渋谷通り魔事件(15歳の女子中学生による犯行)から考察する無差別殺傷事件

小学生、中学生、高校生の自殺統計

「令和2年度 小・中・高等学校から報告のあった自殺した児童生徒数は415人(前年度317人)で,調査開始以降,最多となっている(引用:令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要)」

また、自殺した児童などの自殺の理由は、「家庭の不和」が一番多く、小学生の自殺者の自殺理由には「友人関係(いじめを除く)」「いじめ」などの理由が並んでいる。

このことから、大人が作り用意した「家庭」「学校」という「場」のなかで子供達は悩みを抱え、その悩みを大人が積極的に解決などできない状態があったと推察される。

(ネットを含む)メディアなどでは、コロナ過が要因となり自殺者が増加したなどの意見が散見されるが、日本の子供の自殺者が増えている要因はコロナだけであろうか。日本の社会システムに要因があり、子供達が生きることを諦め、さらに他人を巻き込む拡大自殺(無差別殺傷事件)などを起こすのではないか(当然だが自殺や犯罪の原因は複数ある。そして、その原因にメンタル面の疾患など心の問題が関係していることは各種の統計からもわかる)

さらに、日本の子供達の意識をみてみよう。

自己肯定感統計

以下の図表は、2014(平成26)年に内閣府が実施した「平成26年版 子ども・若者白書」(平成25年11月から12月の間に日本、韓国、アメリカ、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン各国のそれぞれ1000人以上の満13歳から満29歳までの男女が回答した「(1)人生観関係(2)国家・社会関係(3)地域社会・ボランティア関係(4)職業関係(5)学校関係(6)家庭関係」の回答)の抜粋である。

自己肯定感「日本の若者は諸外国と比べて、自己を肯定的に捉えている者の割合が低く、自分に誇りを持っている者の割合も低い。」画像は「次のことがらがあなた自身にどのくらいあてはまりますか。」との問いに対し、「私は、自分自身に満足している」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。出典:平成26年内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」

社会規範「日本の若者は、諸外国の若者と同程度かそれ以上に、規範意識を持っている。」 (注)「あなたは次のことについてどう思いますか。」との問いに対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。出典:平成26年内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」

自らの将来に対するイメージ「日本の若者は諸外国と比べて、自分の将来に明るい希望を持っていない。」 (注)「あなたが40歳くらいになったとき,どのようになっていると思いますか。」との問いに対し、「幸せになっている」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。出典:平成26年内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」

意欲「日本の若者は諸外国と比べて、うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組むという意識が低く、つまらない、やる気が出ないと感じる若者が多い。」 (注)この1週間の心の状態について「次のような気分やことがらに関して、あてはまるものをそれぞれ1つ選んでください。」との問いに対し、「つまらない、やる気がでないと感じたこと」に「あった」「どちらかといえばあった」と回答した者の合計。

なお、「心の状態」に対する意識調査の結果概要は以下のとおりであり、日本の若い世代は他の国の若い世代よりも「悲しい」「憂鬱」などネガティブな心理状態を持つ者が多いことがわかる。

心の状態「日本の若者は諸外国と比べて、悲しい、ゆううつだと感じている者の割合が高い。」
平成26年内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」内閣府 特集今を生きる若者の意識~国際比較から見えてくるもの~から抜粋作成

同調査から、日本の子供を含む若者世代の社会規範は比較対象各国と同等またはそれ以上だが、自己肯定感や意欲が低く、将来に対する不安が大きいことがわかる。

日本社会は他人に迷惑をかけたくない、恥をかきたくないなどの気持ちから規範意識が高い社会だと思われるが、自己肯定感や意欲が低く、将来に対する不安を持つ子供たちの多い社会でもある。自殺や「渋谷通り魔事件」のような死刑になりたい拡大自殺が増える可能性が考えられる社会だ。

「無敵の人(失うものがない人。何も持っていない人)」は、就職氷河期の大人だけではない。「家庭」「学校」など大人が用意した「場」が整っていない(家庭不和、育児放棄、教師の無関心など)と――「無敵の子供(失うものがない人。何も持っていない人)」が生まれてしまうかもしれない。 「渋谷通り魔事件」は、異質な「少女A」が犯した(事実認定はされていないが)犯罪なのだろうか――社会を構成する大人達に反省すべき点はないのだろうか。

無差別殺傷事件に限らず、事件は社会のなかで起こるのだから。

【追記 2022年9月11日】
2022年9月9日、東京地検は、逮捕された「少女A」を殺人未遂の非行内容により家庭裁判所に送致し、家庭裁判所は14日間(2週間)の観護措置を決定(参考:中3少女を家裁送致 渋谷母娘刺傷―東京地検 時事ドットコム2022年9月9日19時48分配信)し、同日、警視庁は正当な理由がなく3本の刃物を所持した銃刀法違反の嫌疑で追送検している(参考:親子2人切りつけ事件 逮捕の中学3年女子生徒を家裁に送致 NHK首都圏WEB 2022年9月9日 17時13分配信)

今後は、家庭裁判所調査官による生活状況、家庭内の状況、交友関係などの調査が実施され、その結果を受けた裁判官が少年審判の有無(保護処分など)や検察官送致(逆送)を決定する。

少年事件手続き概要 出典・引用:法務省HP

なお、法務省のHPによれば「原則逆送対象事件」は、「16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」及び「18歳以上の少年(特定少年)のとき犯した死刑,無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件(改正少年法により追加)」である。

また、「刑事処分の対象年齢を「16歳以上」から「14歳以上」へと引き下げた改正少年法が施行された平成13年以降の15年間で、刑事処分が相当として家庭裁判所から検察官送致(逆送)された14、15歳の少年は全国で17人にとどまっていたことが27日、最高裁への取材で分かった。16〜19歳では逆送が原則とされる殺人や傷害致死の非行内容であっても、14、15歳では逆送の割合が1割に満たないことも判明した(後略)(引用:14、15歳の逆送はわずか17人 殺人、傷害致死でも1割に満たず…改正少年法施行後の15年 産経WEST 2017年5月28日 07:25配信)」といわれ、「少女A」に対する今後の処分の行方が非常に気になる。


★参考資料
「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」
「内閣府 特集今を生きる若者の意識~国際比較から見えてくるもの~」
「NHKスペシャル『なぜ一線を越えるのか無差別巻き込み事件の深層』」
「無差別殺傷事犯に関する研究」

中3容疑者「塾」と偽り外出か 学校は不登校気味 渋谷母子刺傷事件 朝日新聞2022年8月22日付など


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投稿者プロフィール

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。
Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。
小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。
分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。

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