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映画『コミック雑誌なんかいらない!』から考察するマス・メディアと視聴者とネット・SNS時代

ご注意:この記事には、映画『コミック雑誌なんかいらない!』のネタバレが含まれています。

内田裕也(1939年11月17日-2019年3月17日)脚本、主演の『コミック雑誌なんかいらない!』は、1985年に製作、86年に公開されたゲリラ撮影手法を使うドキュメンタリー調の映画である。

映画『コミック雑誌なんかいらない!』は、マス・メディアと大衆、商品としての情報の送り手(マスコミ)と情報を受け消費する大衆(視聴者)の共犯関係、共依存関係を不良の眼と反骨精神を持つ内田裕也の視点と感性から炙り出している。

映画が撮影された1985年、公開された86年は、戦後の日本の分岐点だった。現在の日本が抱える多くの諸問題は、映画が撮影された1985年から始まったと言っても過言ではないだろう。 時代は流れ、マス・メディアの影響力が低下したと指摘される現在だが、送り手と受け手の共犯関係・共依存関係はネット社会・SNS社会のなかでさらに強化され、エコーチェンバーとフィルターバブルにより過激化しているともいえる。

昭和の時代から平成の時代を生きた不良・内田裕也。知的な内田裕也。唯一無二のロッカー内田裕也。カウンターカルチャーの背景を持つ内田裕也とアンダーグラウンドカルチャー/成人映画出身の滝田洋二郎監督が創り出した傑作映画『コミック雑誌なんかいらない!』からマス・メディアと視聴者、そして、ネット・SNS時代の映画『コミック雑誌なんかいらない!』の意義などを考察していこう。

概要

『コミック雑誌なんかいらない!』は、内田裕也が脚本を書き主演した映画である。内田裕也は、架空のTV局『東和テレビ』の芸能レポーター「キナメリ」に扮し、1985年に起きた実際の事件・事故、話題の芸能ネタ・風俗・社会現象を取材する。

『コミック雑誌なんかいらない!』は、バブル景気直前の1985年の日本社会を記録した貴重なドキュメンタリー映画であり、マス・メディアの報道姿勢やTV局と芸能リポーターが発信する「ネタ」を消費する視聴者の在り方に一石を投じる社会派映画でもあり、カンヌ映画祭監督週間に招待され海外で非常に高い評価を得た映画でもある。

ニューヨークタイムズ1987年1月11日付 映画『コミック雑誌なんかいらない』

特に秀抜な場面は、山口組と一和会の抗争事件を実際に取材する場面とロス疑惑の渦中の人物三浦和義との対決場面だろう。抗争中の山口組本部と一和会関係事務所に赴きゲリラ的な撮影を敢行したため、作品中には実在の暴力団関係者も登場する。

内田裕也は、撮影当時の様子を、警察に追われ、暴力団にも追われ、怖い思いをした。暴力団に出演料を払おうと思ったが、(悪意からではなく)断られた。山一戦争の場面をセットではなく、現地で撮影することに意義があったなどと、2001年発売の『コミック雑誌なんかいらない デラックス版』に収録のインタビューで語っている。

なお、映画『コミック雑誌なんかいらない!』には、オリジナル版(公開時の版)と「日本航空123便墜落事故」現場シーンがカットされたインターナショナル版(通常版)がある。

オリジナル版(2001年発売のデラックス版DVDに収録されている)の「日本航空123便墜落事故」現場の取材設定場面は、キナメリの苦悶を象徴的に表現する重要な場面である。また、前述の内田裕也インタビューには、平衡感覚と知性を纏った常識人内田裕也の顔が記録されている。

主演は内田裕也の交友関係の広さを想像させる豪華な顔ぶれだ。主な出演者と役柄を以下に記す。

ビートたけし金城商事会長刺殺犯役
原田芳雄東和テレビのプロデューサー役
郷ひろみホストクラブのナンバーワンホスト役
片岡鶴太郎ホストクラブのホスト役
桑名正博桑名正博役
安岡力也安岡力也役
嶋大輔嶋大輔役
桃井かおり桃井かおり役
逸見政孝逸見政孝役(日本航空123便墜落事故の臨時ニュースを伝えるアナウンサー)
横澤彪横澤彪役(フジTVのプロデューサー)
三浦和義三浦和義役
映画『コミック雑誌なんかいらない!』主な出演者一覧

あらすじ

I can’t speak fucking Japanese.

映画『コミック雑誌なんかいらない!』

早稲田大学政治経済学部卒業し、ウォーターゲート事件(1972年発生したCIAによる民主党本部への侵入・盗聴事件。同事件の影響により第37第アメリカ大統領リチャード・ニクソンが辞任した)の真相に迫ったワシントン・ポスト紙のジャーナリスト、ボブ・ウッドワードとカール・バーンスタイン(「ウォーターゲート事件」と2人のジャーナリストの活躍は、1976年日本公開の『大統領の陰謀,監督アラン・J・パクラ,出演, ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン』で描かれている)を敬愛する「東和テレビ」のキナメリは、日々、芸能人のスキャンダル、話題の事件などを追いかけ、突撃取材を敢行する芸能レポーターだ。

映画『コミック雑誌なんかいらない』チラシ表面
映画『コミック雑誌なんかいらない』チラシ裏面

週刊文春の『疑惑の銃弾』により火がついた三浦和義氏の「ロス疑惑」、1985年8月12日に発生した「日本航空123便墜落事故」、山口組と一和会の「山一抗争」などの事件ネタから、松田聖子と神田正輝の結婚ネタ、桃井かおりの交際ネタ、嶋大輔やロック関係者のスキャンダル(桑名正博、安岡力也、嶋大輔などが出演)ネタ、過激化する風俗業(男性向け性風俗、女性向けホスト業、女性向け出張ホスト業が描かれている)ネタ、東南アジアからの出稼ぎ女性(ジャパゆきさんと暴力団)ネタ、社会現象となり以降に続く未成年芸能人グループ・ブームの火付け役「おニャン子クラブ」への取材、遺族から怒りを買いながらも女子中学生の葬儀への突撃取材、ゴールド(金)の先物取引を装った詐欺により多くの被害者を生んだ「豊田商事事件」と報道陣の居るなか刺殺された「豊田商事会長刺殺事件」(1995年には、オウム真理教の実質ナンバー2の村井秀夫がTVカメラの前で刺殺される事件が起こる)をモチーフにした「金城商事事件」と「会長刺殺事件」――。

自宅マンションのローンを抱えるキナメリは、理想と現実のなかでもがき、同僚などからは、「芸能レポーターに半端な知性はいらない」と揶揄されながらも自分は国民の代表だと自分に言い聞かせ、日々の過酷な仕事にこなしていくが、「日本航空123便墜落事故」の悲惨な現場や助けを求める外国人女性(ジャパゆきさん)の前にしながらも何も出来ない無力さを感じるキナメリの目には空虚な絶望が映っているようだ。

しかし、ジャーナリズムや調査報道に対する気持ちを持ち続けるキナメリは、日々の突撃レポート、体験レポートと並行しながら、ゴールド(金)の先物取引業者「金城商事」の疑惑を追い始め、企画を上司などに伝えるが、視聴率が取れないなどを理由に企画は黙殺され――報道陣に埋め尽くされた「金城商事」会長の潜伏先マンションで大事件がおこる。前代未聞の大事件に突撃レポーターとして居合わせたキナメリの行動は?取材対象となったキナメリの言葉は?「キナメリ」とは誰なのか?我々か?

「一億総白痴化(テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると人間の想像力や思考力を低下させてしまう)」と言われて久しい「現在」だからこそ視聴したい映画である。

時代背景 現在日本の原点1985年

映画『コミック雑誌なんかいらない!』が撮影・製作された1985年(公開1986年)は、現在の日本に在る幾多の諸問題の原点となる年ともいわれている。映画『コミック雑誌なんかいらない!』で扱われる実際の事件・事故・芸能ニュースなど1985年の出来事を振り返りながら、現在日本社会の原点を再確認していこう。

1985年の日本の内閣総理大臣は、第71-73代総理大臣(在任期間1982年11月27日 – 1987年11月6日)中曽根康弘(1918年5月27日-2019年11月29日)、米国大統領は、共和党から選出された第40代(1981年1月20日-1989年1月20日)ロナルド・ウィルソン・レーガン(1911年2月6日-2004年6月5日)、英国の首相は第71代(1979年5月4日-1990年11月28日)「鉄の女」の異名を持つマーガレット・サッチャー(1925年10月13日-2013年4月8日)だった。

レーガン大統領のレーガノミクス、サッチャー首相のサッチャリズムは、小さな政府と公営事業の民営化を推し進め、所謂「小さな政府」が、英米の経済政策の軸となり、日本も中曽根総理政権下で鉄道など公営事業の民営化が進む。

激化する米ソ冷戦のなか、レーガン大統領は国防費を増加させながらソ連を力で押し込め、日米貿易摩擦の解消を理由に日本に圧力をかける。

1985年1月31日、中曽根康弘総理が、衆議院予算委員会で防衛費の対GNP(国民総生産。1993年からはGDP=国内総生産が指標として使用されるようになるが大きな差はない)1%突破の可能性を述べる(岸田総理が総合的な防衛費を2027年度にはGDP2%に増額する措置を講じるよう指示を出したのは2022年11月28日)

1985年9月にはプラザ合意が結ばれ、円高が急激に進む。プラザ合意は、日本のバブル景気からバブル崩壊さらに失われた10-30年の大きな要因の一つとなり、現在の日本社会に大きな影を落としている。

1985年2月13日「改正風俗営業法施行」、4月1日「日本電信電話公社」、「日本専売公社」の民営化、5月7日「男女雇用機会均等法成立」、8月15日「中曽根康弘首相が靖国神社公式参拝」、9月22日「プラザ合意」、翌年(1986年)12月、日本はバブル景気に突入。

1985年は戦後の高度経済成長や極左集団らによる闘争の時代を経た日本人の価値観、生活様式などが大きく変化した原点の年だともいえる。

また、現在の日常生活のなかで意識される「コンプライアンス」(「法令遵守」と訳されるが、本来は「要請・要求に応える」等の意味)という言葉が報道に登場するのは確認した範囲で1987(昭和62)年だった。

ココムなど法規守るよう東芝が手引きづくり 米の手法がお手本 東芝機械のココム違反事件に関連して「コンプライアンス・プログラム」という耳慣れないことばが登場して来た。直訳すれば「順守計画」。事件再発防止を目的に、ココム規制や国内法規に違反しないよう、子会社に慎重な行動を徹底させるために、親会社の東芝が検討を始めたマニュアル(手引き)のことだ。 企業グループとしての力を評価する米国では一般的なものだというが、日本ではなじみが薄い。親の責任を問われた東芝も、米国にならって、子のしつけに乗り出した。 米国企業では人事管理から経理、営業まで、書かれた通りにやれば、それなりの仕事ができるマニュアルづくりが盛ん。様々な能力の人が、会社の間を移ることの多い企業風土の産物だ。コンプライアンス・プログラムは、こうしたマニュアルの法規版といえる。ココム規制に違反しないためのダブルチェックの方法や、意思決定にミスをなくすための方策など。米国では、これに違反した子会社があれば、その子会社の社長の首が飛ぶほど厳しいものだ。  東芝では、米国で吹き荒れている東芝制裁の動きを沈静化するために、米国でなじみのあるコンプライアンス・プログラムを厳密につくって、事件再発防止をめざす意思のあかしにしたい考えだ。そのために、米国でモデルになるようなコンプライアンス・プログラムを持つ企業を探し出して、プロジェクト要員を送り込み、徹底して研究、東芝版マニュアルづくりの参考にするという。青井舒一社長は「こうした地道な対策こそが、米国に評価されるはず」と、期待をかけている。

朝日新聞社 1987年7月16日付

上記の報道は、1987年に発生した「東芝機械ココム違反事件」に関する記事である。同事件は、東芝機械(現:芝浦機械株式会社)が旧ソ連に工作機械などを輸出(対共産圏輸出統制委員会:Coordinating Committee for Multilateral Export Controls; COCOM:ココム違反)し、同工作機械が旧ソ連の潜水艦技術(潜水艦のスクリュー)に利用された公安事件(警視庁公安部外事課が担当したと思われる外国為替及び外国貿易法違反事件)であり、日米の間の政治問題に繋がる事件である。

世界第2位の経済大国1980年代の日本は、米国の脅威だった。「日米貿易摩擦」「プラザ合意」「ココム違反事件」「スーパー301条」――米国から日本への様々な圧力が顕著になる。

「コンプライアンス」という言葉は、バブル崩壊後(1990年代)の大手金融機関の破綻、破綻に伴う不正、不祥事の発覚、公的資金の注入などを契機に社会に溢れる出す。それは、「法」が「倫理」の基準となる思考停止の時代の到来だともいえる。

不良・内田裕也の凄み

前述のとおり、映画『コミック雑誌なんかいらない!』の主人公キナメリは、早稲田大学政治経済学部卒業し、ウォーターゲート事件の闇に迫ったワシントン・ポストのジャーナリストを尊敬する社会派、知性派であるが、時折、不良の目つき、顔つきが現れる。

それは、三浦和義との対決の場面であり、松田聖子と神田正輝の結婚式から追い出せる場面であり、ロック関係者のたまり場で桑名正博や安岡力也から絡まれる場面であり、暴力団から暴行を受けるジャパゆきさんを助けることが出来ない場面である。

不良とはなんだろうか?不良とは「弱きを助け強きを挫く」の任侠の精神に通じるのではないだろうか?(これは、マルクス的な二元論、階級闘争論の話ではない)不良をそう定義するなら、映画『コミック雑誌なんかいらない!』のキナメリは不良になりきれない自分に不満を持ちながらも不良に拘る人間だということになる。

力の弱い事務所の芸能人は叩き、力の強い事務所の芸能人は叩けない。桑名正博や安岡力也の言葉は、内田裕也=キナメリ自身の言葉だろう。弱い者を叩くのと同じように強い者も叩け。ジャーナリズムに求められるのは不良の精神なのではないのか?映画『コミック雑誌なんかいらない!』は、不良・内田裕也からのジャーナリズムや社会に対する強烈なメッセージだといえるかもしれない。

三浦和義VS.マス・メディア・消費者

映画『コミック雑誌なんかいらない!』の見どころの一つは、ロス疑惑のさなか(逮捕報道も映し出される)の三浦和義の出演だろう。

内田裕也は、2001年に発売された『コミック雑誌なんかいらない デラックス版』に収録されているインタビューのなかで、三浦和義との会話には台本がなかったこと、キナメリ(内田裕也)と三浦和義の対決がアドリブだったことを告白している。

加熱するマス・メディアの報道のなか、三浦和義の人権は消費される。三浦和義という一人の人間が、「三浦和義」というキャクターになり、大衆の興味、関心、嘲笑、怒り、娯楽の「対象」として消費される。

内田裕也演じるキナメリは、胡散臭いジャーナリストの使命感を持ち出しその場を取り繕い、マスコミは国民の代表と言いつつ、三浦和義にマイクを向ける。それらに対する三浦和義の「商業主義」「コマーシャリズム」「面白ければいいだけ」「マスコミは検察官か?裁判官か?」「芸能レポーターが視聴者(国民)の代表などというのは自惚れだ。僭越だ」などのマスコミ評は非常に痛快で重要だ。

台本のない三浦和義VS.キナメリの場面。三浦和義と内田裕也の表情は真剣そのものである。三浦和義VS.キナメリの場面は、三浦和義VS.マス・メディア・消費者、消費される人間VS.消費する人間の構図となり、現在社会でも大きな問題となっている。

三浦和義VS.キナメリの本気のぶつかり合いは、マス・メディアと消費者、情報送信者と情報受信者、ジャーナリズムと国民の権利などにある普遍的な問題を記録した貴重なドキュメンタリー映像だともいえるだろう。

ネット・SNS時代の『コミック雑誌なんかいらない!』

映画『コミック雑誌なんかいらない!』には、『オレたちひょうきん族』(1981年5月16日~1989年10月14日)など手掛け、フジテレビの年間視聴率3冠、4冠達成を牽引したプロデューサー横澤彪氏(1937年12月15日-2011年1月8日)が登場する。

横澤彪氏は、TVは視聴者(国民)の身近な存在であり、国会中継、プロレス、お笑い番組、芸能人の結婚の話題などが脈絡なく飛び出す「魔法の箱」だなどと語り、「番組をヒットさせるコツ」を披露する。

だが、「魔法の箱」の影響力は、1990年代半ばのインターネットの普及により、創成期から80年代までの勢いを失ってしまう。1996年から2006年までの10年間で、「インターネット上の様々な情報にアクセスできる状態で提供された情報の総量」は、531倍(出所:総務省平成18年度「情報流通センサス報告書」)となり、インターネット利用時間は、2012年から2020年の9年間で2.3倍に増加し(出所:総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」)、SNSの利用者も4,965 人(利用率52.0%)の2012年から2018年の利用者は7,486人(利用率74.7%)に増加(出所:株式会社ICT総研「2016年度SNS利用動向に関する調査」など)している。

「魔法の箱」は、TVからPC・スマートフォン・タブレットにその座を明け渡し、PC・スマートフォン・タブレットの「魔法の箱」からは、アルゴリズムにより提供される多くの文字情報、画像情報、動画情報が飛び出す時代となった。

さらに、誰でも情報を発信できる時代となり、誰もが既存の「メディア」の役目を担うことができる時代となる。エコーチェンバーとフィルターバブルが利用者=消費者の価値観を囲い込み、囲い込みの外の者や対立者を徹底的に叩きのめす風潮も顕著になる。そう、誰もが「キナメリ」になれる時代、誰もが三浦和義や報道陣が見守るなか殺害された豊田商事の永野会長になるかもしれない時代となった。

知る権利や表現する権利は、人権の重要項目だ。だからこそ、不良の精神=内田裕也の映画『コミック雑誌なんかいらない!』を意識することが必要なのかもしれない。


★参考文献
総務省平成18年度「情報流通センサス報告書
総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
株式会社ICT総研「2016年度SNS利用動向に関する調査
「ココムなど法規守るよう東芝が手引きづくり米の手法がお手本」 朝日新聞社 1987年7月16日付


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Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。 Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。 小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。 分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。