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東電OL殺人事件 真犯人を考察する

本記事は「東電OL殺人事件の真犯人を考察する」目的の記事です。

被害者A氏、冤罪被害者B氏及び関係者の氏名を匿名で表記します。

事件や関係者の匿名化は事件や被害者を血の通わない「記号」にすることにも繋がりますが、当該事件が非常に有名な事件であるため、既に多くの先人が被害者A氏や冤罪被害者B氏の人物像などを分析、考察、紹介などしています。「人間」被害者A氏や「人間」冤罪被害者B氏の詳細は、それらの書物、記事、論文などをお読みください。

なお、文末に本記事の参考、引用文献リストを記す。

本記事での表記一覧
被害者A氏(当時39歳の女性)
冤罪被害者B氏(ネパール国籍の当時30歳男性)
C氏(A氏の常連客。事件当日も被害者A氏と会っている)
D氏(A氏の「定期入」に入っていた定期券の持ち主。当時、埼玉県在住の男性)
E氏(風俗店のサンドイッチマン男性。事件当日の目撃証言者)
F氏(事件当時の目撃証言者。当時20代前半の男性)
X(真犯人)
本記事での表記一覧

東電OL殺人事件 事件概要

1997(平成9)年3月8日土曜日23時頃から翌日9日の午前0時頃、東京都渋谷区円山町のアパートの空室で39歳の女性が犯人Xにより殺害された。

事件当時の東京の最高気温は15.7℃、最低気温は9.1℃(最高気温は1997年3月8日土曜日の9~21時まで。最低気温は8日21時~翌日9日の9時までの気温)だった。

電気、ガス、水道が止められていた(参考:佐野眞一. 東電OL殺人事件(新潮文庫) (p.49-50). 新潮社. Kindle 版.)空室のアパートの一室は寒かっただろう。A氏とXは寒さのなか、一瞬の欲望と金額不明の金銭の交換のため同室に入ったのだろうか――

犯人Xが未逮捕な現在――Xに殺意が芽生えた瞬間が「いつ」なのかは不明だが、A氏の胸部や陰部などからはXの唾液由来と推認されるDNAが検出されたため一連の行為の後にXはA氏を殺害したと判断できる。

遺体で発見されたA氏の着衣に乱れはなく争った形跡もなかった(参考:読売新聞社会部.東電OL事件- DNAが暴いた闇.2012(中央公論新社)(p.54))といわれている。また、靴は部屋の玄関に並び揃えられていた。

寒々しい部屋の中に置き去りにされたA氏の遺留品は、把手のちぎれたショルダーバック、バックの中の小銭を残し紙幣だけを奪われたと推認される財布、化粧品及び他人名義の預金通帳(参考:佐野眞一. 東電OL殺人事件(新潮文庫) (p.259). 新潮社. Kindle 版.)、2枚のイオカード、現場の床に散乱していたのは、食料品の入ったビニール袋、薬類、おやつ類などであり、A氏の着用してたコートの背中に付着した血痕やちぎれたショルダーバックの把手からもXのDNAが検出され、遺体となったA氏の身体の下からXの体毛が見つかっている。なお、A氏が所持していた他人名義の通帳は、D氏とは別の埼玉県在住男性の名義だった。「現金の引き出しは四、五回あり、最後の引き出しは平成八(一九九六)年十二月十一日だった。このときは一万七千円が引き出されている。(引用:佐野眞一. 東電OL殺人事件(新潮文庫) (p.259). 新潮社. Kindle 版.)」とのことであるが、A氏が他人名義の通帳を所持していた理由は明らかになっておらず(通帳の最後の引き出し時期が事件の1年以上前であることなどから捜査当局は本事件とは無関係だと判断したのだろう)、佐野氏は前述の2枚のイオカード及後述するD氏の定期券を含めA氏が拾得などした可能性があると推理している。

東電OL殺人事件と呼ばれる本事件は、事件発覚(1997年3月19日)の2日後の3月23日、事件現場アパートの隣に住み、一時、同アパートの管理人からアパートの鍵を預かっていたB氏が入管法違反(不法残留)の容疑で逮捕されことから一気に動き出す。

B氏は1997年5月20日、入管法違反(不法残留)容疑で懲役1年、執行猶予3年の判決受けた直後、警視庁に強盗殺人の容疑で逮捕される。

本事件は、日本の司法制度(検察の証拠開示)や警察の取り調べなどの捜査方法や当時のDNA型捜査の問題点などを浮き彫りにした事件でもある。なお、足利事件(参考記事:DNA捜査とプライバシー保護と冤罪証明ための利用)は、1990年に発生、2009年に元受刑者S氏以外のDNA型が判明した。

B氏は2000年4月14日の一審で無罪判決を得たが、検察が控訴した控訴審では無期懲役の判決(2000年12月22日)を受け、無期懲役囚として矯正施設に収監された。それから約12年の長い歳月を経た2012(平成24)年10月29日の再審初公判――検察側が無罪を主張し、2012(平成24)年11月7日にB氏の無罪が確定した。

殺されたA氏と冤罪被害者のB氏。

未だに逮捕などされていない真犯人X。

世紀末の日本社会に大きな動揺と影響を与えた東電OL殺人事件の真犯人を考察する。

事件当日の目撃証言

被害者A氏の足取りと目撃証言を整理してみよう。なお、繰り返しになるが、冤罪被害者B氏の裁判でA氏が殺害されたと認定された日時は1997(平成9)年3月8日土曜日の23時頃から3月9日午前0時頃である。

11時20分頃被害者A氏は、杉並区の自宅を出て徒歩で最寄り駅の京王・井之頭線「西永福」駅に向かう。
11時25分頃定期券を使用し同駅構内に入り、渋谷方面行の電車に乗る。
電車が「渋谷」駅に到着すると下車し、東急店内でサラダ類などを購入する。
時間不明A氏はJR「渋谷」駅から電車に乗りJR「五反田」駅で下車する。
12時30分頃在籍していた西五反田の風俗店「魔女っ子宅配便」に入る。
17時30分頃同店を退勤する。
その後、JR「五反田」駅から電車に乗ったと推測されるが、B氏の裁判では下車した駅の事実認定はなされていない(検察は定期入が投棄されていた巣鴨近辺のJR巣鴨駅などで下車した可能性を指摘していた)
18時40分頃渋谷ハチ公前でC氏と合流する。
19時13分A氏とC氏は渋谷区円山町のラブホテルに入る。
22時16分A氏とC氏がラブホテルを出る。同ホテルの防犯カメラの映像から確認される。
その後、A氏とC氏は道玄坂方向に向かう。2人は道玄坂で別れる。
22時30分頃A氏とC氏は道玄坂上で別れる。A氏が「神泉」駅(円山町)方向に歩くのをE氏が目撃する。
なお、E氏はA氏が年齢27歳前後の黒系色ジャンパーを着た男性(と一緒に歩いていた。最初はヒモだと思ったが、男性の顔つきが華奢な印象だったのでヒモではないだろうと思ったなどとB氏の裁判で証言している。
23時45分頃A氏が殺害されたアパートの前でA氏と思しき女性と東南アジア系と思しき男性をF氏が目撃する。
F氏はB氏の裁判で以下の証言をしたようだ。
東電OL殺人事件 事件当日の被害者の足取り

(前略)女性はアパートに向かって 左、男性は右に立っていました。男性の身長は女性と同じくらいで、肉づきのいい感じでした。髪は少しウェーブがかかっていて、 肌の色は浅黒く、東南アジア系にみえました。服装は黒と白のジャンパーでした。腰のあたりには赤いポシェットのようなものが巻きつけられていました。二人は女の人が少し先に立ってアパートに入っていきました。二人はすぐにみえなくなりました。女性の顔はみえませんでしたが、男性の方は女性に話しかけるように左を向いたとき、頰から顎にかけての線が少しみえ、鼻の先も少しみえました。(後略)

佐野眞一. 東電OL殺人事件(新潮文庫) (p.228). 新潮社. Kindle 版.

F氏は目撃した二人をA氏及びB氏とは断定していないが、目撃場所や目撃時刻から目撃された女性はA氏の可能性が高いと推認される。また一緒にいた男性を「肌の色」などから東南アジア系だと推察しているが、詳細は不明だ。なお、B氏は目撃された男性の着衣と同じ色(黒系)の上着(ジャンパー)を所有し、目撃された赤色ポシェットを持っていたが、B氏の無罪が確定したことから、この目撃された男性の着衣などの真偽などは不明である。

上記の23時45分頃のF氏の目撃情報が生前のA氏の最後の目撃情報であるが、上記の目撃証言のなかの最重要ポイントは、女の人が少し先に立ってアパートに入っていきました。」だと思われる。

なぜなら、上記の証言からA氏がXをアパート内に案内したと可能性が推察されるからだ。

事件現場アパートの謎

東電OL殺人事件の犯行現場となった木造2階建てのアパートは、京王線「神泉」駅のほぼ目の前に所在する。同アパートは1階部に3部屋、2階部に3部屋があり半地下らしき部分に居酒屋が入居している(同居酒屋は2020年1月時点のGoogleストリートビューでも確認できる。なお、生前のA氏とXを目撃したF氏は、同居酒屋に父親を迎えに来ていた)

A氏が殺害された部屋は1階部に在り、間取りは台所、トイレ、ユニットシャワーが設置された4.5畳部屋と事件当時カーペットが敷かれた6畳の和室の2部屋だが、二つの部屋に間仕切りなどがあったか否かは不明である。

同室の最大の疑問点はドアの鍵とドア横の窓の鍵が開いていたことを「誰が」知っていたのか?また、同室の鍵は「何本」あったか?鍵を「誰が」持っていたか?だろう。

冤罪被害者B氏の裁判のなかでB氏は同室のドアなどが無施錠だったことを知っていたと供述している。一時期だがB氏は同室の管理人から鍵を預かっていた。B氏は鍵を返却する前の1997年2月下旬から3月2日頃の間に同室を使いA氏を買春していた。さらにB氏はその後も同室を買春などの目的で使用するため「敢えて」ドアの鍵は無施鍵のままにしていたらしい。また、B氏はA氏のほかにも氏名等不詳の40歳代の女性を同室で買春している。

上記から同室が無施鍵だったことを知り得る人物は、B氏、A氏及び氏名不詳の女性(A氏と同女性は買春後のB氏が鍵を掛けず部屋から出たことを視認などしていた可能性の範囲)だが、B氏が友人などに同室を「買春目的で使える部屋」として情報共有をしていた可能性も考えられる。

鍵が何本あったのか?については判然としない。事件現場の部屋が空室となる前の居住者たち(B氏とは無関係だと思われるネパール人グループが使っていた)が合鍵などを持っていた可能性が考えられ、その本数は居住者が複数であったことを考えると複数本の可能性があると推察される。また捜査側はそれらの以前の複数人のネパール人居住者の所在を確認するに至っていない。

東電OL殺人事件の最重要着眼点は、A氏とXのどちらが「部屋」に誘ったか?だろう。Xが誘ったのならXは(あくまでもB氏が周囲に情報共有していたとの前提からの推論だが)B氏周辺または(鍵を持っている前提だが)以前の居住者たち及び周辺人物の可能性が考えられ、A氏が誘ったのならガスも電気も止められた暗く寒い部屋に一見の客が入るのか?が問題になる。

安価な料金の買春だとしても、一見の客なら部屋に入ることに躊躇いを感じるのではないか?仮にそうだとするとXはA氏の常連客の1人だということにもなる。

前述F氏の証言女の人が少し先に立ってアパートに入っていきました。」を思い出そう。

この目撃証言が事実だとするならば、A氏がアパートに案内したように見受けられる。そう、F氏のXは東南アジア系(肌の色などが主な根拠だが)を前提とするならば、Xは外国人のA氏の常連客または「肌の色が浅黒い」日本人を含めた北東アジア系の常連客の可能性が考えられる。

事件の鍵を握る定期券

東電OL殺人事件の真犯人を考察するうえで重要な証拠の一つに被害者A氏の定期入とその中にあった被害者A氏の定期券及びD氏の定期券がある。この定期券は被害者A氏の推定死亡日時(1996平成9年3月8日土曜日23時以降から翌日9日の日曜日の0時頃)から3日後の1996(平成9)年3月12日水曜日の10時頃、東京都豊島区巣鴨5丁目内の民家の敷地内で発見され、同民家の家人が所管の警察に届けでたものだ。

なお、渋谷区円山町のアパート内で被害者A氏の遺体が発見されたのは、1996(平成9)年3月19日であることから定期券が発見された3月12日時点での被害者A氏に対する警察の扱いは特異家出人だった思料される。

豊島区巣鴨5丁目で発見された表面に「fortner」の文字が打刻された被害者A氏の定期入れのなかには、「design took」と書かれた名刺大の紙片と期限の残る被害者A氏名の定期券及び埼玉県在住の男性D氏名の定期券が入っていた。

当然ながらD氏は捜査の対象になっただろう。だが、D氏が事件前年の1995(平成8)年11月17日の日曜日13時から14時頃、東京都品川区西五反内で置き引き被害に遭い、所管の警察に被害届を提出していたことが明らかになる。

この置き引き(窃盗)犯人が誰なのかはわかっていないが、被害者A氏は西五反田の風俗店に在籍し同地域に土地鑑を有している。窃盗犯が捨てた定期券を被害者A氏が拾い所持していたことも考えられる。

冤罪被害者B氏の裁判でも指摘されているとおり、「誰」が被害者A氏の定期入を豊島区巣鴨5丁目の民家敷地内に投げ入れたのか?が、本事件の重要な鍵の一つである。

推論される定期入を投棄した人物を以下に記す。

case1・被害者A氏自身が投げ捨てた。

ただし、被害者A氏の定期券は事件当日の3月8日に使用されているため、被害者A氏が巣鴨の民家に投げ捨てたと仮定した場合は、西五反田の風俗店を退勤後の17時30分頃から渋谷駅ハチ公前でC氏と会った18時40分頃までの間に東京都豊島区巣鴨5丁目内に立ち寄り自分の定期券とD氏の定期券が入っている「定期入だけ」を民家の敷地内に投げ捨てた可能性が考えられるが、そもそも利用期限(有効期限は同年8月31日)の残る自分の定期券を捨てる必要性はないだろう。

case2・拾得者が投げ捨てた。

被害者A氏が風俗店出勤のため自宅最寄りの西永福駅を通過した3月8日11時25分前から事件発生時刻3月9日0時までの間に定期入を「西五反田から※注,渋谷区円山町のどこか」に遺失し、それを「誰か」が拾い、東京都豊島区巣鴨5丁目内の民家に投げ捨てた可能性が考えられるが、その場合は拾得者が警察に届けず、または、生活拠点や周辺施設などのゴミ箱などに破棄せず、東京都豊島区巣鴨5丁目内の民家に投げ捨てた必然性が不明となる。

※注,1996年3月当時、JR渋谷駅の改札の一部は自動化改札化されいなかった。被害者A氏が自動改札を使用せず、JR渋谷駅を通過し例えば渋谷駅ハチ公口などで定期入を遺失した可能性も考えられる。

case3・犯人Xが投げ捨てた。

被害者A氏を殺害した犯人Xが被害者A氏の財布(財布は事件現場に残されていた)に入っていたと考えられる現金4万円以上の紙幣(当日C氏はA氏に4万円を渡した)とともに払い戻せば約6万円分相当になる被害者A氏の定期券を定期入ごと強奪したが、女性名の定期券を払い戻すことができず、その後、東京都豊島区巣鴨5丁目内の民家の敷地内に捨てた可能性も考えられる。

case4・犯人Xが捨てた定期入れを拾得した第三者Yが投げ捨てた。

被害者A氏殺害後に定期入を強奪した犯人Xが定期入を「どこか」に捨て、それを拾得した第三者Yが東京都豊島区巣鴨5丁目内の民家に捨てたことも考えられるが、上記2のケースと同様に拾得者が警察に届けず、または、生活拠点や周辺施設などのゴミ箱などに破棄せず、東京都豊島区巣鴨5丁目内の民家に投げ捨てた必然性が不明となる。

上記4つのケースのなかで可能性が高いのは、case3だろう。ここからはCase3を想定し、被害者A氏の定期入が発見された東京都豊島区巣鴨5丁目と犯人Xの関係性または犯人の「思惑」を考察していこう。

定期券が発見された東京都豊島区巣鴨5丁目現場

A氏の定期入が投棄されていた東京都豊島区巣鴨5丁目の民家は、都電荒川線(都内唯一の路面電車)「新庚申塚」駅から東方向へ直線距離で約100メートルの場所に位置する。

付近には、寺社や区立公園が所在し、同民家は公道から入る道幅のかなり狭い私道と思しき道路(私道の正面は建物があるため行き止まりである)に面して所在しているため、犯人Xは私道と思しきこの道に入り、3月9日(日)から3月12日(水)の午前10時頃までの間に定期入を投棄したと推認される。

東電OL殺人事件定期入投棄現場(巣鴨5丁目内)

2022年10月撮影 編集により加工済み

ここで問題なのは犯人Xが「なぜ」この場所を選んだか?だろう。そもそも、犯人Xが定期入を投棄したのなら、強盗殺人事件の有力な証拠の一つを「なぜ」「この場所に」「投棄した」のか?

証拠隠滅を図るなら、方法はいくらでもある筈だ。例えば東京都内に多数ある河川などへの投棄、例えば東京湾への投棄、例えば生活拠点の生活ゴミに混ぜる。例えば定期入や定期券をシュレッダーやハサミなどで粉砕・破砕などする。例えば燃やす。例えばゴミ集積所やコンビニなどのゴミ箱に投棄する――などなど。

だが、犯人Xは敢えて証拠品の定期入を持ち歩き、私道と思しき道に入り、民家の庭先に投棄した。投棄された民家は不特定多数が出入りする単身世帯向けのマンション、アパートの敷地ではない。利用期限の残る他人の定期券が入っている定期入を投げ込まれた民家の住民が警察などに届け出る可能性は単身世帯向けのマンション、アパートの住民よりも高いかもしれない。

つまり、犯人Xは定期入が民家の住民に発見され警察に届け出られることを想定し、「わざと」同民家に投棄した可能性が高いと推察することができる。当然ながら強盗殺人事件の証拠品が発見された巣鴨5丁目付近では、A氏やB氏及び定期入を投棄した人物の目撃情報などを収集するための警察の聞き込みが行われているが、事件の解決に繋がる情報は集まらなかったようだ。

では、「なぜ」都電荒川線「新庚申塚」駅から東方向へ直線距離で約100メートルの民家が選ばれたのか?事件当時の犯人Xの自宅や勤務先、友人宅などの関係先が付近にあったからか?犯人Xが「わざと」発見されることを意図したならば、捜査を攪乱するため「わざと」自分の生活圏から離れた場所に投棄したことは容易に想像できる。事件当時の犯人Xの生活圏は都電荒川線「新庚申塚」駅付近に無かった可能性が推測される。

だが、人は過去の記憶や思い出、生活習慣からの学びなどを頼りに無意識的に土地鑑のある「地域」「場所」「方面」を選ぶことがある。人は困難に直面した時、生まれ故郷や子供の頃住んだ街並み、通学や通勤で使った路線などを思い出すことがある。

事件当時の犯人Xは、都電荒川線「新庚申塚」駅付近で暮らしていなかっただろう。また、同駅を日常的に使用することもなかったと推察されるが、当時または過去、都電荒川線の利用はあったとも考えられる。

花街とドヤ

東京都内には花街と呼ばれる地域がある(あった)。東電OL殺人事件の被害者A氏が殺害された円山町も花街と呼ばれた地域である。人間の様々な欲望が交差する街の片隅にA氏と犯人Xはいた。

前述の都電荒川線の路線図をみてみよう。同線は東京都荒川区南千住1丁目の「三ノ輪橋停留場」から東京都新宿区西早稲田1丁目の「早稲田停留場」を結ぶ路線である。

画像のリンク先は「東京都交通局都電荒川線路線図」と「東京都交通局都電荒川線所要時間」のHP

西早稲田、東池袋、大塚、A氏の定期入が発見された民家の最寄り駅「新庚申塚停留場」、北区の王子、荒川区の町屋、南千住――路面電車は東京の代表的な花街、繁華街、下町付近を走り、東京最大の風俗街「吉原」とドヤ「山谷」のある地域へ。

犯人Xは、円山町で買春相手を探し、円山町でA氏を殺した。殺害の動機は不明だが、A氏が所持していた数万円(4万円以上)を強奪した疑いがあり、金銭目的からの犯行が考えられる。

犯人Xは、それまでも買春相手などを探して東京の繁華街を歩いていただろう。犯人Xが都電荒川線を利用し、買春などを目的に大塚や吉原周辺に立ち寄ったことがあった可能性は容易に推察される。

また、犯人Xは安価な料金の買春相手を探していたとも考えられる。事件が発生した90年代から00年代前半の買春相手との出会いは、携帯電話などを使った出会い系サイト、店舗型テレクラ、路上などでの交渉が主な手段だと推認され、それらの手段を利用した個人間交渉の交渉は、店舗型の風俗店利用よりも売春側、買春側の双方に大きなリスクがあると考えられる。

犯人Xがリスクを承知で安価な個人間取引を選択したと仮定するならば、事件当時の犯人Xは経済的に恵まれず(強奪した疑いのある金銭は数万円である。定期券を奪った理由も払い戻し目的だとも考えらえる)、山谷などのドヤで寝泊まりなどしていた可能性や個人間の売買春のリスクを考慮しない常習的な買春客だったのかもしれない。

前述のXは東南アジア系(肌の色が主な根拠だが)のA氏の常連客または「肌の色が浅黒い」日本人を含めた北東アジア系の常連客の推論と考えあわせれば、Xは個人間の売買春のリスクを考慮しない常習的な買春客であり、23区のなかで比較的家賃の安い下町地域に親和性のある人物だと思われる。

東電OL殺人事件 真犯人像は?真相は?

90年代後半を代表する事件の一つ東電OL殺人事件には時効はない。任意ではあるが警察は各種の事件(累犯など条件次第だが比較的軽微な事件でも採取することがある)で逮捕した被疑者のDNAを採取している。

集められたDNAデータと東電OL殺人事件の真犯人XのDNA型の照合などは続けられているだろう。では、なぜ、Xは逮捕されないのか?東電OL殺人事件の真犯人Xの犯行動機が数万円の強奪だと仮定するならば、Xは常習的に犯罪行為を繰り返す可能性の高い人物だ。

警視庁三大未解決事件の一つ「世田谷一家殺害事件」(参考記事:世田谷一家殺害事件)も同様だが、強盗殺人という重罪を犯す犯罪傾向の進んだ人物が日本国内で生きていると仮定するなら、いつの日か東電OL殺人事件の真犯人Xも逮捕されるだろう。Xが自ら事件の真相を語る日もくるだろう。

だが、事件発生から25年の歳月が流れても真犯人Xは逮捕されていない。その理由はなんだろうか?既に死亡(A氏の客は年配者が多かった)したのか?日本国内にはいない(Xが外国籍だとすると事件後に日本から出国などした)のか?

そのどちらかの可能性が非常に高いと結論する。

本記事の冒頭で「人間」被害者A氏については語らないと述べたが、最後に少しだけ語りたいと思う。エリート家庭に生まれた彼女。高い学歴を有し、東電初の女性総合職となった彼女。秀逸な論文を残した彼女。拒食症を患った彼女。自傷行為をするかのように花街、繁華街に立っていた彼女。

彼女の「名前」と「東電OL殺人事件」という事件名は日本社会の大きな転換点――90年代後半から00年代――を象徴する「大きな記号」となった。 これからも彼女の「名前」と「東電OL殺人事件」は、人々の記憶に残り続けるだろう。


◆参考文献
『東電OL殺人事件』佐野眞一 新潮文庫 2003.
『禁断の25時』酒井ゆかり アドレナライズ2013.
『恋の罪』マルキ・ド・サド著,植田祐次訳,岩波文庫1996.
『東電OL事件-DNAが暴いた闇』読売新聞社会部 中央公論新社2012.

◆映像
映画『恋の罪』

★ご注意:この記事には、映画『恋の罪』のネタバレが含まれています。また、考察のため、あらすじを詳細に記しています。本作は素晴らしい映画です。未視聴の方は、ぜひ、視聴してから本記事をお読みください。個人的な考察と感想ですが、お役に立てれば幸いです。なお映画『恋の罪』R18+(18歳未満は観覧禁止)に指定されています。2022(令和4)年9月26日、ノンフィクション作家佐野眞一の悲報が報道された。享年75歳だった。ノンフィクション作家佐野眞一の代表作とも評される『東電OL殺人事件(新潮文庫2003年)』と同事件の被害者A...
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松本サリン事件 怪文書 『松本サリン事件に関する一考察』サリン事件は、オウムである『松本サリン事件に関する一考察』この衝撃的な一文から始まる『松本サリン事件に関する一考察』は、その後の裁判で「オウム真理教」の犯行と認定された一連のテロ事件のうち、最初に実行された化学兵器サリンを用いた「松本サリン事件」(1994年6月27日)の実行者を名指しで指摘した所謂「怪文書」である。この『松本サリン事件に関する一考察』は、「HtoH&T.K」を名乗る者(集団)により書かれ、文末には、この怪文書が書かれた時期と思...
『松本サリン事件に関する一考察』を考察! - clairvoyant report
事件概要1991年7月25日早朝4時半、福島県船引町の建設会社で専務を勤めるIさん(37歳)は、自宅に併設されている事務所でその日の仕事の準備を始めていた。その時、夜間は施錠されているはずの2階玄関が無施錠である事を不思議に思ったという。一時間程経ち、書類仕事を終えて居間へ戻ると、前々日からI家に宿泊している長女、舞ちゃん(7歳)の友人(正確には舞ちゃんの母親であるY子さん(27歳)の友人の娘(小学2年と同4年))二人が、慌てた様子でIさんに告げた。福島民報1991年7月27日付福島民報1991年7月27日付から引用「舞ち...
石井舞ちゃん行方不明事件 - clairvoyant report
横山ゆかりちゃん誘拐容疑事件(太田市パチンコ店女児失踪事件)概要1996年7月7日(日曜日)、群馬県大泉町に住むYさん(当時29歳)と家族(妻M子さん・同30歳、長女ゆかりちゃん・同4歳、次女・同生後8ヶ月)は、自宅から2kmほどの距離にある群馬県太田市のパチンコ店、「パーラー・パチトピア」(2022年現在は別名のスロット店として営業)を車で訪れた。本来はデパートへのお出掛けだったというが、「七夕感謝デー」の広告ハガキが来ていた事を思い出し、予定を変更したという。午前10時半頃、入店した一家は景品コーナーに立ち寄り、ショ...
横山ゆかりちゃん誘拐容疑事件(太田市パチンコ店女児失踪事件) - clairvoyant report
湯河原町女性放火殺人事件(2015年4月21日発生)の犯人は、茨城一家殺傷事件(2019年9月23日発生)の被疑者として逮捕、起訴された岡庭由征被告ではないか?との説が散見される。この二つの事件には、動機不明な点や刃物で被害者の顔面や頭部を攻撃する残忍な手口など共通する点がある。また、神奈川県警察のHPにある『現場方向からJR湯河原駅に現れた人物で、事件について何らかの情報を持っていると考えられる』人物の特徴や動きが岡庭由征被告に似ているとの説もある。 湯河原町女性放火殺人事件の犯人と茨城一家殺傷事件の岡庭...
湯河原町女性放火殺人事件の犯人は?茨城一家殺傷事件との関係性は?などを考察 - clairvoyant report
古美術店「無尽蔵」店主失踪事件 概要1982年8月24日より三越日本橋本店で開催されていた「古代ペルシア秘宝展」。黄金の皿、盃、装身具など絢爛たる47点の展示即売品は、総額21億円(当時)といわれ、折からのシルクロード・ブームの追い風も受けて盛況であった。しかし、会期半ばの8月29日。朝日新聞は一面で、これらの秘宝の大半が「ニセ物」であると報道する。これはスクープなどというものではなかった。天下の三越百貨店が、当然全てが本物であるとして、上は数億の値段をつけて売り捌こうとした自慢の「名品」の数々は全て、開催...
古美術店「無尽蔵」店主失踪事件 - clairvoyant report
その日、四人の家族は、昼過ぎから東京都世田谷区内の商店街に買い物に出かけた。翌日31日は大晦日。家族は年越しソバなどを買い、夕方、自宅に戻った。買い物に車を使ったともいわれるが車は自宅のガレージ(車庫)に駐車せず、翌日まで自宅前に路上駐車されていた。家族は年明け2001(平成13)年1月3日から二泊三日で箱根に旅行の予定だった。被害者A氏、妻、二人の子供、そして、被害者A氏の父親の5人での初めての旅行の予定だった(参考:奪われし夢世田谷一家殺害事件(上)「ケーキ食べに来て」孫の招待悲し最後のXマス祖父絶句...
世田谷一家殺害事件 推理 考察 なぜ狙われたのか 動機 - clairvoyant report
日本(東京)から約7,500キロメートル離れたモスクワに世界初の社会主義国家・ソビエト社会主義共和国連邦が誕生した1922(大正11)年の10月、千葉県木更津市の開業医の四男として男は生を受けた。祖父の代から医者の家柄だった男の父は、千葉県木更津市の市長もつとめる名士だった。裕福な名家生まれの男は、父親や母親の期待に応えるかのように第一高等学校(現、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部等)に入学、22歳となる1943(昭和18)年、東京帝国大学法学部(現、東京大学大学院法学政治学研究科・法学部)に進学した。男の...
光クラブ事件・裏切りを怖れる「偽悪者」山崎晃嗣を考察する - clairvoyant report
知略縦横を働かせ自分よりも大きな組織などを相手に大胆不敵な犯罪を実行する者がいる。「東の(府中)三億円事件、西の大阪ニセ夜間金庫事件」と並び称される同時代に発生した2つの事件は、時代を超え人々の好奇心を刺激する。事件発覚直後に「日本版『黄金の七人』」とも報じられた(参考:「偽装夜間金庫」朝日新聞 1973年2月27日付)「大阪ニセ夜間金庫事件」の犯人像を遺留品や時代背景などから考察していこう。なお、『黄金の七人』は、1965年に製作されたイタリア映画である。同映画は1967年から『漫画アクション』での連載が開...
大阪ニセ夜間金庫事件 - clairvoyant report
戦後の混乱期に発生(1948年1月26日)し、21世紀の現在でも検証が続けられる「帝銀事件」から約6年後、茨城県内で第二の「帝銀事件」ともいえる凶悪事件が発生した。茨城・徳宿村精米業一家殺害事件は、青酸性劇薬物を使い9人を殺害し、被害者宅に放火するという戦後史に残る凶悪事件である。本事件は、逮捕された容疑者自身も青酸性劇薬物により自殺したため、被害者が毒物を飲み(飲まされ)殺害された経緯などは未解明である。本記事は、第二の「帝銀事件」ともいえる「茨城・徳宿村精米業一家殺害事件」の概要、逮捕された容疑者像...
茨城・徳宿村精米業一家殺害事件 - clairvoyant report
江東区小5女児誘拐殺人事件とは、1969年(昭和44年)5月31日(土曜日)、17時30分頃、東京都江東区東雲1丁目内の某社社宅居住の小学校5年生E子ちゃん(10歳)が、買い物からの帰宅途中に車に乗った男に誘拐され、同年6月3日、午前11時頃、誘拐現場から南東方向へ直線距離で約1キロメートルの東京都江東区辰巳町東京湾十二号埋立地(現在の東京都江東区辰巳3丁目内付近)でE子の遺体が発見された(猥褻目的)未成年者略取、殺人、死体遺棄事件である。 一時は、本事件翌年の1970年6月3日(水曜日)に千葉県木更津市内で発生した小学校3...
江東区小5女児誘拐殺人事件 - clairvoyant report
貨幣・紙幣は国家の信用の上に成り立っている。特に国家による信用の裏付けのない紙幣は、単なる文字と絵が描かれた紙切れに過ぎない。1961(昭和36)年に最初の一枚が見つかった贋造紙幣「チ-37号」は、その精巧な造りから「贋造紙幣の最高傑作」、「最後の職人技」などと呼ばれ、1963(昭和38)年11月14日まで事件は続いた。国会でも取り上げられた「チ-37号事件」は、社会に大きな影響を与えた戦後の事件の一つでもある。警察は犯人検挙に向け異例の大規模捜査を行い、政府は新たな千円紙幣(伊藤博文像の紙幣)を発行し対応するが―...
チ-37号事件 - clairvoyant report
事件史を紐解くと不思議な未解決事件に出くわすことがある。犯人はもとより、犯人の動機さえもわからない事件。戦後の復興期に発生した「謎のニセ札事件」について考察していこう。謎のニセ札事件 概要1954(昭和29)年12月初旬、東京都中央区新富町1丁目内に所在する個人営業の印刷屋に見知らぬ男(以下、X)が現れた。同店は、現在のJR東京駅八重洲口から南西方向へ直線距離で約500メートルの場所に位置する個人営業の印刷店だと思われる。Xは、某興信所の調査部長を名乗る(名刺を残した可能性があると思われる)が、年齢や特徴に...
謎のニセ札事件 - clairvoyant report
◆ご注意本記事は、1968(昭和43)年12月26日19時50分から27日9時40分の間に発生したロートレックの絵画『マルセル』盗難事件の事件概要及び経緯等の解説を目的とする記事です。1975(昭和50)年12月27日午前0時に時効が成立した同事件は、約一ヶ月後の1976(昭和51)年1月29日、盗難された『マルセル』が発見されるという特異な形で決着しました。本記事は『マルセル』を保管していた人物(A氏夫妻)や預けた人物(C氏)などを「犯人」、「容疑者」などと断定する記事ではありません。 また犯人考察を目的とするものでもありません。事...
マルセル盗難事件 - clairvoyant report
1991年5月19日、50歳の男性が東京都内の病院で病死した。男性は末期ガンだった。男性の名前は「山森将智家」の筈だった。けれども男性の名前は「山森将智家」ではなかった。名前どころか、戸籍記載事項から勤務先まで全てが嘘(ウソ)だった。真実を欲する妻を取材した「夫はだれだった」というタイトル記事が朝日新聞に掲載されたのは、同年の11月のことだった。「夫はだれだった」の見出しと記事内容は、読み手の心を刺激したのだろう。後年、同記事をモチーフにした小説『嘘を愛する女』(岡部えつ,徳間文庫,2017年)が発表され、翌...
夫はだれだった:「山森将智家」と二人の妻『嘘を愛する女』の実話 - clairvoyant report
フィリピン製38口径リボルバー/スカイヤーズ・ビンガムから発射された弾丸が3人の女性の命を一瞬で奪った。最高気温34.2度、平均気温29.4度。南南東からの風が暑さを身体に巻きつける。付近の公園では夏祭りが開催されていた。そこには、いつもの平穏な日常のなかの細やかな非日常があった。人々の平穏な日常と細やかな非日常の夜を撃ちぬいた八王子スーパー強盗殺人事件(八王子スーパーナンペイ強盗殺人事件)の犯人像と背景を推理しながら未解決事件(2023年時点)が社会に与えた影響や事件などを考察していこう。画像のリンク先は...
考察!八王子スーパー強盗殺人事件:血塗られた夜「八王子スーパーナンペイ強盗殺... - clairvoyant report
2023年は、誤認逮捕、私人逮捕、冤罪事件などが話題となり、これ等の問題が改めて顕在化した年だともいえる。2023年12月27日判決の大川原化工機事件国家賠償請求訴訟では警察、検察の違法性が認定され、2023年11月頃からは、所謂、私人逮捕系youtuberが逮捕された(その後、保釈された)。誤認逮捕や私人逮捕は、冤罪事件に繋がる可能性がある。1人の無実の男性が窃盗犯扱いされ、居合わせた私人や警察官に身柄を拘束され、その後、死亡した「四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件」は、誤認逮捕、私人逮捕、冤罪事件等の問題をわれわれに思...
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件:誤認逮捕、私人逮捕、冤罪事件を考える - clairvoyant report
2001年5月23日(水曜日)「埼玉県さいたま市栄和5丁目」内において、悲惨な殺害事件が発生した。整骨院を経営するO氏(64歳)とその長女Sさん(14歳)が自宅で殺害され、その後、自宅に放火されるという衝撃的な事件である。事件から時間が経過し、多くの情報が公開されたが、犯人は依然として捕まっていない。 2000年12月30日の夜間から31日未明にかけて発生した世田谷一家殺害事件との関連が一時期噂されたものの、現在ではその見方は否定的に捉えられている。この文脈で、「埼玉県さいたま市の父娘放火殺人事件(さいたま市栄和5丁...
埼玉県さいたま市父娘放火殺人事件 - clairvoyant report
広島市中区地下道で発生した16歳少女の刺殺事件は、2000年1月20日に起こった。広島市中区の地下道で発生した残酷な事件は、単なる犯罪統計の数字を超えた深い意味を社会に投げかけると共に、未解決のまま多くの人々の記憶に残っている。第1章:事件要約2000年1月20日(木曜日)午前3時50分頃、気象庁の記録によれば、観測地点広島(広島県)での午前3時時点の気温は2.3度であった。この冷たい夜、広島市中区西白島町の国道54号線「城北地下道」で、背後から接近したと見られる何者かにより、当時16歳で無職だったKさんは、背中など複数...
広島市中区地下道16歳少女刺殺事件:考察・闇に奪われた命 - clairvoyant report

◆日本の殺人事件

大きな過ちを犯した人間には罰が下る。事件が発覚すれば逮捕され、起訴された後には法の裁きを受け然るべき罰が与えられ過ちに対する責任を取らされる。しかし、罰は法による裁きだけではない。仮に過ちが露呈しなくとも大きな過ちを犯した者は自分の「良心」に責め立てられる。時に、自分の「良心」が与える自己罰は、法による罰よりも厳しい。 24時間、365日、罪悪感という名の罰は絶えず自分を苦しめる。事件から21年後、公訴時効後に真相の一端が明らかになった伊勢湾沿岸バラバラ殺人事件について解説する。伊勢湾沿岸バラバラ殺...
伊勢湾沿岸バラバラ殺人事件:女性の死体を隠し続け21年間 - clairvoyant report

Jean-Baptiste Roquentin

Jean-Baptiste RoquentinはAlbert Camus(1913年11月7日-1960年1月4日)の名作『転落(La Chute)』(1956年)とJean-Paul Sartre(1905年6月21日-1980年4月15日)の名作『嘔吐(La Nausée)』(1938年)に登場するそれぞれの主人公の名前からです。 Jean-Baptiste には洗礼者ヨハネ、Roquentinには退役軍人の意味があるそうです。 小さな法人の代表。小さなNPO法人の監事。 分析、調査、メディア、社会学、政治思想、文学、歴史、サブカルなど。