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『星の子』映画・小説の考察と感想

『星の子』映画・小説の概要

★ご注意:この記事には、小説・映画『星の子』のネタバレが含まれています。

動画は流れ星。見つかりましたか?

映画『星の子』は、第39回の野間文学賞新人賞を受賞し、第157回芥川賞候補となる今村夏子の小説をもとに製作され2020年10月に公開された大森立嗣監督、芦田愛菜主演の作品である。

大森立嗣監督の作品には、実際の事件をモチーフにした2020年7月公開の『MOTHER マザー』(参考:映画『MOTHER マザー』と2014年の埼玉県川口市祖父母殺害事件)や実際の事件(秋田児童連続殺害事件)から着想の一部を得たと思われる2008年公開の『さよなら渓谷』などの作品がある。

大森立嗣監督は、特異な状況下の親と子、家族を描きながら親と子の普遍的な関係とその基盤にある親子双方の愛着や愛情などをテーマに重厚な作品を作り続ける現代日本映画界を代表する監督の1人だ。

また本作の主演芦田愛菜の表現力は素晴らしい。カルトと家族と思春期の「普通の少女」の「普通の日常」を描いた重いテーマの本作品の主人公「ちひろ」を多面的で魅力的な「ちひろ」に昇華させ、飾らない文体の一人称で書かれた原作主人公「ちひろ」の「素直な思春期の少女」のイメージを見事に表現している。 なお他の出演者は父親役に永瀬正敏、母親役に原田知世、母親の弟「雄三おじさん」に大友康平、「ちひろ」が憧れる教師「南」に岡田将生、これも「ちひろ」の憧れ的な存在の教団の幹部信者「海路さん」「昇子さん」のカップルに高良健吾、黒木華などの素晴らしい俳優陣が名を連ねている。

『星の子』映画・小説 あらすじ

主人公の「ちひろ」は、損保会社に勤務していた父親と専業主婦の母親と5歳年上の姉の林家の次女として生を授かる。産まれた当初の体重は標準を下回り、「三カ月近くを保育器のなかで過ごした(引用:今村夏子. 星の子 (朝日文庫) (p.6). 朝日新聞出版. Kindle 版.)。

幼いころの「ちひろ」は身体が弱く、湿疹、中耳炎、発熱、胃腸炎などさまざまな症状に「ちひろ」自身も、そして、両親や姉も苦しめられる。

苦痛から泣き叫ぶ幼子の姿をみて心を痛めない親はいないだろう。「ちひろ」の両親は我が子を苦痛から救い出すため病院の治療や民間療法などを試すが――症状の改善はなかったようだ。

そのような林家の苦悩を「たまたま聞いた」のは父親の会社の同僚(落合さん)だ。

「落合さん」は、「ちひろ」の苦痛の原因は水だという。水が悪いので水を変えたほうがいいといい、『金星のめぐみ』という特殊な力を持つ水で「ちひろ」の身体を浄化させることを自然な振る舞い(アガペーの愛と奉仕の精神なのだろう)で提案する。

この特殊な力を持つ『金星のめぐみ』との出会いが林家の世界を一変させ、林家の世界の中心には『金星のめぐみ』を販売するカルトが鎮座する。カルトの重力に引き付けられた他の信者家族の世界と同様に林家の両親はカルトに引き付けられ、引き込まれたようだ。

その後、林家には姉の弟(雄三おじさん)と「ちひろ」の姉による「水入れ替え事件」などがあるが、カルトの重力は既に両親の価値観など全てを飲み込み、その家族を心から愛し、愛されたいと無意識に思う、二人の子たちもその重力に贖うことはしない。 小説・映画『星の子』は、「安倍晋三元総理銃撃事件」で注目されているカルト2世の物語だが、親子の普遍的な愛、愛着を扱っている。

特異な環境を設定された物語の表皮を剥いていくと普遍的なテーマの芯が現れる。これこそが名作だ。

3つの世界で生きる「ちひろ」

『星の子』のなかで描かれる主人公「ちひろ(ちーちゃん)」の世界は3つの世界から成り立っている。一つは父親、母親、姉との家族という世界。もう一つは小学校、中学校の世界。さらにもう一つは両親が信仰する教団が作り出す世界。

もちろんだが、この3つの世界の中心は家族の世界だ。

「家族の世界」は不思議である。(基本的に)子(私)は、生まれ落ちた瞬間にその世界に所属し、子(私)が幼少期の頃は、自分の力だけでその世界を変えることはできない。反抗期を迎えた「ちひろ」の姉(まーちゃん)は、リストカットや家出を繰り返し、いつの間にかほぼ音信不通となるが、自身に子ができたことを手紙で両親に伝える。両親と縁を切り、妹と縁を切り、「家族の世界」から離脱し、新たな世界を見つけたはずの姉なのだが、やはり「家族の世界」の一員なのだ。

この3つの世界のなかで「家族の世界」と「学校の世界」の住人は基本的に善良な人間だ。

父親も母親も姉も「水入れ替え事件」の姉の弟(雄三おじさん)夫婦やその子も善良な人間だ。方向性や手段は違うがそれぞれ、自分自身と家族、親族の幸福を願っている。

だが、両親の「奉仕と愛」の精神の対象は、いつの間にか「ちひろ」や自分自身などの「家族の世界」から離れ、教団やその信徒に向かう。他者への「愛と奉仕」の精神は両親の存在理由になってしまったようだ。

「学校の世界」の住人たち(「なべちゃん」など)は、時に教団を信じる信者たちは「誰かが誰かに騙されている」などの遠慮ない質問的な言葉を発するが、そこに悪意は感じられず、子供らしい善良さで「ちひろ」との関係を構築し関係を継続する。そこには、教団の教え、教団の世界とは無関係な「子供同士の世界」が自然な形で広がっている。

彼(女)らは「ちひろ」が悲しめば一緒に悲しみ、ちひろが笑えば一緒に笑い、好きな男の子の会話で盛り上がり――それは、思春期の「ちひろ」にとって非常に大切な「世界」だ。

「両親が信仰する教団が作り出す世界」は複雑な世界でもある。この世界は、この世界の言葉を信じ、この世界のために生きる信者たちには「楽園」のような世界の筈だが、「ちひろ」が尊敬するその「楽園」の幹部信者「海路さん」「昇子さん」などには「詐欺的な手法の噂」「監禁などの噂」「リンチなどの噂」などが付き纏う。

またこの世界には完全な平等性はなさそうだ。幹部信者「海路さん」「昇子さん」や「ちひろ」の父親を教団に入信させた「落合さん」の家は大きく、引っ越しのごとに家が小さくなる末端信者と思しき「ちひろ」家とは違うようだ。

「ひちろ」にはこの3つの世界のなかで「学校の世界」「両親が信仰する教団が作り出す世界」の2つの世界にまたがる友人(知人)が2人いる。

同学年の「春ちゃん」と「落合さん」の息子「ひろゆきくん」だ。何事にも消極的で「教団の世界」や「学校内の世界」にもなじめない「春ちゃん」の変化や「両親」のために詐病する「ひろゆきくん」とその詐病に気づかないふりをする「ひろゆきくん」の両親との関係は、「ちひろ」を含めむすべての子と家族の関係に共通する普遍的なテーマだともいえるだろう。

映画『星の子』の家族・親族の世界の主な人物映画『星の子』の学校の世界の主な人物映画『星の子』の教団の世界の主な人物
ちひろの父なべちゃん(親友)海路さん(父は教団執行部長)
ちひろの母新村くん(なべちゃんの彼)昇子さん(祖母が教団祈祷師)
ちひろの姉はるちゃん(信者かつ同学年)落合さん夫婦
母の弟(雄三おじさん)南先生(憧れの先生)ひろゆきくん(落合夫婦の子)
『星の子』映画・小説の考察と感想(資料)3つの世界の主な人物

『星の子』の結末

年に一度、12月の週末に行われる『星々の里』と名付けられた教団の大規模施設での全国集会。参加者は教団が用意した複数のバスに分乗し、泊まり込みでの集会に参加する。中学3年生になった「ちひろ」は、初めて両親とは別の10代-20代の多いバスに乗り、両親とは別の部屋に宿泊する。

生まれて初めて「家族の世界」から離された「ちひろ」に大きな不安が襲い掛かる。それは両親と「一生あえなくなるかもしれない(参考:今村夏子. 星の子 (朝日文庫) (p.163). 朝日新聞出版. Kindle 版.)」不安だ。やはり、今はまだ「ちひろ」は「家族の世界」の住人だ。15歳の少女の優しく包み込んでいる「家族の世界」の住人なのだ。

その不安で心が落ち着きを失いかけたとき、「ちひろ」の前に母親が現れ、「ちひろ」を散歩に誘う。親子3人で「流れ星」を見に行こうという提案だ。

親子3人は「流れ星」を見つけるため満天の星空を眺める。同じ時間、同じ場所で星空を眺める。


ほぼ毎年、12月初め頃から中頃の間には、ふたご座流星群を見ることができる。「多くの流星が見られるという点では、年間最大の流星群と言えるでしょう。条件の良いときに熟練した観測者が観測すると、1時間に100個程度の流星を数えることは珍しくありません。(引用:国立天文台HP)」これからの人生のなかで「ちひろ」や我々は流れ星をいつく見つけることができるのだろうか?

写真はふたご座流星群の明るい流星(約マイナス3等)と月明かりに照らされた富士山。2021年12月15日2時25分、山梨県富士河口湖町にて撮影。(クレジット:佐藤 幹哉(国立天文台))国立天文台広報ブログから


そして、家出した姉も夜空を眺めているかもしれない。彼女と生まれた子とその父親(未婚かもしれない。または、別れてしまったかもしれないが)も「流れ星」を見つけようとしているかもしれない。

その「流れ星」も両親が見つけた「流れ星」や「ちひろ」が見つけた「流れ星」とは見え方、見えた時間、見えた方角などが違うかもしれない。

父親と母親が見つけた「流れ星」を「ちひろ」は見ていない。「ちひろ」が見つけた「流れ星」を両親は見つけられない。

人それぞれに見える「流れ星」は違うだろう。だが、それでいい。みなが同じ「流れ星」を見つける必要はない。同じ「流れ星」を一緒に見ようとすることが大切だ。

物語の途中、教団幹部の「海路さん」「昇子さん」は、自分の意思で見ようとしても見えないものは見えない。「すべては宇宙の意のままに」(引用:今村夏子. 星の子 (朝日文庫) (p.41). 朝日新聞出版. Kindle 版.)と言っていたが、「ちひろ」家族は「その夜、いつ までも星空を眺めつづけた。(引用:今村夏子. 星の子 (朝日文庫) (p.173). 朝日新聞出版. Kindle 版.)」

映画『星の子』のラストシーンは、この星空を映し続けている。


★参考文献
『星の子』今村夏子著,(朝日文庫)2019,

映画『星の子』公式サイト


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Jean-Baptiste Roquentin

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。 Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。 小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。 分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。