茨城県つくば市高齢夫婦殺害事件:犯人像や動機を考察

茨城県つくば市高齢夫婦殺害事件犯人像や動機を考察

2018年の元日に発覚した『茨城県つくば市高齢夫婦殺害事件』は未解決のまま現在に至っている。事件現場は周囲に民家がない孤立した場所にあり、夫婦は激しい暴行を受けて命を落とした。

本記事では、この事件の背景や警察の捜査状況に基づき、筆者の個人的な推測と考察を交えながら、犯人像やその動機について探る。

事件概要

2018年1月1日(月曜日)、茨城県つくば市で発覚した高齢夫婦殺害事件(以下、本事件と記す)は、その残虐さと未解決のまま続く謎から、大きな社会的関心を集めてきた。

事件現場は、かつてカラオケ店として使用されていた二階建ての民家であり、防犯設備がありながらも、夫婦は凄惨な暴行を受け、命を落とした。

本事件は、直ちに警察の捜査が進められたものの、決定的な手がかりは見つからず、後に同じ家屋で別の侵入窃盗事件や火災が発生するなど、複雑な経過をたどっている。

事件の詳細な時系列を以下にまとめ、事件の全容とその後の展開について振り返る。

事件発覚

2018年1月1日(月曜日)、16時40分ごろ、茨城県つくば市東平塚の民家において、建設業を営むA氏(77歳)およびその妻B氏(67歳)が死亡しているのを訪れた娘(43歳)とその夫(42歳)が発見し、直ちに茨城県警察に通報した。

茨城県警つくば中央署の発表によれば、A氏は2階の和室で後頭部を含む数カ所に外傷を負い、うつ伏せで倒れていた。右腕には皮下出血があり、骨折が確認されている。B氏は2階の廊下で、顔面から後頭部にかけて十数カ所の外傷を負い仰向けで倒れていた。

両腕には皮下出血が確認されている。二人の死因は失血死であり、鈍器による殴打が原因とみられ、腕には防御創も確認されている。

事件現場の建物は二階建てで、敷地内には同建物のほかに1棟と、倉庫と思しき建物が所在している。同建物の一階にある玄関および勝手口には施錠がされていたが、2階には施錠されていない窓が存在していた。一階には格子が設置されており、侵入経路は特定されていない。自宅の鍵は建物内で発見されている。また、この住宅は5年ほど前まで一階部分がカラオケ店として使用されていた。

A氏とB氏は再婚同士であり、それぞれに3人の実子がいる。発見者である娘はB氏の実子で、A氏とB氏は二人暮らしをしていた。また、近隣の60代の女性の証言によれば、12月31日22時ごろにA氏宅の2階の部屋だけが点灯していたという。

さらに、A氏宅には防犯カメラや防犯照明器具のセンサーライトが設置されていたが、事件当時にそれらが稼働していたかどうかは不明である。

2018年1月4日(木曜日)、茨城県警察はこれを殺人事件と断定し、捜査員110人体制でつくば中央署に捜査本部を設置した。

捜査開始

捜査にあたる「つくば中央署捜査本部」は事件発覚の前日の2017年12月31日(日曜日)午前8時以降、B氏の携帯電話に不在着信の記録が残っていたことを明らかにした。

これにより、A氏夫婦が2017年31日朝の時点で既に電話に応対できない状態――つまり、殺害されていた可能性があるとみている。

捜査の結果、B氏は2017年12月30日(土曜日)18時ごろに娘と電話で話したことが確認されており、同日19時30ごろには夫婦がスーパーから車で帰宅していた。その後、31日(日曜日)午前7時ごろに訪ねてきたB氏の友人が応答を得られなかったことから、夫婦は30日19時半から31日午前7時までの約12時間の間に殺害されたと推測されている。

また、2階ベランダの手すりに夫婦の血痕が確認されており、犯人は2階の和室からベランダに出て逃走したとみられている。捜査本部はA氏所有の携帯電話2台を回収し、解析を行い、さらに、2017年1月7日(日曜日)にはA氏が建築業で使用していた阿見町の作業場など数カ所を捜索した。

侵入窃盗事件・放火の疑いのある失火

2018年9月、空き家となり、警察の規制線が張られていた事件現場の民家に侵入し、装飾品など52点を盗み、質屋で換金した男女3名が逮捕された。

逮捕容疑は、事件から3か月後の2018年4月28日16時30分頃から30日9時30分の間に、茨城県土浦市内在住の無職男性(47歳)、女性(43歳)、および自称塗装業の男性(46歳)が同建物のガラスを割り、宅内に侵入。時価総額820万円相当の貴金属や装飾品を盗み出したというものである。

この侵入盗事件の発覚は、2018年4月30日、現場付近で殺人事件の捜査を行っていた警察官が、同宅の窓ガラスが割れているのを発見し、内部を確認したことによる。その後、盗品捜査が進められる中で、3人の容疑が浮上した。

逮捕時、3人は容疑を否認していると報道されている。その後、捜査本部はA氏夫婦殺害事件と3人との関係性を否定したが、3人による侵入窃盗事件に関する続報は確認できない。 事件から3年後の2021年1月、捜査の進展と事件解決を望むA氏の長男C氏(50歳)を中心とした親族が、情報提供に対して100万円の私的懸賞金を発表した。

また、同年12月25日19時45分ごろ、通行人が事件現場の空き家から火が出ているのを発見し、緊急通報した。消防の発表によると、同宅の外壁などが一部焼け、約1時間後に火は消し止められた。同宅は空き家で火の気がないことから、放火の可能性も指摘された。

怨恨説

捜査当初から警察は、犯行の背景に家族間の複雑な関係や、怨恨、財産をめぐるトラブルがある可能性を視野に入れ、初動捜査を進めた。事件現場には物色や荒らされた形跡がなく、犯行の動機として怨恨の可能性が浮上していたが、特にB氏への執拗な攻撃から、彼女に対する個人的な感情が犯行の背後にあると考えられた。

事件が進展する中で、A氏の親族である長男C氏が捜査の対象として疑われ、メディアにも登場した。家族間の対立が捜査の一環として取り沙汰される一方で、警察はA氏の仕事関係者や親族に対しても捜査を進めただろう。

疑われた親族

A氏の自宅内には、犯人による物色や荒らされた形跡はなかった。また、A氏とB氏の死因が鈍器のようなもので顔面や頭部を激しく殴打されたことによる失血死であることから、捜査本部は犯行の動機として怨恨の可能性が高いと考えた。

特に、B氏には十数カ所の外傷が確認されたため、B氏に対する怨恨が犯行の背景にあるとの説が囁かれ始めた。

前述のとおり、A氏とB氏は再婚同士であり、それぞれに子供がいるとされている。公開情報によれば、A氏の家族は長い間茨城県稲敷郡阿見町に定住しており、A氏は数十年前に実家を相続し、その後、実家の敷地内に新たな建物を建設したとされる。

1970年代には、A氏は事件現場となった地域に土地を取得し、1990年代半ばにはそこでの生活を開始したと考えられている。また、その頃にB氏と出会い、やがて再婚に至った。A氏が前妻と離婚したのは2000年代初期と推定され、その後B氏と再婚したようだ。

警察は、この複雑な家族関係を捜査の焦点としていたようで、特にA氏の長男C氏に疑いの目を向けていた。生前、B氏とC氏の間では、C氏がA氏の所有物を売ろうとしたことが原因で口論になることがしばしばあったとされ、B氏との関係は良好ではなかった。このような背景から、C氏は事件への関与を疑われたとメディアでも報じられている。

2017年1月7日(日曜日)に行われた、A氏が建築業で使用していた茨城県稲敷郡阿見町の作業場など数カ所の捜索は、警察がA氏の仕事関係者や親族に疑いの目を向けていたことを示唆していると考えられる。特に、A氏の長男C氏は実家の敷地内で食品関係の法人を経営しており、捜索対象となった作業場など数カ所の中にA氏の実家が含まれていたとの報道はないが、警察はC氏にも疑念を抱き、A氏の実家やその敷地内に所在するC氏の会社に何らかの手がかりを求めていた可能性がある。

この捜索は、警察が複雑な家族関係から生じた怨恨や財産をめぐる動機が事件の背景にあるとの仮説を立て、初動捜査を展開していたことを裏付けるものと見なされるだろう。

夫婦に対する怨恨説

A氏は長年にわたり、茨城県稲敷郡および茨城県つくば市を中心に生活し、建築業やカラオケ店を営んでいた。携帯電話を2台所有していたことからも、交友関係や知人、取引先の数が多かったと推測されるが、金銭関係や人間関係のトラブルに関する報道はない。

一方、妻のB氏は過去にカラオケ居酒屋に勤務していたことがあり、B氏にも広い交友関係や知人がいたと推測される。また、犯人がB氏の顔面などを中心に執拗な攻撃を加えていることから、犯人の主な狙いがB氏であったという説も散見される。

ただし、B氏への攻撃が執拗だった理由については、B氏が激しく抵抗した結果だとする見方もある。

また、A氏宅で営業していたカラオケ店が騒音トラブルを引き起こした可能性も考えられるが、A氏宅の周囲には民家はない。 A氏宅はつくばエクスプレス線「研究学園」駅から北東方向へ直線距離で約1キロメートルの場所に位置している。

建物前の道路は国道408号線と県道29号線をつなぐ抜け道として利用されており、制限速度40キロメートルの非生活道路である。また、同宅の土地は地目が山林で、西側と南側は木々に覆われているため、近隣住民との騒音をめぐるトラブルの可能性は低いと考えられる。

トラブルの有無

A氏の長男C氏によるメディアインタビューによれば、A氏宅には事件以前から「不審な兆候」があったと語っている。それを裏付けるかのように、玄関には鉄製と思われる門扉が設置され、防犯カメラや防犯照明器具のセンサーライトも取り付けられている。

A氏宅に対する「不審な兆候」が始まった時期を推測する一つの要素として、玄関の門扉、北側の外構、防犯カメラや防犯照明器具のセンサーライトの設置時期が挙げられる。

これらの情報を確認するため、撮影時期ごとのGoogleストリートビュー画像を調査したところ、2015年10月撮影の画像には北側の外構が設置されておらず、2017年2月撮影の画像には同外構が確認された。

このことから、事件(警察が考える事件発生日時は、2017年1月30日午後7時半から31日午前7時ころ)以前の『不審な兆候』の始まりは2015年10月から2017年2月の間だと考えることができるだろう。

侵入強盗説

本事件は殺人事件である。金品が強奪されたという情報はないものの、犯人の動機に金品の強奪が含まれていた可能性は否定できない。

A氏の長男C氏はメディアに対して怨恨説を語っているが、一方で、A氏の妹がA氏夫妻に渡した200万円の行方がわからないという話もある。

また、事件後の2018年4月30日に発覚した男女三人組によるA氏宅への侵入と貴金属窃盗事件は、A氏宅に時価820万円相当の貴金属が残されていたことを示しており、そもそも事件前からA氏宅には多額の貴金属類や資産があったと推測できる。

その情報を知っていた人物がいた可能性も考えられるだろう。

遺留品の考察

侵入盗説や強盗目的説、怨恨説や快楽殺人説など、犯人の動機を探るためには、公表されている犯人の遺留品を検証する必要があるだろう。また、当然ながら、犯罪や人の行動の動機が一つだけに限られるわけではない。したがって、怨恨と強盗など、複数の動機が入り混じる可能性があることに留意しなければならない。

本事件では、犯人に繋がる凶器、指紋、掌紋、DNA、血液、靴跡、移動手段、遺留品などの公表はされていない。2階ベランダの手すりから検出された血痕も、A氏夫婦のものであった。これは、警察があえて公表していない可能性も考えられるが、凶器や指紋、掌紋、DNA、血液に関しては、以下の2つの仮説が考えられる。

1・「犯人は手袋などを着用して侵入し、凶器を持ち帰った」 2・「A氏宅に不審な指紋、DNA、足跡はなかった。

つまり、犯人は以前からA氏夫婦宅に出入りできる人物であり、不審の定義から外された」 1の場合、犯人は事前に綿密な計画を立てて犯行を実行したことになり、2の場合は、当然ながらA氏夫婦と近い関係にある人物である可能性が高いと推認できる。

流しの犯行説

犯人が「事前に綿密な計画を立て、手袋を着用してA氏宅に侵入し、犯行後に凶器を持ち帰った」と仮定した場合、A氏宅を狙った理由を考える必要がある。A氏宅の外見は古い民家であり、建物の外観から多くの資産を持つと推測するのは難しい。

しかし、A氏は古くから茨城県内に住み、不動産を所有し、建築業やカラオケ店などを営み、親族も法人を経営していたため、経済的に恵まれた環境だと考えることもできる。

さらに、B氏は時価総額800万円以上の貴金属や装飾品を所有していた。基本的に貴金属や装飾品は身に着けるためのものであり、B氏が身に着けていたそれらの品から、A氏およびB氏がある程度の資産を有する家族だと推測することは可能だろう。

ここで重要になるのは、同仮説が正しいとするならば、犯人がA氏の資産情報を得た経緯である。犯人が直接的に見聞きし得た情報ならば、A氏の知人関係となり、第三者を通じてA氏の情報を得たとするならば、流しの犯行となるだろう。

2019年12月14日、東京都青梅市内で発生した67歳無職男性宅での強盗致死事件は、被害者宅に多額の現金があるとの情報を得た32歳の指示役男性と現場実行役の韓国籍31歳男性、25歳男性、見張り役の26歳と23歳の男性が逮捕されている。

被害者の67歳男性は、日頃から周囲に多額の現金を持っていると吹聴していた。その情報を得た指示役男性などが67歳男性宅に侵入、鈍器で頭部などを攻撃し死亡させた事件である。なお、67歳男性宅は「要塞のようだ」と評されるほどの厳重な警備がなされていたともいわれる。

ここで重要になるのは、もしこの仮説が正しいとするならば、犯人がA氏の資産情報をどのように得たかという点である。犯人が直接的に見聞きした情報であれば、A氏の知人関係にあたる可能性が高く、第三者を通じてA氏の情報を得た場合には、流しの犯行であった可能性がある。

2019年12月14日、東京都青梅市内で発生した67歳無職男性宅での強盗致死事件では、被害者宅に多額の現金があるという情報を得た32歳の指示役男性と、現場で実行役を務めた韓国籍の31歳、25歳の男性、見張り役の26歳と23歳の男性が逮捕されている。

被害者の67歳男性は、日頃から周囲に多額の現金を持っていると吹聴していた。その情報を基に指示役の男性らが67歳男性宅に侵入し、鈍器で頭部などを攻撃し、死亡させた事件である。なお、67歳男性宅は「要塞のようだ」と評されるほど厳重な警備が施されていたともいわれる。

同事件は、鈍器を使用して被害者の頭部を攻撃した点や、被害者の周囲が被害者の経済的な裕福さを知っていた点など、本事件と類似する部分がある。

本事件は事件現場から指紋やDNA、犯人の可能性がある足跡が採取されたとの情報がないことから、犯人の人数を推測することはできない。このことを前提にするならば、本事件でもA氏宅の資産状況を知った人物が指示役となり、複数の実行犯に情報を伝え、犯行に関与した可能性は考えられるだろう。

知人の犯行説

本事件がA氏夫婦の知人による強盗目的の事件だと仮定するならば、犯人は以前からA氏夫婦宅に出入りできる人物であったと考えられる。これにより、A氏宅から検出された指紋、DNA、足跡が「不審」の定義から外された可能性も否定できない。

警察はこれまでの捜査で、A氏宅や1階のカラオケ店に出入りしていた人物、A氏の仕事関係者、友人知人関係、そしてB氏の友人知人関係を洗い出し、事情聴取などを行っているだろう。

A氏は二台の携帯電話を所有していたといわれる。この二台の使い道は明らかではないが、仕事関係と私生活上の関係を区別して利用していた可能性がある。また、単純に一台は以前に使用していた携帯電話であった可能性も考えられる。 A氏とB氏の知人関係の総数を想像することは難しいが、もし犯人がA氏、B氏の直接的な知人や友人であれば、捜査の対象になり、すでに捜査が進展しているだろう。

快楽殺人説

本事件発生から約1年8カ月後の2019年9月23日(秋分の日)、茨城県猿島郡境町の民家で夫婦が殺害され、2人の子供が怪我を負う「茨城一家殺傷事件」が発生した。

同事件の事件現場の周囲には他の民家がなく、「物色の形跡」や「金品の強奪がない」ことから、強盗目的ではなく別の動機が絡んでいる可能性が考えられた。

さらに、「茨城一家殺傷事件」でも、犯人は事前に侵入経路や逃走ルートを把握していたと見られ、計画的な犯行であった点が本事件との類似点として挙げられた。

2021年5月7日、同事件の被疑者として、埼玉県三郷市に居住していたO(26歳)が逮捕された。Oには少年時代に「通り魔事件」の前歴があり、医療少年院送致の経歴を持つ。また、少年時代からナイフ類を収集する趣味を持っていたとされる。

(参考記事:快楽殺人事件の凶器を考察「世田谷一家殺害事件なぜ狙われた」、「茨城一家殺傷事件」を記述)

そのため、Oが残虐性を持ち、同事件が快楽殺人である可能性が疑われている。

ただし、同事件の被告Oは、犯行時に催涙スプレーと刃物を使用して被害者を攻撃している。鈍器のような物だけで攻撃した本事件とは、この点で大きな相違があると考えられる。

基本的に、快楽殺人犯は被害者を苦しめて殺害することを犯行の動機とするが、本事件ではその動機が明確ではない。そもそも犯人が事前に凶器となる鈍器を用意していたのか、それとも長年にわたり建築業を営んでいたA氏宅にある工具類を使用して犯行に及んだのかは不明である。

これらのことから、本事件の動機を快楽殺人と判断するには慎重にならざるを得ない。本事件が快楽殺人である可能性は低いと推測される。

侵入経路と逃走経路を考察

事件現場であるA氏宅からの犯人の逃走ルートは、2階ベランダの手すりに夫婦の血痕が見つかったことから、ベランダを越え、何らかの方法で地面に降りたと推察できる。

A氏宅の敷地には、1階がカラオケ店として使用されていた2階建ての家屋と、北側に隣接する2階建ての家屋および倉庫と思われる建物がある。犯人が逃走した「2階のベランダ」は、「腰高」、「手すり」という表現から、北側に隣接する2階建ての家屋のものと推測される。

Google Mapでも確認できるが、A氏夫妻は日常的に北側の建物の入口付近に軽自動車を駐車している。事件当日もA氏夫婦の二台の車が駐車されていたといわれていることから、犯人がベランダから車の上に飛び降りた可能性も考えられる。ただし、犯人の足跡が採取されていないため、詳細は不明である。

侵入経路は不明だが、A氏宅には、1階がカラオケ店となっている建物の二階部分に防犯照明器具や、倉庫に防犯照明器具および防犯カメラと思われる機器が設置されている。また、確認できる範囲では建物の西側に防犯照明器具があるが、南側には防犯機器類は設置されていないようだ。

このことから、犯人の侵入経路は1階がカラオケ店となっている建物の西側からの可能性が高いと推察できる。しかし、そもそも事件当日に防犯カメラ類が正常に稼働していたとの発表がないため、詳細は不明である。

また、A氏の長男Cはメディア取材の際に、犯人が梯子を使って二階に上がったのではないかと推測している。確かに、できるだけ音を立てずに二階に上がるには、建物の外に梯子を立てかけて登るという方法が考えられる。

犯人が梯子を使用したという仮説から導き出される重要な点は、その梯子を犯人自身が用意したのか、それとも建築業を営み自宅を自ら建てたともいわれるA氏が所有し、庭などに置いていたものを使用したのか、ということである。

犯人が事前に梯子を用意していたとするならば、本事件は計画性が非常に高く、複数犯による犯行の可能性が視野に入る。一方で、犯人がA氏の梯子を利用した場合、A氏宅の状況や生活に詳しい人物による単独犯行の可能性が高くなる。

真相考察

これまで、本事件の経緯や背景を整理しながら、犯人像や犯人の動機について考察してきた。特にB氏に対する執拗な攻撃から、怨恨説が有力と考えられ、警察はB氏と不仲であったことを告白しているA氏の長男C氏を含む親族や知人、友人、仕事関係者などに疑惑の目を向けたのだろう。しかし、事件は依然として解決していない。

金品目当ての犯行の可能性を考えるにあたり、知人友人による犯行、知人友人から情報を得た第三者による犯行、そして流しによる犯行という3つの可能性を検討した。この中で、もし知人や友人関係者による犯行であれば、警察はすでに捜査を進展させているだろう。

捜査に大きな進展が見られない状況を考えると、流しによる犯行であればA氏宅に多額の金品があると判断するのは難しいため、犯人は知人や友人から情報を得た第三者である可能性が高いと推測できる。

上記の説に加え、A氏夫婦が執拗な攻撃を受けた事実を考慮すると、A氏夫婦に一方的な「妬み」や「恨み」を抱いた人物Yが、実行犯Xに対してA氏宅の生活状況や間取り、防犯状況、犯行に使える梯子や建築関係の道具の有無などを伝え、金品強奪を企てた可能性が高いと推論できる。

実行犯X(複数犯の可能性もある)は、Yからの情報を得てA氏宅に侵入した。しかし、A氏の抵抗に遭い、A氏に攻撃を加えて致命傷を負わせた後、B氏にも攻撃を加えた。B氏はさらに激しく抵抗したため、実行犯は執拗にB氏を攻撃し、結果的に夫婦ともに命を奪う形となった。

以上の考察は、あくまでも個人的な推測と推理に基づくものであり、事実を断定するものではない。事件の全容解明には引き続き慎重な捜査が必要であり、公表された情報に基づいて今後の進展を見守る必要がある。


◆参考資料
朝日新聞2018年1月2日付 
毎日新聞2018年1月3日付
朝日新聞2018年1月5日付
茨城新聞2018年1月7日付
読売新聞2018年1月12日付
読売新聞2018年9月21日付
中日新聞2018年9月22日付 
読売新聞2018年12月26日付
中日新聞2018年12月28日付
朝日新聞2018年12月31日付 
フジテレビ『イット!』2024年4月23日


◆平成の未解決殺人事件


Jean-Baptiste Roquentin運営者

投稿者プロフィール

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。
Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。
小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。
分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。

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