当時の年齢は48歳であり、K容疑者と年齢的に「ほぼ一致」する。

吉羽美華容疑者(被告)と共に逮捕され氏名が公表されているもう一人の人物であるW容疑者(被告)は、「大阪市中央区南船場、自称・職業は無職(引用:詐欺:大阪・寝屋川市議ら逮捕、詐欺容疑 コロナ融資巡り 十数億円被害か 毎日新聞 2022年8月2日付)」「この福祉施設に対し、機構の関連機関で審議官を務めており融資の決定権限があると伝えた上で、『自分に任せれば、無担保・無利子になる』などと虚偽の説明を口頭で繰り返していた。(引用:読売新聞 2022年8月2日 15:08配信)」などと報道されている。

上記の報道から、W容疑者(被告)は「機構の関連機関で審議官を務めており融資の決定権限がある」などと語り、被害者を信用させていたようだ。

だが、自称無職の人間にそのような交渉事は難しいとも思われる。W容疑者(被告)は法人などを経営している(いた)可能性が高いと推測されるため、経営先の有無などの確認を実施した結果、大阪府大阪市中央区南船場4丁目の自宅を本店所在にするW容疑者(被告)の同姓同名者経営の株式会社N社が認められた。

上記N社は、平成26(2014)年11月、オフィスビル、商業施設等の企画、開発、運営、賃貸、管理及びコンサルティング業務などを目的に設立され、資本金は500万円の法人である。

また、同社の現在の事業目的には、eスポーツ(コンピューターゲームを使用した競技)の企画、開発、運営、管理業務などがあり、流行を意識した事業目的が追加されている。

吉羽美華容疑者(被告)らの事件は、有名詐欺事件のM資金に似た構図を持つ。M資金詐欺は、戦後の混沌とした時代背景のなかで生まれた有名な詐欺事件である。昭和20(1945)年8月15日の終戦(日本の敗戦)により日本はGHQの占領下に入る。

M資金詐欺の主な内容は「GHQは旧政府や旧日本軍から大量の金銀宝石などを接収した」「その秘密資金を選ばれた者に無担保、低金利で融資する」「そのためには手数料が必要だ」等々であるが、詐欺師側は「国債還付金残高確認証」といわれる偽の公文書を用意し、政治家の名刺や大蔵(現在の財務省)官僚の名前などを巧みに使い、時には旧皇族、旧華族(貴族)などの貴種の名前などを利用しながらの壮大な話を相手(被害者)に吹き込み、その話を信じた者、信じようとする者から金銭を詐取する。

M資金詐欺の被害は、大企業の経営者や大物芸能人にまで広がり被害者のなかには自殺を遂げる者もいた。令和の時代になってからも大手外食C社の創業者が被害に遭っている。

今回逮捕された吉羽美華容疑者(被告)らの事件もM資金詐欺と似た匂いを感じてしまう。無担保、無利子、「返済しなくても民事上の責任は負わない」などと語り、被害者から手数料名目の金銭を詐取する。

そこに現職の市議吉羽美華容疑者(被告)が登場する。審議官を名乗るW容疑者(被告)が登場する。

M資金は、その存在自体が都市伝説のように不明だが、「独立行政法人福祉医療機構(WAM)」の「新型コロナウイルス対応支援資金」制度は実際にある。実在の団体や実際の制度を悪用した詐欺事件。事実だとすれば非常に悪質な事件だ。

寝屋川市議会議事録「令和 4年3月定例会(第6日 3月11日)」の吉羽美華容疑者(被告)の以下の発言が確認された。

陽性者やその家族には配食サービスも行っています。国の休業支援金、給付金等も含め、福祉的施策の提供は幾重にも張り巡らされています。しかし他方、私たち議員は、コロナ陽性にはなっていないが、外出自粛要請を受け、そして負担を強いられていた、そういった市民の皆さんへも公平性を守っていかなければならないという、この信念を持たなければなりません。私たちは信念を持っています。

寝屋川市議会議事録「令和 4年3月定例会(第6日 3月11日)」

戦後最大の有事だともいえるコロナ過のなか、多くの人々が経済的困窮に陥った。そして、経済的困窮を救うための多くの制度の基本は「公平性」の筈だ。「公平性」を信念とする吉羽美華容疑者(被告)は――それを忘れてしまったのだろうか。

吉羽美華容疑者(被告)の逮捕以降も同事件に関係すると思われる複数の人物が逮捕されている。同事件は複数の人間が関与する組織的な事件のようだ。

2022(令和4)年8月22日、吉羽容疑者、K容疑者、W容疑者(被告)及び一名(H容疑者)が福岡県久留米市内の医療法人から2億3200万円を詐取した疑いで再逮捕された。また今回の逮捕容疑では福岡県北九州市小倉南区のH容疑者も新たに逮捕されている(参考:吉羽美華・寝屋川市議を再逮捕、医療法人から2億3200万円だまし取った疑い 読売新聞2022年8月22日 17:49配信)

さらに、2022(令和4)年8月23日、同日までに(逮捕は22日か23日)東京都港区の53歳女性M容疑者が新たに逮捕されたとの報道があった。(参考:コロナ融資金詐取容疑で新たに53歳女逮捕 福岡県警 産経新聞2022年8月23日 09:34配信)」

当該事件の逮捕者数は上記のM容疑者の逮捕により7人となった。

年月日容疑逮捕の人数など
2022年8月1日詐欺吉羽美華容疑者、K容疑者、W疑者ら5人逮捕
2022年8月22日詐欺吉羽美華容疑者、吉羽美華容疑者、K容疑者、W容疑者の再逮捕。H容疑者逮捕
2022年8月23日詐欺上記4名のほか、上記4名のほか、M容疑者が逮捕 (これまでの逮捕者は7名 2022年8月23日現在
<資料 寝屋川市議吉羽美華容疑者などによる詐欺事件の逮捕者数>

その後、吉羽美華容疑者(被告)は大阪府堺市の福祉施設「返済できなくても責任を追及されない」からなどと偽り、約2億9千万円を騙し取った詐欺罪で起訴され、2022年11月25日、「独立行政法人『福祉医療機構』(WAM)の新型コロナウイルス対応の融資制度をめぐる詐欺事件で、福岡県警は25日、詐取した約1億5千万円を事件の共犯者から盗んだとして、大阪府寝屋川市議の吉羽美華被告(42)=詐欺罪で起訴=を窃盗容疑で追送検した。」(引用:寝屋川市議、詐欺で得た1.5億円を盗んだ疑い 共犯者が管理 朝日新聞社 2022年11月25日 20:49配信)との報道がある。

詐取した10数億円のうち6億円余りを手にした吉羽美華容疑者(被告)は、手にした6億円のうち4億円を総合格闘技団体に出資していたとも報道されている(参考:詐取した十数億円、吉羽美華市議に6億円か…うち4億円を総合格闘技団体に出資 読売新聞オンライン 2022年9月12日付)

黄色のベンツと高級マンションと投資――吉羽美華容疑者(被告)は、何を得て、何を失ったのだろうか?

まとめ

今回、紹介した5つの事件(「持続化給付金約10億円を詐取したTグループのT容疑者(被告)」、「ドバイに出国した男のM容疑者(被告)」、「逮捕された現役市長の長男のK・S容疑者(被告)」、「税理士法違反等の容疑で逮捕された会社役員と交際相手のU容疑者」、「逮捕された女性市議会議員の吉羽美華容疑者(被告)」)の共通点は――やはり――「砂上の楼閣」なのかもしれない。


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投稿者プロフィール

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。
Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。
小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。
分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。

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